第六十五録:地に墜ちた空園 二節「潜入」
──「これがアキレウサスか….」
見下ろすは廃街は斜めだった…"墜落した空の園アキレウサス"その名の通りだろう。
この広大な平皿の様な形の上に形成された街が空に浮いて墜落しただから斜めになり片方はひどく地面に埋まっている。
「…すごいですよね!こんな街が空に浮いていたなんて、現代の魔法や魔術では到底不可能でしょう!」
やはりそれほど神代の技術は超越していた、神が関与していたとなれば当然と言えば当然、それはディープ・ホワイトやフラウリンでよく理解している。
「では!早速潜入して調査を開始しますか!」
ベリルさんの言葉に全員が頷きアキレウサスの比較的安全な場所へレーヴァテインを着させた。
…元々の自然が豊かだったのか、木々に街が侵略されている。
ディープ・ホワイトとは大違いだ、野晒しで放置され人の手から離れると神代遺跡といえども抗えない自然の恐ろしさと強さ。
それを夜天羅と一緒に10階建のビルから眺めていると…異様な者が視界に入ってきた。
「人…いや死体?」
もはや歩く骨と化した動く死体…少し前の記憶が蘇ってきた。
「ネクロマンサーってやつじゃったかのう?」
「そうです、しかし…アレらには術者がいないのです。」
神妙な顔をして俺たちへ説明をしてくれるネーメルさん。
「それってどういう?」
「かつてここを根城にした術者がいたのです、何百という死体でここを棲みつきそしてなぜか自害した…その残党です。」
術者不在の死霊?果たしてそれは成立するものなのかと疑問に思うが現に目の前で動いている、これは疑いようがない事実だ。
「アレがネクロマンサーが忌み嫌われ恐れられる理由です、死霊術を死体へ付与しますと死霊が生まれそれは術者から独立します。」
「独立じゃと?」
「はい、指揮系統は術者ですが死霊の魔力供給は"同族"の肉を喰らい補給するのです。」
「もちろん!術者からの魔力供給も可能ですね!」
ベリルさんが辺りを観察しながら補足を入れてくれる。
「ノーリスクで増やせるってわけですか?」
「そうです、デメリットを挙げるならば"弱い"です。しかし元が強い死体、特に魔物となれば話が別ですが、余程の幸運でなければ出会えません。」
なるほどな…かつて戦ったジェンドゥルは相当な上澄みだろう。
「でも、ああなるまで魔力を保てるもんかの?」
確かにな、夜天羅の疑問もよくわかる。
下の道路をおぼつかない、拙く弱々しい歩き方に肉が削げ落ち骨にこびりついた肉はミイラの様に乾燥している。
風前の灯…そんな状態になるまで長い時間、魔力が持つとは思えない。
「主に理由は2つ、同族を喰えなくとも他の動物からも魔力供給はできます、しかしこれは効率が物凄く悪いです。」
「もう1つは動かない、その場から動かず極限まで魔力の消費を抑える。この2点です。」
「なるほどのう…」
納得の答えだ、それなら確かにあんな風になるまで動いていられる。
「今、徘徊しているのは人族である私たちの魔力を敏感に察知したからですね。」
「えっ、それって大丈夫なんですか?」
察知の度合いによってはここへ集まってくるかもしれない。




