エルの冒険 ~冒険者への道~
ドワーフの少女エルは鍛冶工房を後にして、母親の働いている職人ギルド本部へと向かっていた。冒険者クエストに初めて同行することを報告するためだ。エルの母親は職人ギルドのギルド長を務めており、ギルド本部の宿舎に住んでいる。現在朝の5時過ぎなので、宿舎で朝食をとっている頃合いだ。
エルは職人ギルドに所属しているため、宿舎には簡単に入ることができる。門を抜けて建物に入り母親の住んでいる宿舎1階1号室へとやって来た。エルが少し緊張した様子で扉をノックすると、パタパタと足音が聞こえてすぐに扉は開かれた。現れたのはエルに似た容姿だが少し背が高いドワーフの女性だ。
「はーい。って、あらエルじゃないの。おはよう。」
「おはようお母さん。」
「こんなに早くにどうしたの?今日はお仕事はお休みなのかしら?」
「今日は冒険者のクエストに同行します。だから報告しに来ました。」
「あらあら、ついにエルの人見知りが治ったのね。頑張っていってらっしゃい。」
「うん、頑張るよ。だから・・・。」
「分かってるわよ。ちゃんとクエストをクリアできたら、冒険者になるのは認めてあげるわ。」
「ありがとう。いってきます。」
「怪我しないようにね。」
「大丈夫、仲間もいるから。」
エルは母親にサムズアップして冒険者ギルドへと駆け出した。エルの母親は旅立つ娘の姿が見えなくなるまで見送っていたが、気を取り直して朝の準備へと戻った。
エルは母親への報告を終えてテンションが上がって思わず走り出したが、時間に余裕が有ったので約束の時間よりかなり早く冒険者ギルドに到着してしまった。アルゴノーツが来るのをただ待っていてもしょうがないので、受付のフラウに挨拶することにしてギルド内へと入る。ギルドのホールにはこれからクエストに向かう冒険者が集まりだしていたが、エルは人見知りなので一目散に受付へと向かった。幸いフラウは暇そうにしていて、受付には誰も居なかった。
「おはようございますフラウさん。」
「あら、おはようエルちゃん。今日は何か御用かしら?」
「今日はクエストに行きます。」
「スタムメタルゴーレムの捕獲ね。同行できる冒険者が見つかったのね。」
「うん、アルゴノーツのみんなと友達になったから、今度は大丈夫。」
「一度別の冒険者パーティがエルちゃんのクエストを受けたことが有ったけど、事前の打ち合わせでご破算になっちゃったのよね。」
「人見知りはそのうちなんとかするから。」
「まだ治ってはいないのね。まあアルゴノーツならエルちゃんも仲良くなれそうね。頑張ってね。」
エルとフラウが話をしているところに、アルゴノーツがやって来た。
「おはようエル、ずいぶん早いね。それとフラウさんもおはようございます。」
「おはようマキ。それとみんなも。」
「おはようでござるー。」
「おはよう。」
「おはよう。今日はよろしく頼む。」
「なんだかもう仲良しみたいね。」
「昨日会ったばかりですけど、友達になりましたからね。」
「エル殿には拙者の忍具製作も依頼しているのでござるよ。」
「なるほどね。ゴーレムのいる鉱山はそんなに危険じゃないけれど、エルちゃんをよろしくね、アルゴノーツのみんな。」
「任せて合点でござるよ。」
「受付に来たついでというわけでもないが、畑の獣害予防のクエストを達成したので処理をお願いできるか?」
「はい、もちろんいいですよ。それじゃあギルドカードを提示してもらえるかしら。」
フィオはギルドカードをフラウに渡し、フラウは手元の端末でカードを読み取り何か操作をしている。数分で処理は終わり、フィオにギルドカードを返しながら話を続けた。
「ギルドカードを返しますね。クエスト達成が確認できたので報酬は口座に振り込んでおきました。お疲れさまでした。」
「ありがとう。」
「予定よりちょっと早いけど、準備もできているし出発しようか?」
「うん、私はいつでも大丈夫。」
「気を付けていってらっしゃいエルちゃん。それとアルゴノーツのみんなもね。」
「ありがとう。いってきますフラウさん。」
「いってきます。」
アルゴノーツとエルのパーティは予定より少し早いが、ゴーレムの生息する鉱山に向けて出発することにした。
冒険者ギルドを出て、入出国審査をしている門へとやって来た。アルゴノーツは全員冒険者なのでギルドカードを提示すればすぐに出国できるが、エルはどうなのだろうか?
「私たちは冒険者用の出国審査を受けるからすぐに審査は終わるけど、エルはどうなの?」
「私も職人ギルドに所属しているから、職人ギルドのカードで出国できるよ。職人や商人だけなら詳細な出国審査が必要だけど、冒険者に同行する形なら冒険者と同等の審査になるよ。職人が鉱山等に同行して採掘を手伝うのはよくある事だからね。」
「職人も冒険者と同行するなら出国が楽なんだね。」
なんだか悪用できそうな制度だけどそんなことする人は冒険者には居ないか。私はミカとフィオに身元保証してもらって、戦闘能力もないのに合格した裏口入学みたいな登録の仕方だったけど、冒険者になるための審査は本来は厳しいらしいし。
エルの言う通り出国審査は荷物検査だけでほとんど素通りできた。いよいよ街の外に出たので鉱山へ向けて出発しよう。
「よし、アルゴノーツ出発だ。」
「おー!」
恒例のようになった出発の掛け声だが今回はフィオが音頭を取った。毎回アカネがやっていたから、フィオもやってみたかったのかな?気合を入れなおし鉱山へと向かう。




