第十録:廻る歯車 一節「相対するは─」
慌ただしい城を歩く数名の騎士。
その中の一人、ライラが声を荒げる無理もない…数時間前に兵士から教会のそれも教皇を乗せた馬車がこちらへ向かっていると連絡があった。
「ちょっとゴルドー!どうなってんのよ!?」
「わかりません…なぜこの様な…!」
「ワハハ!俺たちに釘を刺しにきたか?」
緊急事態にも関わらず焦らず酒を煽るゼルナさん、しかし目は笑っていない。
その後ろで青い顔をしているロッカ。
「僕の…僕の調査のせいです!」
「命じたのは私です、ロッカはよくやってくれました、それに動けば余計に怪しまれます…普通ならこんな行動はしないでしょう」
ロッカのせいではない、そんな事は全員がわかっている。
「…まさか、ギルバート聖下が来るとは!」
そう、まさに問題の人物が訪ねてきたのだ予告もなしで…こんな事前例がない!
「にしても…ちと礼儀のなってねぇ教皇様だな」
ゼルナさんは静かな怒りを露わにする。これはゼルナさんに限らず城に努める者全員が思っている、我が君主に対してなんて無礼を、と。
これが城の教会に用があり立ち寄ったならまだわからなくもないしかし相手は国王様にお会いする為。
それに相手も権威ある教皇、我が国の王は穏便に事を済ますため、事情を探るために招く事を決定された。
「つーか!他のバカどもはなんしてんのよ!」
「ハハ!今回はあまり責めてやるな、6人集まれただけでも行幸ってもんだ」
近衛騎士が10人揃い踏みする事はあまり無い普段は国王様護衛に二人か3人がお側にいる。
それ以外の騎士は国王様の意向もあり他の任務についているために今回も4人の騎士は任務で来る事はできない皆が揃う時は重要な式典の時くらいだ。
「マーガレットさんとリブラーさんは先に謁見の間で準備をしているのですか?」
「えぇ、二人は護衛任務の予定だったのですが急遽フィリッツランド様と謁見の間へ、現場の人手が足らないとの事でマーガレットには準備の指揮をお願いしています。」
何処もかしこもバタバタと動いている、マーガレット…ライラと一緒に異邦者の育成を担当しているもう一人の女性騎士。
そうこうしている間に私たちは謁見の間に到着し我々は中へ入り仕える国王に対して頭を下げて礼をした。
「近衛騎士4名只今到着いたしました」
「うむ、ご苦労…今回は無理を言ってすまないな」
「とんでもございません!私、ゴルドー率いる近衛騎士一同、全力で任務にあたらせて頂きます」
国王様との会話を終えた私たちは配置に着きリブラーとマーガレットは既に配置についていた、私たちも国王様のお側に。
扉がノックされ国王様が入室を許可する若い兵士が現れて報告。
「ギルバート・サイモン聖下がご到着されました!」
全員に緊張が走る、問題の人物とご対面。
兵士により扉が開かれた、教会衣装に身を包んだ男を先頭に数名の鎧を身につけた人物が入ってくる。
教会衣装の男こそギルバート・サイモンそして…教皇護衛部隊"戒罰執行隊"。
教会唯一の特殊攻撃部隊、彼らの詳細は教会内で知る者はごく一部で素性、装備、その他諸々の全てが伏せられている私たちにとっては未知の相手。…遠巻きから見る機会はあったが直に顔を突き合わすのは初めてだ、といっても相手は兜越し。
訪問者達は膝をつき頭を下げた。
「アレクサンダー・オル・フィリッツランド様…私どものこの様な無礼をお許しください」
許しを乞うか…本人たちもその自覚がある様だ、深々と頭を下げ国王様の一言を待つ。
「…よい、してこの様な事をしてまで急く理由をお教え願おうギルバート・サイモン聖下」
寛大な我が主は来訪者を許し受け入れたそして問うた、何ようかと。
顔をあげたギルバート聖は言った。
「異邦の魔族の件を私たちに教会に任せて欲しいのです」
その場の全員が息を呑んだ、国王様にはギルバート聖の件は報告済み…任せられる筈がない、特に魔族を敵視しているギルバート聖に任せられるはずがない!それに何故、彼は異様に魔族を敵視するんだ?




