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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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人類の黄昏 ~終末戦争とアナトス~

 私はホームのベッドで眠りについたはずだったが、気が付くと見知らぬ荒野に立っていた。なるほど、さては夢だな。しかしまるで見覚えのない景色だ。まったく知らない景色を夢に見るなんてことがあるんだろうか?


 ボーっとしていても仕方ないし、夢の世界ならまた空を飛ぶ練習をすることにしよう。まずは昨日と同様に魔力放出の感覚を確かめる。現実ではせいぜい数㎝浮かぶのが限界だったけど、夢の中では調子がいいな。これなら空を飛ぶこともできそうだ。感覚を掴みなおしたので、思い切り魔力を放出して空へと飛びあがった。

「よし、ちゃんと飛べる。」

 昨日は真っ暗で無重力の空間で飛ぶ練習をしたが、今日の荒野の世界は重力も景色もあり、風も感じる事ができる。夢の中だけど現実と近い状況で練習したほうが、効果がありそうな気がするな。空を飛ぶ感覚をしっかり覚えておこう。


 昨日と同じく今日もミカと一緒に寝たけど、ミカは夢の中に入ってきていないのかな?荒野は見渡す限り続いているので、飛ぶ練習も兼ねてミカを探してみよう。魔力感知でミカを探せないか意識を集中しながら、とりあえず夕暮れで沈みかけた太陽の方向へと飛んで行く。


 体感で1時間ほど飛んだところで、大勢の人影と巨大な構造物が見えてきた。ミカは居なさそうだけど、何かヒントがあるかもしれないし近づいてみることにする。

 遠くからではわからなかったが、人影の正体は全身甲冑姿に長剣を携え、武装した人間の軍勢だった。巨大な構造物は近づいても私にはよく分からないものだったが、周りの人間達の雰囲気からして何かの兵器だろうか?

 一団は全員静かに整列していて物々しい雰囲気だが、私が近づいても反応する人はいない。夢の世界だし、彼らには私が見えていないのかな?一応本当に気づかれていないのか確認するために、武装した軍団の一番後ろに居た指揮官風の人で試してみよう。

「こんにちはー。」

 やはり反応はない。軍人なら変な動物に話しかけられても動じないのかもしれないし、もう少しアプローチしてみよう。背中をポンポンと叩いても・・・反応はないな。膝カックンでもしてみようかな?

 膝裏にそーっと近づいて手で膝カックンをしようとした直前に、指揮官らしき人物は動き出した。

「うわっ!ビックリした。」

 膝カックンしようとしたのに気づかれたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。指揮官は軍勢の前に出て何か指示をしている。口を動かしているのは見えるが声は聞こえない。夢だからかな?

 指揮官が指示を終えると、武装集団はにわかに行動を開始した。正体不明の巨大な構造物を起動するようだ。これが何なのか分からないけれど、あまりいいものではなさそうだ。作業している人たちには焦りの色が見える。とても危険な兵器なのかもしれないな。


 夢の中の人達には干渉できないみたいなので、しばらく様子を見ていると巨大な魔力が軍勢に向かって飛来してくるのを感じた。この魔力の感じはミカだ。ミカはすさまじい速度で接近してくると、一団の前へと降り立った。いつもと違う服装をしているので少し不審に感じたが、夢の中だし服装くらい変えられるのかな?ひとまず納得し、私はミカの方へと近づき話しかける。

「やっぱりミカも夢の中に居たんだね。ここは何なの?」

炎の剣(レーヴァテイン)。」

 ミカは私の言葉に反応することなく、炎の剣を抜いて兵器らしき巨大な構造物を切り裂いた。真っ二つにされた構造物は轟音と共に爆発四散し、作業していた人たちは荒野へと投げ出される。その様子を確認したのち、ミカは再びすさまじい速度で飛び立っていった。襲撃を受けた集団は茫然と立ち尽くしているが、何かする様子もないのでミカが飛び立った方へと私も追いかけることにする。


