第九録:騎士と枢機卿 一節「王国では」
縁継と夜天羅が旅立つ少し前。
──フィリッツランド城、国王執務室。
…鎧に身を包んだ男が城を歩く仰々しい扉を通り絢爛な椅子に座る人物に膝を着いて頭を下げる。
「アレクサンダー・オル・フィリッツランド王騎士アルレッド・ゴルドー只今、戻って参りました」
「御苦労、してヨリツグの様子はどうだ?」
国王はゴルドーに任務の成果を問う私は立ち上がり報告を始める。
「ヨリツグさんはエルサス村に身を置いてますが近々村を出るかと」
「そうか…戻っては?」
「きません、魔族の恋人がいるので必然的に向かう先は…」
「異界の扉か…旅をするとなれば2、3年でそこへ到着する。」
「はい、世界連合強襲作戦には間に合うかと」
世界連合強襲作戦、それは外魔に対して文字通り各国の総力を持ってして攻撃を仕掛ける。
このため現在、最北端の周りは防衛線、前線基地が構築されている…私はヨリツグさんにはこの情報を伏せている、機密なのだから当然と言えば当然。
「…お二人には申し訳ないですが現状、協力をせざる得ない状況です」
「あぁ…異邦の魔族は?」
秘書から手渡された報告書を確認しながら国王はゴルドーへ問う。
「確かに…アルメリア枢機卿の仰る事は一理ありますが、しかしあの魔族は決して罪を犯す様な魔族ではありません」
私は力強く、確信を持って答える、現に一般人の方と生活を共にしていたそれに…あの二人は互いを深く想い合っている。
そんな人が何の理由もなく他者を攻撃をましてや殺めるなんてありえない。
「…おぬしがそこまで断言するなら大丈夫であろう」
「世界連合強襲作戦の件、ヨリツグさんには然るべき時に私からお伝えしますがよろしいですか?」
「あぁゴルドー、君に任せる…下がって良いぞ」
「は、ありがとうございます…では失礼します。」
再び頭下げ礼をする、私は踵を返し退室した幸いなことに彼らの位置は掴みやすいこれから旅をするのであれば噂が立つだろう…魔族と人間の恋人同士、この世界でなら唯一。
「ゴルドーさん!」
城の廊下を歩く私の元に小走りでやってきたのは異邦人であり異邦部隊所属のオオザキ・リヒト、ヨリツグさんのご学友。
「おや…オオザキどのどうされました?」
「今日も稽古をつけてください!」
本来…異邦人の人々に神から与えられるギフトは基本的に支援系統のもの…しかしこのオオザキどのともう一人は違う前線向けのギフト。
驚くべきは本人達の才覚、まだ一月も経っていないと言うのに平均的な兵士では相手にならない…天才、そう言わざる得ないだろう。
「喜んでお受けいたしましょう」
「ありがとうございます!」
誠実で接していて気持ちの良い快活な青年彼は異邦部隊のリーダー的存在だ。
彼と共に訓練所へ向かう。
「ご学友の皆さんはどうですか?何か不満などありませんか?」
「はい!みんなこの世界を楽しんでいますよ!訓練はいやそうですけどね」
ハハハと笑いながら右手で首をさする、一応彼ら異邦部隊も前線近くまで出るため最低限の体力訓練は必要だ、メインはもちろんギフトの練度を上げて最前線で戦う兵士に対して強化をしてもらう。
「…覡君はどこ行ってしまったんですかね」
「…仲がよかったのですか?」
「いえ…話した事はほとんどありません、ただ」
「?」
「何故、あんな出ていき方をしたのか…」
彼らはヤテンラさんを知らないし私もアルメリアが言う邪悪な魔力を知らない…しかしヨリツグさんはあの時出て行かざる得ない理由があったのだろう。
異邦者のみなには私から説明をしているものの肝心の理由は不明…故にヨリツグさんが暴れて出て行ったと思っている、魔族というのは混乱を招くそれに誰も何故恋人が魔族というのはわからない。
恋人を守るためにあの様な事になった、とは説明したのだがそんな半端な説明で懐疑的な顔をする者は少なくなかった。
「気になりますか?」
「あ、いや、はい…理由を話せば出て行かなくてよかったのではないかと…」
オオザキ殿をは争いを好まない性格でそれゆえにカンナギ殿の行動が不可解で腑に落ちていない…私が会った事は秘密裏、ヨリツグさんのことを考えての事それに教会の動きが怪しい。
今、詳細を明かすと何に影響を及ぼす…会話をしてるうちに訓練所へ到着した。
城の野外に存在する訓練所は広く打ち込み用の木製のマネキンや弓の的など多岐にわたる用具がある。
そこで一人待つ女性がいた。
「遅い」
女性が不機嫌にひと言呟いた名はシガ・アマネ、異邦者でもう一人の前線向けギフトの持ち主。
「ごめんね!天音、待たせちゃった。」
シガ殿に駆け寄り謝罪をする、オオザキ殿…この二人の関係はどうやら幼馴染らしいてっきり恋人かと思った、だがこの二人と接していてわかったのは両思いだという事、互いに思いを伝えれないでいる。
若さが眩しい…なんとも羨ましいものだ。
私もかつての幼馴染を思い出す…近い距離でいるにも関わらず心は遠く離れた、違うな…閉してしまったんだ、過去と共に…
「ちょっと!なに物思いに耽ってるのよ!」
「あ、天音!」
二人の声にハッとして思考を現実に戻す、あたふたしているオオザキ殿をと変わらず不機嫌顔のシガ殿
「すみません、お二人を見ていると懐かしくなってしまって…」
脳裏に浮かぶのは幼馴染の笑顔、私は…あの笑顔をもう一度みたい心の底から笑う"太陽の聖女"と呼ばれた彼女。
あぁ、いけないな二人が困惑している。
「?」
「さぁ!訓練を始めましょう!」
私は強引に話題を終わらせて疑問符を浮かべる二人に間髪入れず訓練の開始をせかした。




