第十一録:新天地 一節「変わったヤツ」
──次の日。
「あら、おはよう!」
「おはようございますミレーネさん」
「ふぁ…おはようなんじゃ」
朝、起きた俺たちは身支度をしてから一階へ朝食をとりに向かいミレーネさんに挨拶をしてカウンター席へ座り二人でメニュー表を見て注文を済ました。
にゃぁぁぁんにゃん!
コイスケは大きく伸びをした後に俺の足元でゴロンと寝転びくつろぐ。
ガタ…椅子が引かれて俺の隣に誰かが座った、視線を向けると頭を抱えたメルサさん…察するに二日酔いなんだろう、俺はデボンズさんが昨日言っていた事を思い出す。
あれは酔い潰れたメルサさんの代わりに代金を支払おうとした時だった、曰く。
「金か?大丈夫だ!このバカは明日嫁んとこ行くからそん時にでも貰うさ!」
デボンズさんの言った通りメルサさんが来店してきた。
「メルサさん、おはようございます」
「え!?あ、おはようございます!昨日はすみません…羽目を外しすぎました…」
「おー!メルサどのおはようなんじゃ、してダリアは大丈夫かの?」
どうやらメルサさんは隣が俺だとは気が付かずに座っていたらしく驚いていた、夜天羅はメルサが二日酔いなのを見てダリアの心配をしている。
「いやぁ…見事に二日酔いですね、顔色が死んでましたよ」
様子はダメらしい。
仕方がない、昨日は酒を飲めない俺でもわかるくらい飲みすぎなくらい飲んでいたし夜天羅なんてやんわり止めていた。
「そういえば代金!多分ヨリツグさんが立て替えてくれたんですよね!?お返しします!」
慌てて財布を取り出そうとするメルサさんを止めてデボンズさんの言葉をそのまま伝える…もちろんバカの部分は伏せて。
「そうですか…お詫びとしてこの場は私が支払います!!」
断ろうにもメルサさんから強い意志を感じるもし断っても押し問答になるのは目に見えていた、俺は素直にご好意に甘えることに。
朝食を終え宿屋を後にした後にメルサさんと共に街を歩く、ギルドへの道をメルサさんに尋ねると道が途中まで同じでそこまで一緒に行く事になった。
「いや〜スープのおかげでかなり気分が良くなりました!」
「さっきまで顔が真っ青だったしのう」
「酒は呑んでも呑まれるなってやつですね」
「なんです?それ?」
「俺の国の教訓です」
「いいですねー!今度から使ってみます」
そのセリフに俺も夜天羅も次も使われる側じゃないか?と思ったが口には出さないでいた。
「あっ…と、私はここまでですねこの道をまっすぐ行けばギルドに到着します」
「ありがとうなんじゃ」
「ありがとうございます」
「いえいえ!では、また!」
メルサさんとは別れて俺たちはギルドへ入ると朝なのもあり依頼を受けにきた人々で賑わっていたかくいう俺たちもその中の一員だ、その列へ向かう途中。すると──
「お前が噂の魔族連れか?」
よくわからない奴に声をかけられた。
取り巻きなのか後ろに三人控えている…その表情はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべていた。
…面倒な奴に絡まれた。
しかし、揉め事を起こす気はない、適当にあしらってどっかに行ってもらおう。
「どんな噂か知りませんが何の用です?」
極力、丁寧な対応をして相手を刺激しない様にして適当に話す…今までいい人ばかりと生活をして意識してなかったがどこの世界にもそりゃあこんな奴だっている。
シャー!
コイスケも嫌な気配を感じたのか、普段する事のない威嚇をしその様子を見た夜天羅はコイスケを抱き上げてくれた。
「興味本意で声を掛けただけだ」
「そうですか」
名も知らない四人組は夜天羅をジロジロと気味の悪い笑みを浮かべながら見ている…まるで何か値踏みする様な不愉快な視線。
この時点でコイツらをボコボコにしたいが手を出されたわけじゃない、先にこちらから手を出せば負けだ。
俺は夜天羅を庇う様にしてそいつらの前に立つ、本当に不愉快だ…サッサと何処かへ行ってほしい。
「なんだよ、そんな警戒すんなよ」
手をあげてひらひらと煽る…明らかな挑発、しかし手は出さない、こちらに手を出させようとしているその小賢しさがうっとおしい。
何が目的か知らないが多分コイツらに目的はない、ただ暇だから絡んできている。そんな印象を受ける…
おまけに自分たちは強いと思って気が大きくなっている。
呆れた俺は夜天羅の方に視線をやると彼女も呆れ顔そこで俺たちは無視して列へ、無視された事にイラついたのか近づいてきて来て尚も絡んでこようとする。
「おい!む──」
「美しくない!」
よく響く男性の声、そこにいたほとんどの人が声の主に視線を向ける、堂々とした振る舞いでそこいたのは男の俺でも一目見て美形とわかる長髪の男性、傍には美女が控えていたしかも三人。
「君たちの言動!表情!振る舞い!全てが美しくない!」
美形の男は周囲などお構いなしにズカズカと物を言い絡んできた男たちは明らかにイラついていたが誰も何も言わない。
「チッ…」
美形の男を睨みながら舌打ちをして去っていく、チンピラに絡まれたと思ったら変人に助けられた…なんなんだ…しかし助けてくれた事で穏便に済んだのは事実。
「ありがとうございます」
俺と夜天羅は美形の男に頭を下げて礼をする、すると美形の男はこちらへ近づいてきて──
「君たちは…美しい!!」
「は?」
思わず声が出てしまった、なんだこいつ。助けてくれた人に失礼なのはそうだが…その、なんだ?
男の表情は変わらず自信に満ち溢れ真っ直ぐにな熱意の籠った瞳で俺たちを見据える。
「君たちのその溢れ出る愛!実に美しい…僕はウルスタン・ザ・ヴァレンタインだよろしく!!」
「縁継だ、よろしく」
美形の男、ウルスタンは手を差し出し握手を求めてくる…悪い奴ではないのは確かだ。