 さっきのミカは私に気付いていない様子だったし、ミカもこの夢の登場人物って事かな?となると、この夢はミカが見ている夢で、推測するに過去の記憶ってところか。

 ミカが飛び立った方向へとしばらく飛んで行くと、巨人化したユグドラシルが何かと戦っているのが見えてきた。戦っている相手もまたユグドラシルには及ばないながらも巨大な生物のようだ。戦闘の余波が及ばない程度の距離まで近づき、ユグドラシルの相手の姿を確認する。その姿はまさしく山のような巨人で、鎧というよりは機械のようなものを頭部と腕に装着している。装着・・・というよりは機械を体に組み込まれた、サイボーグのような姿だな。

 ユグドラシルは大地を踏み砕きながら拳を振り上げ、相手の巨人へと思い切り拳骨を振り下ろした。巨人も腕を振り上げて防御しようとしたが、体格差から拳を受け止める事は出来ず、地面にめり込むほど激しく転倒して動かなくなった。その一撃で戦いが終わったようで、ユグドラシルは体を小さく変化させて樹の姿になった。

 このユグドラシルもミカの夢の登場人物だろうし、話しかけても意味は無いな。再びミカが飛び去った方向へと向かって飛んで行く事にする。


 私が実際に会ったユグドラシルの話では、最後に巨人化を使ったのは現文明が始まる前という事だったし、この夢は大昔の出来事という事か。現文明がどこまでを指しているのか分からないけど、ミッドガルドの歴史は少なくとも冒険者ギルドが設立した12000年前より以前に始まったはずだ。何年前かわかったところで大した意味はないけど、ミカやユグドラシルはその時代から同じ姿でずっと存在していたんだな。不滅の存在、アナトスは本当に不滅なんだな。


 ユグドラシルの戦っていた地点からしばらく飛んで行くと、前方からミカが近づいてくるのが見えた。先ほどのミカとは違いいつも通りの服装をしている。本物というのも変だが、私が知っている現実のミカのようだ。ミカは私の前まで飛んできて停止した。

「なんだかおかしいと思って見に来たけど、マキが私の夢に入り込んでいたのか。」

「よかった、本物のミカだ。ここは何なの?ミカの過去の記憶みたいだけど。」

「今日はアトランティスとか超古代文明の話をしたからな。いろいろと思い出した事が夢になったみたいだな。」

「夢の中のミカは武装した人間の兵器を壊していたし、ユグドラシルが巨人と戦っていたけど、どういう状況なのこれ?」

「長くなるから詳しくは話さないけど、これは超古代文明が滅ぶことになった終末戦争の記憶だな。」

「文明が滅んだ戦いに、ミカ達も関わっていたの?」

「まあそうだな。それで滅んだ文明の遺産がアトランティスって事だな。あとは鉱山のゴーレムとかも遺産の一部だな。」

「へー。さっき武装した人間達を見てきたけど、超古代文明って人間の文明だったの?」

「この文明を築いたのは現代の人間とは別の種族だぞ。見た目は似ているが身体能力も魔力も桁違いに高いし寿命もずっと長いから、完全に別物と言っていいな。現代に残った生き残りたちは海底都市の名にちなんで、アトランティス人と名乗っているようだな。」

「そうなんだ。」


「なんで私はミカの夢に迷い込んじゃったんだろう?」

「一緒に寝たから私がうっかり夢を混線させちゃったのかもな。マキには人の夢に入り込むような能力はないはずだし。」

「そっか。事故みたいなものだけど、ミカの過去の事をちょっとだけ知ることができたしよかったな。」

「別に隠しているわけじゃないけど、私の過去の事を話していたら時間がいくらあっても足りないからな。それに私自体は大して今と変わってないしな。」

「たしかにミカは全然変わってなかったね。ところで私はどうやったら夢から醒めるの?」

「夢の中で眠れば現実では目を覚ますぞ。そろそろ朝だし目を覚まそうか。」

「もうそんな時間なのか。昨日はちょっと遅くに起きたし、今日は早めに起きたいな。」

「そうだな。夢の中で言うのもおかしいけどおやすみマキ。」

「うんおやすみミカ。」

 2人揃って目を閉じると、夢の世界は消えて深い闇の中に意識が飲み込まれていった。

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