第二録:異世界 三節「ギフト」
──────光が収まり視界が戻る。
俺は片膝をついた状態から急いで学ランの内ポケットからメガネを取り出す、いつ解魔ノ瞳が反応するかわからない対策として妖霊管理機構から貰った道具。
メガネを使うと他者からの認識が阻害され普通の目に見え本来なら妖霊管理機構に知らせがいく。
解魔ノ瞳が反応するということはそこに妖霊がいる…まぁ、妖霊機構からしたら俺は便利なセンサー代わりだ、あと純粋に疲れるからあまり掛けたくは無い。
辺りを見渡す、クラスメイト達は地面に伏している者、座っている者、俺の様に片膝立ちの者、皆が皆一様に混乱と恐怖の表情が見て取れる。
「皆様!どうか落ち着いてください!」
クラスメイトから視線を外し声の方へ顔を向ける、そこには騎士がいたガタイが良く全身を堅牢な鎧を纏う青年らしき男の騎士、一目見てわかる強者。
騎士にも驚いたがその後ろに控えている人物に視線がいく。
────王様、そう呼ぶにふさわい装いに威厳のある容姿と豪華な椅子に座る様子は威風堂々して圧を感じた、王様は椅子から立ち上がり短い階段を降りて話を始めた。
「皆様、どうか私の話を聞いてほしい」
「私はこの国の王を務めるアレクサンダー・オル・フィリッツランド訳あって皆様方、異邦の民のお力を貸していただきたい一方的な頼みなのは承知の上」
…王様がここまでするなんてよほど切羽詰まる状況なんだろうか?それにここは謁見の間でいいのだろうか?騎士と王様の二人だけというのは違和感がある。
「そんな事を急に言われても!!」
「そ、そうだ」
続々とクラスメイトが声を上げる、まぁ…大体が真っ当な反応だ。
「みんな!落ち着いて!とりあえず話を聞こう不平不満はあると思うが話を聞かない事には始まらないだろう!!」
一人がクラスメイトをピシャリと一喝、アイツはたしか…大崎 理人クラスの中心的な奴、品行方正で面がいい。
大崎の一言にクラスメイト達は黙り徐々に落ち着きを取り戻す。
「ありがとう…異邦の民よ名はなんと?」
「大崎理人です、フィリッツランド王」
王様は大崎に握手を求めそれに応じる。
「……でどういうわけ?」
凛とした女性の声が場を引き締める、彼女もクラスメイトだが─
「天音!」
大崎が慌てて止めに入る。
「貴殿の名はなんと?」
「刺牙天音」
ツインテールをかき上げてぶっきらぼうに答える刺牙。
「アマネよ、では説明をさせて貰おう」
フィリッツランド王は余裕の構えを見せ俺らを招いた顛末を話し出す全容をまとめるとこうだ。
十年前に世界は外魔と呼ばれる脅威に晒される、外魔は種族関係なく無差別に襲い各国が対応に追われ激闘の末に一時休戦の状態へ…各国が協力して外魔を強力な結界で閉じこめた。
これが十年前、現在は結界に綻びが現れ調査の結果あと五年持つかどうか。
十年前から各国で外魔に対する準備をしてきた、この国は策として異界招来術を用いて外魔に対抗しうる戦力を集め鍛えて外魔の掃討を目指す。
「私達に別の世界のために命を張れって?ふざけてるわ」
ストレートな意見、これには俺も同意見それに俺には夜天羅の件がある早々に返して欲しいもんだ。
「私が君達に強要しておるのはわかっておるだから先に言っておこう君達を誰一人死なせる気はない」
大胆な宣言だ、為政者とは思えないほど真っ直ぐな発言に驚く。
「君達にして欲しいのは主に支援だ」
クラスメイト達がどよめく恐らく前線送られるくらいは思っていたんだろう。
「支援…ですか?僕たちにそんな力…」
流石に大崎も訳が分からず混乱している様子。
「あるのだよ正確には与えられている、世界に召喚する際に神と契約する為、君達には強力な祝福…我々はギフトと呼んでいる」
さらにどよめくクラスメイト達、ある者は不安を、ある者は興奮を、様々な様相。
「そんな…神様だなんて」
大崎は神を信じれない、と言いたいんだろう。
しかし状況が考えを迷わせる神を否定できないすでに超常を体験してしまっているから。
「失礼な話、神を信じない君達だから召喚できるんだ」
フィリッツランド王は大崎の考えを見透かすように話を続ける。
「他の神を信仰している者は召喚は出来ぬのだ、その神から信者を横取りしてしまう事になってしまうからな」
「そうして信じる神を持たぬ民を呼び神の信仰を増やす代わりに異邦の民にはギフトを与えられるのだ」
なるほどな…うまいこと出来てる、日本人それも若い俺らが選ばれる訳だ…無宗教が圧倒的に多く真剣に神を信仰してる10代なんて奴は稀、ただでさえ日本は宗教行事をイベントとして楽しんでいる。
…宗教の多様化が一番進んでいるのは間違いなく日本だろうな。
「それでギフトととやらはどうやって使うのかしら?」
刺牙が大崎と並びフィリッツランド王を睨むように見る
「入ってこい」
フィリッツランド王の一言に背後の重々しい扉が開かれ入室してきたのは白い修道着に見える衣服に身を包み杖を携えた清廉そうな女性が現れてクラスメイト全員の視線が女性へ向けられる。
女性はカツカツと足音を響かせ王の元へ行き綺麗な所作でお辞儀をしてから俺たちの方へ振り向きフィリッツランド王の隣に控える
「彼女はアルメリア・アーセナルこの城に配属している枢機卿今から皆のギフトを確かめさせて欲しい」
それなりの階級かと思ったが枢機卿!?教皇の次の階級、それが若い女性なんて相当できる人だろう。
「では皆さん列を…」
「必要ありません」
騎士がクラスメイトに声を掛けたが止められ静かな声が場を支配した声の出所はアーセナル枢機卿、彼女は杖をコンッと軽く地面を鳴らす、次の瞬間にはクラスメイト全員が淡く光が包んだ。
「なるほど…皆様の賜り物を理解しました」
片手で紙を浮かし文字を記載していくナチュラルに魔法を見せられ皆唖然とした、紙を王に渡した枢機卿が俺に視線を向ける、しかし視線は敵を見る目そのもの
「──貴方以外は」
杖を向け臨戦体制を取る枢機卿、俺に全員の視線が向けられる。




