アルとエル
アルが目の前のドギマギしたフレンシアを見ていると、こちらに走ってくる集団が見えた。
「・・・嘘でしょう。はあ、勘弁してよ。」
アルが呟くと、自分の世界に入ったフレンシアを自分の後ろへと送り込んだ。
アルが指を鳴らすと、足元に魔法陣が浮かぶ。
アルの足元から静電気が現れ、徐々に強くなっていく。
やがて雷のように、下から上へ黄色の光線が上る。
アルの後ろから『まじやば・・・すご』という言葉が聞こえていたが、変な言葉だなあ、で終了した。
アルたちに向かってくるトロイたちが、それぞれ剣を抜いた。
トロイたちはなぜか、アルがフレンシアを連れ去った、という先入観に埋め尽くされていた。
フレンシアはとにかく、アルとエルを怒らせたくなくて、叫ぶ。
「ダメダメダメ!剣は抜かないで!彼は魔獣が追って来てるのに気づいて、魔法陣を展開させただけだからー!!」
フレンシアの叫びに、え?と反応して、トロイたちは走りながら後ろを振り返ると、確かに魔獣が追ってきていた。しかも、魔物までいる。
「あ!違うのー!剣は抜いて!だけど向ける方が違う!!」
もう、フレンシアはパニックになって、自分でも何を言っているのかわかっていなかった。
「早くなんとかしーてー!」
フレンシアは叫びながら、アルの肩を掴んで揺りだした。
「ちょ・・・やめ・・ちょ・・・ちょっと・・・う・・・」
ゆすられ続けたアルは、徐々に顔色が真っ青になり・・・
ーゴオオオオオオオオオ・・・
アルの周囲にすごく小さな竜巻がおこり、一気にフレンシアの髪の毛を逆立てた。
アルカイックスマイルのアル。
「わかってるから。黙ってて?」
フレンシアは静かに、そろりと手をよけ視線を逸らしながら俯いて、アルの後ろに下がった。
忘れちゃだめ。
彼は冷酷になれる人。
冷酷になれる人。
冷酷になれる人。
うん、忘れない。
アルのいる所まで走り続けていたエルは、立ち止まって魔獣たちの方に向き直った。
魔獣よりも遠くから、ものすごいスピードで何かがきた。
何かはエルの目の前で止まった。
エルは、その何かを手に取りありがとう、と呟いた。
この何かは、エル愛用の弓と矢。
そして、この弓を持って来てくれたのは木の根。
全ての植物には精霊が宿っている。
全ての精霊に愛されるアルスが、どうやらエルの弓を届けさせてくれたようだ。
エルは弓を受け取り、矢を腰巻きにくくりつけた。
アリア
心の中で自分のルフドを呼ぶ。
『ルイーズ。』
エルにしか聞こえない声が、耳のそばで聞こえる。
弓に風を、力に水を
『わかったわ』
エルがもった弓の弦に風が纏う。
どこからか流れてきた水が、弓の形を彩りそれを構えた。
エルの周囲に風が舞い、エルは狙いを定め、放った。
放たれた矢は魔獣めがけて飛んでいった。
1番前にいた魔獣に矢が刺さると、水は一気に膨れ上がり、周囲の魔獣や魔物を巻き込んだ。
エルの攻撃を避けた魔物が、横から抜け出て猛スピードでエルに向かう。
エルがそちらを弓で狙おうとすると、エルの後ろから炎が放たれ魔物は燃え盛った。
エルが振り返るとそこには、シルバーブロンドの髪を靡かせた、スカイブルーの瞳をした青年が剣を構えて立っていた。






