第十一録:新天地 三節「共同依頼」
にゃうんにゃにゃ!
コイスケは夜天羅の腕から飛び降りて毛繕いをした、今日の予定が全部なくなってしまった…明日に備えて宿に戻るのが一番だろうがそれではなんだか味気ない。
「暇になったのう…どうしようかの?」
スッと腕を組む夜天羅、帰るのは惜しいと思っているのは俺だけじゃなかった、どうしようか考えていた時だった……頭によぎることが一つある。
「なぁ…夜天羅」
「んー?どうしたんじゃ?」
にゃうん?
俺は貰ったメモを見せる、夜天羅はそれを見て察する。
「……行ってみるか?」
このメモはほんのさっき貰った物…ウルスタンの所在地が書かれた紙、夜天羅は複雑そうな顔をする。
「気には…なる…のじゃ…」
嫌と言うわけではないがウルスタンのテンションに付いていけないのだろうな、実の所は俺もそうだ…ただ直感で悪い奴でなく良い奴ではある。
「よし…行ってみようお前様!」
覚悟を決め、行く事を選択、果たして俺たちに何の用事だろうか?単に友達になりましょうってわけではないだろうし…メモの場所は今いる所から歩いて二十分ほど夜天羅と談笑しながら向かう。
「……着いたな」
「……着いてしまったのじゃ」
ウルスタンの滞在している店に到着、なぜか…目の前の扉が遠く感じただ意を決して開けようとすると──
「あ、ウル来たよ!あの二人!」
元気な声が聞こえたと思ったら扉が内側から開かれた、顔を覗かせて現れたのはウルスタンの恋人の一人ブランカ、驚いた…俺たちの気配?を察知したのか。
「ブランカ、お二人が驚いていますよ?」
「あ、ごめんなさい!」
開いた扉から見える席に座っていた三人、レミリアが紅茶を飲みながら静かにブランカを諫めブランカもテーブルへと戻っていく。
「いやぁ!ブランカが驚かせたね!さ、こっちへ来て話そうじゃないか!」
ウルスタンは自身の元まで来たブランカを近くに寄せて頭を撫でた…変わらずキザな仕草が目につくが嫌味な感じはしないむしろ自然だ、俺たちは促され席に向かい座った。
「ね!ね!ネローズが言った通りだったね!」
「ふふ、私の占いはよく当たるのよ…特に昨日の様な満月の日はね」
「あら…たまには役立ちますのね」
「はー?」
レミリアとネローズの間にバチバチに火花が散る…仲が悪いのか?とは思ったが嫌な雰囲気は一切なく和やかなものだ。
「もー!まーたそうやって!」
「ハハハ!いいじゃあないか!美しいじゃれあいさ!」
どうやらいつものことの様子、喧嘩するほど仲がいいってやつだろう…その様子を眺めつつ、俺と夜天羅は注文を取りに来た店員さんに飲み物を頼む。
料金を上乗せでコイスケ用にミルクも頼んでみると快く快諾してくれた。
「さて!まずは来てくれて感謝するよ!ありがとう!」
「あ、あぁ…それで早速なんだが俺たちに何の用が?」
「まあまあ!本題の前に少し親睦を深めようじゃないか!今朝…ギルドで話し渋った事をね!」
話…事情があるって言ってたやつか、俺たちと似た事情なんだろうか?再び店員さんが現れて飲み物を持ってきてくれ配膳をしてくれる。
にゃん!にゃん!
待ってましたと言わんばかりに声を上げて嬉しそうにミルクを飲むコイスケ。
「異種族間の恋愛は珍しくないが…僕の愛しい恋人達は特別でね!それこそ魔族に匹敵するほどさ!」
特別か…俺と夜天羅はこの世界の種族事情を知らないリグレさんが言っていた事くらい、しかしそれを知っているウルスタンが特別と声高に唱える…。
「特別…とはなんじゃ?」
「わたしはねー!かみごろしのきば?らしい!」
「わたくしはハイエンドエルフですわ」
「私はハーフデビルよ」
待て、待て…色々言いたいことがあるが情報量が多すぎる!わからない事だらけだ!神殺し!?高性能!?半悪魔!?情報が処理しきれない、特別と自負するだけはある。
「…はぇ?」
「ハハハ!すまないね!一気に紹介をしてしまった!」
「まぁ…ウルは特別と仰ってくださいましたが実際は鼻つまみ者ですわ」
その一言で何となくわかってしまう夜天羅も察したようだ…彼女たちも何らかの問題を抱えている、もしくは抱えていた、だから似ているか。
「…確かに他人とは思えないな」
「美しい君ならわかってくれると確信していたよ」
キザな笑顔ではなくこちらに親愛を寄せた笑顔を向ける、その柔らかな表情に初めてウルスタンへの親近感が湧いた…。
「…今、詳しい事情は聞かない」
「ありがとう」
ほとんど初対面の俺たちに話す事ではないだろうし俺だって夜天羅の事をおいそれと話はしない、だから気持ちはよく理解できる。
「さ!少し湿っぽくなってしまったがここからが本題さ!」
ウルスタンは一度、手を鳴らし場の雰囲気を切り替えてこちらへ手を差し出す、俺は迷うことなくその手を取り握手を交わす。
「話は簡単!僕たちと一緒に依頼を受けて欲しいにのさ!」
依頼を一緒に?確か…彼らは一等級だったはずで俺たちの支援がいるとは思えない、ギルド等級で聖銀を除けば最高等級…そんな彼らが共闘を持ちかけてきた。
「依頼を?」
「えぇ、この依頼書をご覧ください」
「二等級依頼?」
依頼は二等級だった。
気になる内容は遺跡の探索、遺跡の名前は"古代渓谷都市ディープホワイト"そこに眠る遺物の収集依頼で遺物は何でもよく遺物の価値が高ければ高いほどボーナス、か…特に難しい物には思えない。
「二等級なのにわしらと共闘するのはなぜじゃ?」
夜天羅の言う通り理由がわからない、てっきり一等級の難しい依頼かと思ったしそれなら納得がいく内容ではある…。
「それが厄介なんだよね!」
「これは"怠惰な依頼"なのです」
怠惰な二等級?名前からして嫌な予感しかしない、その一言で訳ありってことが察せられる…一等級の彼らが協力者を探すほどの内容。
「理由は色々あるんだが…要は依頼者の怠慢さ美しくないね!」
「詳しく話ますわ…一等級の依頼料を出し渋った依頼者がギリギリのラインで設定した依頼、もちろんあまりに酷ければ依頼抹消と罰金がありますが…等級が上がっていくとこの様な依頼が増えてゆきますのよ」
「本当!やんなっちゃうよね!」
アハハと笑いながら紅茶を飲むウルスタン、依頼が面倒なのはわかったが行動や言動から美しさを重要視するウルスタンが受ける理由が気になる。
「受ける理由は僕の本来の目的"真実の鏡"があると噂されているんだ、で、どうせなら稼ごうかなとね!」
「僕の愛しい人を付き合わせるんだ危険はなるべく減らしたい、だから美しい君たちに頼みたいんだ」
「ウルったら美しい人じゃないと一緒に受けないって言うもので…」
「当たり前じゃないか!美しくないやつに君達を、背中を預けられない!」
三人はときめいた様な乙女の顔をしていた…まぁ、理由はわかった、あとは受けるかどうか




