第四録:平穏な村 四節「あの魔物」
出された紙に目を通す。
英語の筆記体に似た文字…それをなぜか俺は読めてしまう。
「ほープレート金貨五枚…のじゃ??」
隣で見ていた夜天羅も文字を認識している、しかしプレート金貨がどれほどの価値を持つかよくわかっていない様子でそれは俺も同じだった。
俺も通常の金貨の価値すらよく知らないそれを知る前に城から飛び出たからな…
「ファス、金額ですが多くありませんか?」
俺たちの様子を見たリグレさんがさりげない助け舟を出してくれた、リグレさん曰くこの金額は多いらしい。
「あぁ、これは依頼料も含まれています」
「依頼料?」
「はい、あの魔物はギルドへ協力依頼を出しておりましたのでこれは倒してくださったヨリツグさんへ正当な報酬です。」
誠実、彼に限らず出会う人に余裕があるそれだけ豊かで住みやすいのだろう…外魔という敵が封印されているのも大きいかもしれない。
「いいんですか?依頼なんて受けてないのに」
「えぇ、どうか受け取って頂きたい」
ここまで言われてしまうと受け取らないわけにはいかない。
「こちらこそありがとうございます。」
紙にサインをするスラスラとこの世界の文字が書けた、少し…恐ろしいが魔的な害はない。
サインを済ませた紙をファスさんへ手渡すと確認してからサイドポケットへ収納。
「では、これが報酬のプレート金貨5枚になります。」
その名の通り黄金のプレートが手渡された厚さは五〜六ミリくらいだろうか、大きさは日本紙幣より一回り小さいくらいのサイズそれが五枚も。
受け取ったそれは重くずしりとした重量感…これで一体いくらになるんだ?なんかとんでもない大金が急に降って湧いてきただがおかしい、あの魔物は弱かったのに兵士が解決できないほど苦戦していた、なぜだ?
「のうファスどの、あの魔物はそんなに強いのか?」
夜天羅がファスに問う、彼女も気にはしていたようだ。
「強さは平均的な魔物、せいぜい4〜6等級で私とメルサであれば対応は可能です…しかしあれは変異個体といって森の中では等級が跳ね上がり2等級、強いもありますがそれ以上に厄介です」
厄介…特殊な何かがあるのか?それに等級の幅が広い、4〜6は平均くらいと考えていいんだろうか?
「そんな危険なヤツが生息してるんですか?」
「いえ、あの魔物…ウルシヴは番で行動して住む場所を転々と移します、今回は運が悪かったとしか…番の方は討伐できたのですが」
決まった生息地がなく移動するか…この地はウルシヴより弱い魔物しかいないんだろうそんな安住の地で繁殖しようとしたのか…少し気の毒だが致し方ない。
「あのウルシヴは変異種でした、変異名はフォレストダイバー…その特殊な羽で森を無音で動きます。」
「さらに頭もいい、だから普段なら日中は森から出てはきません、夜に人を襲ったり日中は森の近くで奇襲をしたりと狡猾なやつでした。」
なるほどな…だから何も音がしなかったのか、夜天羅はよく気がついたもんだ。
「今回…道に出てきたのは奇襲された?」
「いえ…フォレストダイバーの習性ですね獲物を執拗に追いかける、それに加えてなんの装備もしていないお二方にリリーちゃん…勝てると思ったのでしょう、結果はまぁ…」
武器も持たない人に負けるはずがないそんな傲慢とそれに加えて…番を殺された恨みもあったのだろうな。
「では私はこれで明日には皮と羽毛を別の者が届けに参ります。」
「ありがとうございました」
ファスさんに礼を告げると軽く敬礼をしてからリビングから去っていく、リグレさんは見送りのため一緒に裏口へ。
しかしこの金貨は思わぬ収穫、しばらくはお金に困りそうもないだろうな…あとでリグレさんに価値を教えてもらおう。
見送りを済ませてすぐに戻ってきたリグレさんは再び席に着く
「先ほどはでしゃばってしまいすみません」
素材の交渉をした事をリグレは改めて謝罪した
「いえ、それほど珍しい物なんですか?」
「えぇ、変異個体となれば高級素材です」
「これはお二人にご提案なんですが…」
リグレさんの言葉に夜天羅と顔を見合わせる、二人して頭にはてなマークを浮かべる。
「提案とな?」
夜天羅がリグレさんに問う
「お礼も兼ねてお二人に服を仕立てたいと思うのですが…いかがですか?」
再び夜天羅と顔を見合わせる、願ってもない提案だ旅をするなら服から武器まで揃えないとと思っていた…これは願ってもない提案、しかし─
「よいのか?無償でそのようなこと」
夜天羅が思っていた事を言ってくれた。
リグレさんはプロだ、そんな彼が無償で服を仕立ててくるなんて…確かに願ってもない事だしかし悪い気がする、別に何かを期待してリリーちゃんを助けたわけじゃない。
「お二人は私達夫婦の何にも代え難い宝物を守って頂きましたから、そのお礼です」
それだけ夫婦にとってリリーちゃんは大切な存在、代えなんてどこにもいない。
「それに…仕立てに関しては自信があります」
自身の技術に対する絶対的な自信それは長年、仕立ての腕で生計を立ててきた実績からくるもの自分ができる最高の返礼が服を仕立てる事、リグレさんの言葉に俺たち二人は─
「では…お願いします。」
「わしからもお願いしますじゃ」
俺たちは提案を受け入れた
「楽しみにしててください、必ず最高の物をお渡しいたします」
にこやかなリグレさんの顔は自信と好奇心が見て取れる、俺はもちろん夜天羅も服を仕立ててもらうなんて始めての事、彼女も嬉しそうだ。




