第五録:段取り 五節「来訪者」
「ありがとうございます…」
バルサーヤさんの助言に感謝をする、俺の考えは決まった、銘を打つ。
だが今は直ぐにはできない銘を考える時間がほしい、こんな大事な事を一朝一夕で答えは出ない…その後、夜天羅の弓や幾つかの道具を購入し店を出た。
ん〜〜にゃぅぅう
にゃん
立て看板のそばで丸くなっていたコイスケは俺達に気がつき起き上がりあくびをして伸びた。
俺は荷物で手が塞がっている、代わりに夜天羅が抱き上げて腕に収める。
「荷物が増えたのう〜」
「一度荷物を置きに行こうか」
「じゃな〜」
俺たちはカルステ家へ足を進めた途中、軽く軽食を買い食べながら向かう、ほどなくしてカルステ家に到着し店側の扉ではなく家側の裏口のドアベルを鳴らすと直ぐにドアが開きセイナさんがで迎えてくれる。
「……ふ、二人とも…おかえり…」
セイナさんの様子がおかしい…酷く緊張をしており表情が硬い。
「?ただいまです」
「ただいまなのじゃ〜…どうしたんじゃセイナどの?」
うにゃん?
セイナさんの様子が気になった夜天羅が問うとぎこちなく顔を上げた。
「な、中で二人にお客さんがお待ちよ」
「お客?」
夜天羅と顔を見合わせ互いに警戒モードに入る、理由は当然未知の来客に対して…なぜなら俺たちに尋ねてくる様な知り合いはいないしクラスメイトはここにいることも知らないし来る理由がない。
もしファスさんならセイナさんはこんな緊張していない俺たちはセイナさん後をついていく、異様な雰囲気察したコイスケは夜天羅の腕から静かに降りた。
「…もしもの時は三人を頼む」
「わかったのじゃ…無理はするんじゃないぞお前様」
小声で会話して敵だった場合の役割を決め夜天羅がカルステ一家を避難させ俺が戦う、ガチャリと扉が開きリビングの光景が視界に入るとそこには─────
「ゴ、ゴルドーさん!?」
「ヨリツグさん!お戻りになられたか!」
そこにいたのは騎士ゴルドー、まさかの二日振りの再会、城で見た時とは違い重厚な鎧ではなく軽装…敵ではない事を安堵しつつリビングに入りすぐに疑問が湧く。
「どうしてここが?」
「ヨリツグさんの魔力の残滓を追ってここまで来ました、すぐに見つかって良かったです」
ハハハと快活な笑顔を見せる、魔力の残滓か意識した事がないな…このあたりも学んでいかないとな、それになるほど…セイナさんが緊張するわけだゴルドーさんは王様の近くにいた事から近衛騎士で有名人、そんな人がなんの前触れもなく現れればこうもなる。
「して、何の御用でわしらに?」
「その前にまずは…この度はアルメリアが申し訳ございません」
ゴルドーさんは立ち上がり頭を下げる、彼に謝罪をされるのは2回目だそれも理由は同じ。
セイナさんは絶句した様子で驚いていた。
「いえ…あれはゴルドーさんに非があるわけではないですし」
「お心遣い感謝致します。」
頭を上げゴルドーさんは席についた、俺たちもテーブル席に対面に座る…そういえばリグレさんとリリーちゃんは?外に買い物でも行っているのだろうか?家にいない二人の事を考えているとゴルドーさんが話を始めた。
「では…ここにお邪魔させて頂いている理由ですがお二人に渡さなければならないものがありそれを届けにきましたお二人事が心配でもありましたしね」
そう言ってウエストポーチからゴルドーさんが取り出したものは2枚のカードサイズの何かをテーブルにそれを並べてこちらへ差し出した。
「これは?」
「鉄のカード?」
俺たちはカードを手に取る。
それは薄くしかし簡単には折れそうにない強度を感じる、重さはそれほどなく表面には俺の名前とナンバー、国章が記載されていた。
「これはお二人の身分証になります。」
俺たちは本当に運がいい…これでギルドに登録が出来るしかしゴルドーさんや国王は夜天羅の名前はしらないはず….
「ゴルドーさん、夜天羅…彼女の名前は知らないんじゃ?」
夜天羅のカードを見るとやはり名前欄は無記名
「えぇ、だから私が来たんです。お二人から足りない情報を貰い同伴者の技術者に製作してもらい、明日に完成させてお渡しする予定です。」
明日には身分証が手に入るのか、これで後は依頼があるかどうかだがまたギルドへ行きあの受付嬢さんに相談しよう依頼があればすぐに確保しておきたい。
「それはありがたいです」
「いえいえ、当然の対応です…では情報をお願いします。」
ゴルドーさんは紙を取り出して俺たちに質問を投げかける俺たちの足りない情報を伝えた、質疑の時間はすぐに終わる。
「ありがとうございました、これで身分証が作成できます。」
そう告げると立ち上がり足早に裏口へ向かうとセイナさんは慌てて見送りに行く。
「ただいまー!」
「ただいま…おや?客人でもきているのかな?」
タイミングが良いのか悪いのか…外に出ていた二人が帰宅したリグレさんは見慣れない靴を見て来客を察したんだろう、何も知らない二人がリビングに入ってきた。
「ねぇ!ママ、パパがお菓子買ってくれたの後でみんなで食べよ!」
無邪気で無垢なリリーちゃんは元気よく母であるセイナさんに駆け寄る。
「どうも、お邪魔しています」
ゴルドーさんはリグレさんに向かい挨拶、たまらずフリーズするリグレさん。
「……ど、え、あ!ご、ごゆっくり」
リグレさんはすぐに自体を把握、しかしわからないことがわかるといった風で混乱づくしだろう。
「あ!いらっしゃいませ!」
ゴルドーさんに向かって遅れて挨拶をするリリーちゃん。
「はい、お邪魔しています」
ゴルドーさんはリリーちゃんに笑顔を向けるとリリーちゃんは何を思ったのかガサガサと持っている紙袋から焼き菓子を取り出した。
「はい!お客さんの分です!」
ゴルドーにお菓子を差し出した、俺と夜天羅からしたら微笑ましい光景だがカルステ夫婦の顔色が真っ青だ。
「有難く貰いますね」
リリーちゃんからお菓子を受け取るとそこに慌ててセイナさんがリリーちゃんに駆け寄る。
「す、すみません、うちの娘がご無礼を!」
「とんでもありません!元気な良い子ではありませんか」
「??うん!!ありがとうございます?」
何だかよくわからないが褒められたと判断したリリーちゃん。
「君の様な子が元気だと私はうれしいです」
「では、私はこれで失礼致します。」
そう言って裏口まで見送る夫婦、リグレさんの動きがもはやロボットのそれだ。
「まさか…ゴルドーさんが来るとはな」
「あの変なおなごかと思うてヒヤヒヤしたのじゃ」
夜天羅言うおなごはあの枢機卿だろう、かく言う俺も頭の片隅でもしやとは思っていたが枢機卿じゃなくてよかった。
にゃんにゃにゃ!
「わーい!」
両親の心情などつゆほども知らない天真爛漫なリリーちゃんはコイスケと遊んでいる。




