第十五録:次に向けて 二節「職人」
エドガーさんの視線は俺の腰あたり
身に付けている刀に目が向けられる。
「八重ノ剣か!?」
「え?あぁそうですよ」
先ほどまでの怒りはどこかに行ったのか
刀に興味津々の様子。
一先ずの危機は去り、横のウルを見るとカウンターに
歩き出す俺もそれに着いてゆきカウンターを挟みエドガーと対峙する。
「なぁ兄ちゃんちょっとそれ抜いてみてくれないか?」
「いいですよ」
俺は刀を静かに抜刀、艶やかな刀身が顕になる
堕天使の戦いの後で手入れをしたばかり。
魔力で強化していたおかげか激しい戦闘にも関わらず傷一つない。
「…すごいな」
「美しいね!」
エドガーさんは感嘆声を上げる
彼は鍛治師なんだろう、鉄を打つ者
だから嫌でもわかるこの刀がどんな物なのか。
「持ってみますか?」
「いいのか?」
俺は一度刀を納刀して鞘ごとカウンターに置いた
エドガーさんは一度触るのを躊躇ったが
意を決して刀を持ち鞘から刀を出す。
様々な角度で刀を眺め感触を確かめていた
刀の反り、刃幅、厚み、装飾、柄の握り具合
自身の手の感触で刀を読み取ってゆく。
やがて満足した様子で丁寧に刀を戻し俺に返してれた。
「ありがとう…いい経験になった」
「どういたしましてです」
「ハハ!やはりその剣は特別なんだね!」
「当たり前だ馬鹿野郎!あんだけ装飾が少なくて
美術品の如く美しい、剣として切ることに特化し実践も申し分ない!」
熱く語るエドガーさん、その様子で彼が剣が好きなのが伝わってくる。
「で、お前はまた槍を作ってほしいと?」
「あぁ!堕天使との戦闘でダメにしてしまってね!」
「お前、マジか」
それを聞き大笑いをするエドガー
もしかして嘘だと思っているんだろうか?
それも仕方がない事ではあるが…
「ハッ!そんな大物と相打ちならまぁ許してやる!」
どうやら自身が製作した武器が壊れた経緯を知り相手が大物と知った。
槍は壊れたもののエドガーの顔はどこか満足気
「信じてくれるんですか?」
「ん?ああ!このバカとは一年の付き合いになるが嘘はつかんからな!」
ウルと関係が一年になるなら無条件に信用したのも納得だ。
「今回はどうするんだ?」
「設計書はレミリアが考案してくれてね!参考にしてほしい。」
ウルは3枚の用紙をエドガーへ手渡す
彼はそれを真剣な顔で読み込んでゆく
「…わかった、これを急ぎでか?」
「なるべく早く頼みたい!」
ウルが急かすのは次の本番の依頼があるからだろう
誰にも取られないとしても掲載期間がある
次更新してくれなければ自腹で目的の遺跡へ行く事になる。
せっかくならそれは避けたいだろうな。
エドガーさんは書類とペンを持ちウルへ質問を始めた。
「…最短で2週間は掛かる、素材は?」
「もちろん用意してあるさ」
「予算は?」
「糸目はつけないさ!」
「何か追加は?」
「ないね!」
「よし…金額はこれくらいなるぞ?」
ペンを走らせて用紙をウルに見せる
横で一緒に用紙を見てみるとびっくりするぐらいの値段が書かれていた。
「おまっマジかよ」
「ま、奮発してこれくらいはね!」
もしかして…前の槍もこのくらいの値段だったのか!?
金額という具体的な価値を示された。
大破した状態でも使える部品あったはず
それがある意味俺のせいで消し飛んだ。
俺はウルに再度提案する
「やっぱりお金出すぜ?」
「大丈夫さ!この金額は前の槍の倍以上だからね!心配ないさ」
少し申し訳ない気持ちにならなくもないが
これ以上の口出しは迷惑と思い口を閉じた
今回の槍は無くなった槍の大幅改良型と言う事だろうか?
「いいんだよ!コイツはどうせ無茶な使い方をしたんだろ」
「よくわかったねエドガー!」
「え、そうなのか?」
「最初に大破した時に負荷限界を超えていたからね!」
「ほらな?」
「そうなのか」
てっきり堕天使に壊されたと思っていた。
いや正確にそれもあるんだろうけど。
「じゃ!代金はいつも通り先払いでいいかい?」
「ああ頼むぜ」
ウルはつかさずお金を取り出してすぐに支払う
と書類にサインをした。
「素材なんかは全て明日届く様に手配済みさ!」
「ハッ!断る選択はねぇのかよ!」
「エドガーほどの職人なら断るなんてしないと思っての事さ!」
「おいおい!煽てても最高の作品しかでてこねぇよ!」
ハハハハと笑いながら軽口を叩き合う二人
エドガーの発言から自身の技量に
絶対的な自信があるのが伝わってくる。
「よろしく頼むよエドガー!」
「任せろ!最高の槍を仕上げてやる」
そうして俺たちは武器屋を後にして夜の街へ
夜でも人通りはそれなりにありどこのお店も混み始めていた
俺は空腹を感じていたのでウルに食事を提案する。
「飯食うか?」
「そうだね!」
混んでいる店は避けて俺とウルは近くの露店で売っている
ホットサンドと飲み物を買いベンチで座って食べる事にした。
「うまいなコレ」
「たまにはこうして食事をするのもいいね!」
にゃんにゃにゃにゃんにゃん!
コイスケにもご飯を出してやり男三人で飯を食う
夜風を感じつつ街を眺めながら談笑して俺たちの時間は過ぎてゆく。




