第三録:仮初 三節「サバイバル」
「異界の扉を目指そう」
「異界の扉?」
夜天羅に異界の扉を説明する。
「確かに…それが一番の道かもしれんな…」
城に戻れれば良いが夜天羅を連れていくにはリスクが高すぎる夜天羅の様な
人外に対する対応が不明なのも理由の一つだが仮に悪くない対応でも問題はある。
城にいたら一年で帰れますと言われてもあの枢機卿がいる限りは無理だろう。
それに城に軟禁は勘弁願いたい。
夜天羅が一緒なら無理に帰りを急く事はない一緒に異界の扉を目指せば良い。
「目標はわかったのじゃが手始めに
どうするのじゃ?ここを仮の拠点にするかの?」
「…そうだなぁとりあえず近場の街か村にでも俺一人で行って物資を買ってくる」
「情報収集もしたいし王様から貰った物に地図と貨幣があるしな」
「拠点にするは人里がどこにあるか次第…」
俺が無理言って貰った物、地図と折り畳みナイフ
その際、王様の善意で貨幣を少し入れたバックパック
…本当に最悪の場合はこれを持って愚策ではあるが独断で
出て行く予定だった…こんな形で出て行くとは予想外だが。
「嫌じゃ!わしも一緒に行く」
「でも夜天羅、裸足だし…この世界の人が人外に
どんな反応をするかわからないからなぁ」
もし夜天羅に危害を加えられたらぶん殴ってボコボコにする自信がある。
「うぐっ靴なら大丈夫じゃ
藁を編んで作ればいい!人は…その…村の外で待つ!」
絶対について行くという確固たる意志を感じる
指摘した点に対して俺なら妥協するだろうなってラインの代替案。
「わかったよ…草履を編むってことは藁みたいなやつがあの家にあったんだな?」
「うむ!」
さすが鎌倉時代の山育ち草履を作れるらしい
「じゃあ…俺は川を探す、腹ごしらえをしよう
魚なら捕まえれると思うしバケツで水を確保してくるよ」
ここに誰かが生活をしていた小屋があって井戸や貯水の為の水壺が
ないのを見るに近場の何処かに水場があるはずだ。
外にあった木製のバケツに穴が空いてなければ水を汲んでこれる。
「承知したのじゃ!」
そうして各々が行動に移る
俺とコイスケは水と食料、夜天羅は小屋で外に行く準備を。
コイスケを抱っこしながら足を進める、ゴロゴロと喉を鳴らしている
「お前どうやって着いてきたんだー?」
コイスケを撫でながら明確な回答は返ってこないであろうが言葉を投げかける。
にゃあーにゃん!
元気な返事が返ってきた普段から話しかけてるからコイスケはかなりお喋り。
戯れながら探索する事1時間半、川を見つけた
正直こんな短時間で見つかるとは予想外だ
半日は覚悟していた最悪、見つからないことも視野にいれていた。
「運がいいな俺は」
コイスケが腕から降りて川辺に近づいて水を飲む
続いて俺も川に近づき近場の拳代の石を川で丁寧に洗い乾かす
その間にバケツとガラスコップを綺麗して水を汲む。
あとは探索中に見つけた木の棒とツタを手に取り折り畳みナイフを括り付ける。
靴と靴下を脱ぎズボンを折りゆっくりと川に入る。
冷たい澄んだ川に足をつけた、ふくらはぎよりやや下辺りの水位。
即席の銛を構えて静かに待つ、気配を消し、動かず石の様にただその時待つ。
魚の警戒が無くなり俺の近く、銛の射程圏内に入ってくる。
まだ遠い、まだ、まだ、今!!
油断した魚は俺のすぐそばまで来たすかさず銛を放つ、見事に命中。
銛を持つ手に魚の振動が伝わる。
川魚にしてはかなりのサイズの魚を捕まえれた
形はマスに似ていて30後半位のサイズだろうか?
