パンダフライハイ
まだ日が登らない早朝、心地よい小鳥の鳴き声で目を覚ます。ミカも私と同時に目覚めたようだ。
「おはようマキ。」
「おはようミカ。」
ミカは起き上がると、私のお腹の上から降りて身支度を整えている。
昨夜は思いがけずミカの夢に入り込んでしまったが、超古代文明が滅んだ戦い、終末戦争の一端を体験する事が出来た。巨人を操る機械や、兵器らしき巨大な構造物を見る限り、超古代文明は現代文明よりも発達した科学技術を持っていたようだ。超古代文明の遺産である海底都市アトランティスには、エルの思惑通り巨大ロボット開発に利用できる、未知の技術が存在する可能性が高そうだ。
私がベッドから起きると既に他のみんなも起きていた。
「おはようみんな。」
「おはようでござる。」
「おはよう二人とも。」
「おはよう。今日は早かったな。」
「アカネとフィオはいつも通りだけど、エルも早起きなんだね。」
「ドワーフは大体みんな早起きだよ。夜間営業の飲食店経営をしている人たちは別だけどね。」
「なるほど。職人の朝は早いって言うもんね。」
「拙者とフィオ殿は朝の修行に行ってくるでござるが、今日の朝食はどうするでござる?」
「昨日は寝過ごしてしまったけど、今日は私とマキで用意するか?」
「アルゴノーツは毎朝ご飯を作っているの?」
「そうだね。毎朝って言ってもまだニザヴェリルに来て4日目だけど、昨日と一昨日はサンドイッチだったね。ニザヴェリル風とフィオ特製だから別物だったけど。」
「そっかー、それなら今日は私が朝食を用意するよ。ニザヴェリル流の簡単朝ごはん。」
「エルはお客さんだし気を遣わなくていいのに。」
「もう仲間だし気を遣っているわけじゃないよ。着替えとフィオに貸す本を私の部屋から取って来たいし、ついでだから朝食の買い出しもしてくるよ。」
「そう言う事ならお願いするね。よろしくー。」
「この国独自の物か、それは興味深いな。」
「おいしいご飯期待しているでござるよ。行ってくるでござる―。」
「行ってきます。」
「それじゃあ私も、行ってきます。」
「いってらっしゃーい。」
アカネとフィオは日課の修行へと、エルは鍛冶工房へそれぞれ出かけて行った。
ミカと2人部屋に残されたが、朝食の準備をする必要がないし手持ち無沙汰だな。
「なんだか手隙になっちゃたね。」
「そうだな。ごろごろしていてもいいけど、せっかくだから魔力操作の訓練の続きをやろうか。」
「あの訓練に続きがあるの?」
「夢の中での訓練ではなく現実で訓練をするぞ。本当はもう少しマキが慣れてからやろうと思ってたけど、昨日の夢の感じなら次のステップに行けるだろう。」
「そうなんだ?それじゃあお願いするね。」
「よしきた。開けた場所に移動しよう。」
ミカはユグドラシルに魔力操作の訓練方法を聞いたと言っていたが、自分でやったことは無いのでいまいち確証はないようだ。そもそも魔力放出だけで空を飛ぶような事は普通はしないから、私専用メニューなのかな?ミカは翼で飛んでいるし、翼のない人は風の魔法等で空を飛ぶらしい。
魔力操作の訓練のために、ホームから街の広場へとやって来た。
「早速だけど訓練を始めるぞ。」
「はい先生。」
「まずは昨日やったのと同じように飛んでみて。」
「おっけー。」
私は精神を集中して全力で魔力を放出した。ボッっと瞬間的な衝撃を受けて一瞬視界が歪む。気が付くと私は5m程の高さに打ち上げられていた。
「おお!飛んでる!」
喜んだのも束の間で、私はそのまま真っ逆さまに地上へと落下する。ドスンと音を立ててお尻から落ちたけれど、不死身なので痛くはなかった。
「昨日はほんの少し浮いただけだったけど、結構飛べたよミカ。」
「飛んだというか吹き飛んだ感じだけど、かなり進歩してるね。魔力放出の衝撃で集中力が切れないように意識して、もう一回やってみて。」
「よーし。」
気合を入れて先ほどと同じように全力で魔力を放出すると、さっきと同じく衝撃と共に空中へと放り出された。しかし今度は衝撃を受ける覚悟ができていたので、集中力を切らさずにそのまま魔力を放出し続け、天高く昇っていく。ミカも翼を広げて飛び立ち、上昇していく私についてきた。
「結構すぐにうまくいったね。次は上昇を止めてその場に留まるくらいに魔力を制御できる?」
「うん、やってみる。」
夢の中で空を飛んだイメージを思い出し、空中に静止できるように魔力放出を調節する。最初はお尻から魔力を放出してロケットのように飛んでいたけど、両手足から魔力を放出すれば空中に立つような姿勢で静止する事ができるな。戦闘機のホバリングのような感じかな?
「おー!飛べたよミカ。」
「いいね。普通はこんな飛び方しないから比較対象はいないけど、センスがいいんじゃないかな?試しに私も翼を使わずに飛んでみるか。」
ミカは翼をたたみ、私と同じように魔力放出だけで空を飛び始めた。まずはホバリングして完全に空中に静止し、その後縦横無尽に空を飛び回った。少し慣れてきたのかさらにスピードを上げ始め、ドーンと音を立てて音速の壁を突破した。音速の壁って本当に壁が見えるんだな。
「やっぱすげえよミカは。」
「もっと練習すればマキもこのくらいできるようになると思うよ。」
「本当?よしもっと頑張ろう。」
その後2人で空を飛ぶ練習を1時間ほど続け、夢の中で飛んでいたのと同じくらいには飛べるようになった。
「ホームに鍵をかけてきてしまったし、そろそろ戻ろうか。」
「そうだね、アカネとフィオはまだ戻らないだろうけど、エルはそんなに時間かからないだろうし、この辺で切り上げよう。」
2人揃って地上へと降下し、ゆっくりと着地した。案外簡単に飛べてしまったけど、ミカと比べたらすごく遅いな。一緒に並んで飛べるくらいになりたいし、もっと練習しよう。




