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取り戻すために 3




ミクを救おうと決意した2日後、意外な人物の訪問を受けた。


エドウィン様の側近であり、ナナの婚約者であった、アルバート様だ。


先触れもなく来られたので、私は不在。

ベルが対応してくれた。


学校の研究室にいた私は、知らせを受けて飛んで帰った。

ミクの消息に関わる話かと思ったのだ。



「マーガレット嬢、お久しぶりです」


美しいボウ•アンド•スクレープは、昔のまま。

——でも、酷い痩せ方。

病的な目の下の隈と顔色。


私の知るアルバート様とは、大分かけ離れた男性が、そこにいた。


驚きで一瞬固まった私に、彼は苦笑を向けた。


「だいぶ(ナリ)が変わったので、驚かれたことでしょう。


突然で申し訳ないが、話を聞いていただけないだろうか」


先程の礼よりさらに深く、彼は頭を下げた。


私は慌ててソファを指し示す。


「頭をお上げになって、かけて下さい。

そんな事されなくても、お話は伺いますわ」


軽く頭を下げて、アルバート様はソファに腰を落とした。


ベルの同席をお願いして了承を得ると、私たちは対面に座る。


同時に、侍女がお茶を運んで来た。


お茶に口をつけて乾いた口を潤すと、アルバート様は私の()を真っ直ぐ見つめた。



「既にお耳に入っていると思いますが、8ヶ月程前から、聖女ミク様が行方不明になっております」


「存じ上げておりますわ。

ワルター王子から問い合わせがありましたの」


少し、声に棘があったかも知れない。

アルバート様は、苦笑を浮かべた。


「どうか、失礼をお許しいただきたい。

直接マーガレット嬢やご一緒の令嬢方にお話するには、私どものした事は、あまりにも酷い。


——協力をいただく資格すらないと、エドウィン様が仰せでした」


「左様でございましたか…..」


私の知るエドウィン様らしい台詞だ。

責任感が強く、誇り高い。


『魅了』は解けたのだろう。

確信を持ってそう思う。

きっと、他の攻略対象者の皆様も。


「それで、義妹(いもうと)は見つかりましたのかしら?」


小首を傾げて問うと、アルバート様は首を横に振った。


「いえ……見つかっていません。

と申しますか、積極的に探していないのです」


「えっ!それはどういう……」



「聖女のなんらかの能力(チカラ)で、我々の意思や感情が捻じ曲げられていた事が分かっています。


精神に作用する何らかの能力は、危険であると行政府で判断されました。


もし見つかった場合、対処法が見つかるまでは、聖女は神殿で軟禁される事になっております」


——何ですって…?


私は、身体が震えるのを感じた。

恐らくこれは———怒り。

理不尽かもしれない。心を捻じ曲げられた彼らは、確かに被害者だ。


でも、あの子自身の魅力に、貴方達は少しも心を動かされなかったというの?


——私には、そうは見えない。

貴方達はあの時、ミクを『愛していた』。

だから、私は…私たちは……。


私は、止められず口を開いた。



魔獣の大規模侵攻(スタンピード)では命をかけて助けてもらったのに?軟禁ですか?


意思や感情を捻じ曲げられていたと言われましたが、あなた方の意思が弱かった可能性もあるのですよ?


それをまだ何も分かってないのに、全て聖女(ミク)のせいにするの…?

貴方方は責任を取らないの?


…あんまりだわ‼︎」


ぶるぶる震える私の肩を、ベルがそっと抱いてくれた。

宥めるように、腕を摩ってくれる。

それで、漸く落ち着いた。


「気分を悪くされたのなら、申し訳ない。私の言い方が悪かったですね。


聖女の功績は忘れた訳ではないのです。

犯罪者のように、捕まえておく訳でもない。


暫く神殿から出ずに、能力のコントロールを覚えていただく、といった形になると思われます。


でも、それでも行動は制限されるので、自分から出ていった聖女様には、見つからない方が良いかも知れないと言うことで、探していないのです」


「——成る程。失礼いたしましたわ。

取り乱して申し訳ございません」


一理あるから一応頭は下げるが、アンタがミクにデレデレしてたのは忘れてないぞ。


でも——だからこそ、貴方はそんなに痩せているのね。

後悔と、罪悪感。

そして…イェーナを失った苦しみ。


「……貴方は、『意思が捻じ曲げられた』間の記憶は、ありますか……?」


ふと思いついて、聞いてみた。

彼の表情(かお)は、酷い苦痛に歪んだ。


「……はい。覚えて、おります」


絞り出すような声。

色んな感情がこもったそれに、返す言葉を失う。


黙っていると、彼はまた頭を下げて、言葉を続けた。


「今日は私個人の意思でこちらに参りました。


———どうか、助けていただきたい。

このままでは、エドウィン様は死んでしまう。


どうか、マーガレット嬢。

エドウィン様と、会っていただけないだろうか…?」


私は一瞬、声を失った。


去る前の頃は、私を遠ざけ、ミクを側に置いていたエドウィン様を思い出す。



「……私が出来ることは何もないと思われますが……」


やっとの事で、声を出す。


すると、アルバート様は激しく首を横に振った。


「いいえ!いいえ‼︎

貴女でないと、エドウィン様は助けられない。


もう貴女しか居ないんです‼︎」




いつも冷静沈着なアルバート様から考えられない、激しい訴えに、私は頷く以外無かった———









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