…淡水魚に毒があるイメージはないが
いかんせん世界が違う、毒がないことを祈ろう
とりあえず一匹、最低あと一匹はほしい。
場所を変えて同じ方法で狩りをする。
結果は同じ魚が三匹、よく川を見ると泳いでいるのは
この魚ばかりでここで繁殖しているのだろう。
川辺には大人しく待っているコイスケ。
俺は川から上がり川辺で魚を捌く、腹を開き内臓を抜く
小屋に帰ると水は貴重だここで捌いて洗い後は焼くだけの状態にする。
その後は手を洗い足を乾かして荷物を持つ。
重い…バックパックにパンパンに石を突っ込んだせいだろう、しかし必要な物だ。
重い荷物を持ち帰路に着く。
徒歩30分で小屋に着いた、やはり最初考えは当たっていて近場に川があった。
小屋の扉を開けると夜天羅が藁を編むのに集中していた俺に気がつき笑顔を見せる
「お前様!成果は─あったみたいじゃな」
俺の手に持ってる物を見て成果があった事把握する。
「夜天羅もだいぶ進んでるみたいだな」
片足の藁草履はできておりもう一枚の製作に取り掛かるところだった。
「じゃあ俺は外で食事の準備をしとくよできたら声かける」
「おー!たすかるのじゃお前様」
再び俺は外にでて準備を始める
手始めにバックパックに詰めた石を組んで
簡易的なかまどをつくりマッチで火を起こした。
そしてかまどの上の平らな部分に洗った石を置いて石を温める
少し休憩している間に石が十分に熱されその熱い石をバケツの水へ入れる
いくつか入れると水が沸騰し大体5分ほど煮沸させる。
流石に川の水をそのままは危ないだろうから
煮沸消毒をして出来るだけ安全な飲み水をつくる。
バケツが鉄なら直に火を掛ければこんな手間をしなくて良いんだが…
ない物ねだりをしても仕方がない。
後は水が冷めるのを待つその間に太めの枝に刺した魚を焼く。
これで今の所の俺の仕事は終わった、外で空を見上げる木と木の間から見える空。
こっちの世界でも青空は綺麗だな…
パチパチと魚の油が火に当たりはぜる、美味しそうな焼き魚の匂いが漂う。
「はー美味しそうなのじゃ」
匂いに誘われて夜天羅が小屋から出てきた
足元をみるとどうやら草履は完成したみたいだ
「早いな」
「勘を取り戻したら早く終わったのじゃ」
かまどの前に座る俺の隣くる夜天羅。
本当に陽の光を浴びても良いのだと改めて実感する。
「お前様はこういうの得意なんかの?」
「まぁ、昔は親父がよくキャンプに
連れて行ってくれたその名残みたいなもんだな」
今回の知識も殆どがキャンプの時の記憶を掘り出してした事だ。
魚を見ると良い感じに焼けたみたいだ
串を持ち夜天羅へ手渡し熱消毒したナイフを
取り出して魚の半身を大きい葉っぱの上に乗せて口を使い吹き冷ます。
人肌ぐらいまで冷ましたらコイスケにも出す
「じゃあ…食べよう」
「のじゃ…」
未知の魚を口にする、いくら良い匂いだからといってもやはり怖さはある
二人目を合わせ意を決してかぶりつく。
「う、うまい…」
「美味しいのう!」
淡白な白身がほろほろと口の中で崩れる。
味付けは何もしていない、なのにほんのりと塩気を
感じ脂が乗っているがしつこくない。
食べ始めると止まらずあっという間に完食した
「なかなかのサイズで満腹じゃ」
「確かに結構量があったな」
コイスケは半身を食べ残りは二人で食べたので一匹+小魚くらいは食べた。
「青空の元で食べるのはいいのう」
「………だな」
手渡したコップで水を飲みながらしみじみとした様子を見せる夜天羅
無理もないだろう…彼女は邪気のせいで太陽を恨んだ事もあると俺に語った。
そんな彼女が青空の元で食事をする…なんだか…見たいものが一つ見れた気がする
目の前の光景、俺はこれを当たり前にしたい。
しかしだ今は仮ということは忘れてはいけない
日本に帰れば夜天羅の状況は戻ってしまう、今は未来を先取りしているだけ…
「ほれ、お前様も水じゃ」
「あぁ、ありがとう」
自分が飲み終わり新たにバケツから掬って俺に差し出す。
受け取り水を飲み干す、喉の渇きが潤い半日ぶりの水分が体に行き渡る。
「よし…腹ごしらえもできたし」
「人里を探すかの?」
「あぁ、ここの元住人が完全な自給自足を
していなければ村がどっかにあるはずだ」
川が近いというのはでかいヒントだ、生活するための必須な水がある
ここは多分上流と中流の境目、だとすれば降っていけば下流付近に村があるはず。
「ちょっと危ないが川に沿って下ろうと思うどうだ?」
「うーむ、鉄砲水が怖いが無闇に
サバイバルするのものう…山の天気に注意しつつ下るかの」
夜天羅も同意をしてくれ川沿いを下る事で意見が纏まった。
必要な物を持ち焚き火を消した
1日、世話になった小獲った屋を離れる、また戻ってこないことを
願いつつ歩みを進めて先ほど魚を獲った川に到着。
「山のほうは…大丈夫そうじゃな」
山を見ると晴れており今の所は問題なさそうだ
しかし油断をしてはいけない山の天気は変わりやすい。
「なるべく急いで川を下ろう」
焦りは禁物だが悠長にもしてはいけない、注意しつつ二人で川を下っていく。
休憩を挟みつつ下る事2時間。
山の天気も変わる事なく中流の終わりに差し掛かった。
辺りをざっと探索すると人の痕跡を発見する
川辺の近くに明らかに人為的に補装された道があった。
夜天羅と顔を見合わせてその道へ入っていく。
目的である人里に近づいているが緊張感がまさる、この道で人に会えば
夜天羅への人外への反応がわかる。
もし悪い反応なら当然人里には入れない
最悪、武器を持って追われるの可能性だってある、周りの音と気配を警戒する。
恐ろしいのがまだ野生生物に遭遇してない、理由はわからない運がいいのか…




