第十四録:これで対等 四節「宴」
「俺はないですかね」
「僕たちもかな!」
「では、我々はこれにて退室させていただきます。」
リコッタさんとマクスウェルさんは
席を立ち扉の方へ向かった。
「あぁ…最後にウルスタン君、
キミは今より上に行きたいかね?」
変える直前、マクスウェルはウルたちへ質問を投げかけた。
今より上…つまり聖銀等級への勧誘だろう
ウルにとって悪い話では無いむしろこの上ないチャンス。
「…今の僕では上に行くにはまだ実力不足さ!」
迷いなくサッパリと誘いを断る、これはこいつの美点の一つだな。
何より最優先は自身の恋人たち。
主力である自分がもっと強く無いと危険な目に遭わしてしまう。
堕天使との戦いでそう感じたんだろう。
「フフ、そうか…ではその時を待とうか」
そう一言だけ残し二人は退室してゆく
残された俺たちは報酬の配分の話し合いだ。
「どうするよ…この大金」
「それは半分に決まってるじゃないか!」
「んーわしはお主たちが多めでもよいと思っておるんじゃが?」
これについては夜天羅に同意だ。
彼ら主導で進めた戦いでもあった。
「夜天羅に賛成だ、俺たちはプラチナプレート10枚でいい」
「よいのですか?」
「謙虚だねぇ」
「わーありがとう!ヤテンラ!」
感謝を表して夜天羅にハグをするブランカ
驚いたもののまんざらでも無い様子。
俺たちは揉める事なく報酬を分け合った。
その後ギルドを後にして皆で打ち上げを
するために久々のデストロイ・ビーフへ向かった。
時間はちょうど夕方に差し掛かかり店が混み始める。
「お?お前ら!帰ってきたのか!」
入店してすぐにこちらに気が声を掛けてくれたのは
店主のデボンズさん、約10日ぶりの再会。
「デボンズさんお久しぶりです
依頼が片付いたのでご飯食べに来ました。」
「おう!たらふく食ってけ!」
快活な笑顔を見せ俺たちを席に案内してくれた
席につき各々が飲み物と食事を注文する。
先に飲み物が提供されると─
「カンパーイ!!!」
各々がグラスを掲げて軽く音が鳴るくらいに突き合わせた。
冷たく甘い炭酸飲料が喉に清涼感を与える
長い仕事で疲れた身体に潤う。
…仕事終わりの一杯を楽しみにしている人の気持ちが少しわかる。
「あ"ぁ"〜美味しい!」
グラスに並々注がれたワインを流し込んだ後に
ため息と共に緩んだ顔をするネローズ。
「もうはしたないですわよ?」
「いいじゃんこんな時くらい〜ねーブランカ?」
「えー?うん!」
「ハハ!まあまあ!いいじゃないか!」
俺たちの頼んだ料理が運ばれてきた
全員に行き渡り食事を始める。
美味しいステーキが腹を満たしていく、パンも肉に良く合う。
…欲を言えば米を食いたいがこの世界に流通はしていないそうだ。
「それにしても堕天使を討伐なんて公になれば英雄よ英雄。」
「ハハ!そうだね、しかし今回は公にはならないだろうさ!」
「なんでじゃ?」
「具体的な被害が出ていないし堕天使自体が眉唾だらさ!」
「なるほどなぁ」
今回の被害はキャリオンウォーカーと
ネフィリムで出たものだ、堕天使は俺たちしか知らない
ギルドが堕天使を信用したのは魔術で記憶を見せたからだ。
「そういえば!なんで最後の時ヨリツグは魔法効かなかったの!?」
「気になりますわね…差し支えなければ教えていただきたいですわ」
「私もディスペルをしなくていいと言われたわよ」
あぁ…そっかあの時はウルにしか
言って無かった、三人が気になるのも仕方がない。
「こういうわけだ」
俺はメガネを外すと"解魔の瞳"が露わになる
四人に見せるのは初めてだ、案の定全員驚いていた。
「ハハ!まるで月夜みたいじゃないか!美しいね!」
「魔眼!?珍しいわね…」
「すごーい!!」
「……」
人にこの瞳を見せるのは初めてだカルステ家でも
ずっとメガネを掛けていたからなんだかむず痒い気持ちだ。
「…こ、」
レミリアの様子が少しおかしい
顔を伏せたかも思うとワナワナと震え出した。
「効果は!?それは生まれついて!?
常時発動!?限界は!?身体への影響は!?」
顔をあげたかと思うと身を乗り出し
怒涛の質問責め、俺も夜天羅もこれには面食らった。
まだ関係は浅いが冷静で常に淑女の
振る舞いをしていたレミリアが興奮している。
「あー…ハイハイ、落ち着きな」
ネローズがレミリアの肩を掴み座らせると
ハッと正気に戻るレミリア。
取り乱したことが恥ずかしいのか顔を赤くさせた
「す、すみません」
「ハハ!レミリアは魔法、魔術の研究が趣味でね!
それにこの世界でも魔眼は珍しくてね!」
「お、おう」
「やはり珍しいんじゃな」
「そうですわよ!それに!」
力強い返答、思い出したかの様にコイスケをに視線を向けた。
「コイスケくんは魔物でも無い猫で能力持ち!」
にゃん?!
レミリアの熱い視線に怖気付いたのか
そそくさと夜天羅の元に逃げ込む。
「ま、まぁ俺の解魔の瞳で良ければ知っている事は答える」
「あーあ…知らないわよ」
ネローズは若干呆れつつグラスを傾けた。
発言の意図が分からず困惑する。
「え?」
そこからたっぷり1時間は質問という名の
レミリアによる尋問が始まった。
「──という事なのですわ!」
「はい…」
解魔の瞳について知ってる事
体感など根掘り葉掘り言う羽目になった。
「魔力を分解ね…かなり強力な力じゃない」
「ねー!それで堕天使の魔法が効かなかったんだー!」
ブランカの言う通りだ
最後、堕天使は俺に向けた魔法は
恐らく呪殺の魔法だその場で死に至らしめる程の。
だがそれは解魔の瞳に阻まれた
あそこで衝撃波を撃っていれば
もう少し粘られたかもしれないな。
なんだかたんだと引き続き楽しく
時間を過ごし夕方から夜にその夜も更けてゆく…。




