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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
ドワーフの国ニザヴェリル
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ランメル鉱山への道程

 アルゴノーツとエルのパーティはゴーレム捕獲クエストを遂行するために、ゴーレムの棲む鉱山を目指して街を出発した。時刻は朝の6時を過ぎた頃で、太陽がようやく昇り始めたのが見える。

「鉱山まではどのくらいかかるの?」

「ギルドのクエスト情報によると、街のすぐ近くのランメル鉱山という山でござるな。歩いて30分くらいでござるか。」

「ちょっと距離があるんだね。それなら空を飛ぶ練習をしながら行こうかな。」

「マキは飛べるの?とてもそうは見えないけど。」

「夢の中では飛べたよ。実際にはまだ試してないけどね。」

「マキ殿、夢と現実は違うと思うでござるよ。」

「言われてみればその通り。でもミカに特訓してもらったし、私も飛んでみたかったから練習するよ。」


 私は夢でやったように精神を魔力操作に集中する。体を纏う魔力を感じ取り、続いて体内からジェット噴射するようなイメージで魔力放出した。夢の中で自由に飛び回った要領で、大量の魔力を放出して私は浮かび上がった。

「おー、浮いたね。」

「確かに浮いたでござるな。5㎝くらいでござるが。」

「これは飛んでるって言うのかな?」

「飛んでるか飛んでないかで言えば、一応飛んでるな。」

「あれー?思ってたのと違うなー。」

「そのまま移動できるのかマキ?」

「うーん?ちょっと試してみるよ。」

 現段階では全力で魔力放出してようやく5㎝浮くのが限界のようだ。魔力は浮くためだけに全力を出しているので、手足をばたつかせて水中を泳ぐように移動できないか試してみる。

「あ!ちょっと進んだでござる。」

「しかしこれではかたつむりより遅いぞ。」

「必死に動き回るパンダはかわいいけど、歩いた方が早いね。」

「初めてならこんなものだろう。たぶん浮けただけでも上出来だぞ。」

 私は空を飛んで移動するのは諦めて地面に降りた。

「最初から上手くはいかないよね。このままだと鉱山につかないし飛ぶ練習はまた今度にして、普通に歩くことにするよ。」

「それがいいだろう。魔力を消費しないマキなら可能かもしれんが、ただの魔力放出を推進力に空を飛ぶというのは普通は無理だな。空を飛ぶ魔法はいろいろ存在するし吾輩も使えるがな。」

「マキ殿もいろいろ挑戦しているのでござるな。拙者も負けずに新忍法の開発を急がないといけないでござる。」

 私がいろいろやってみようと思うのは、目標に向かってまっすぐ進むアカネを見て触発されている部分もあるんだけど、ちょっと気恥しいし黙っておこう。


 しばらく歩いているとエルが私に近づいてきた。

「さっきマキは魔力を消費しないってフィオが言っていたけど、あれってどういう意味?」

「エルには言ってなかったっけ?私は不老不死だから魔力も体力も消費しないんだ。それと知性のある生き物なら何とでも会話できて、どんな文字でも読める能力もあるよ。どっちもミカからコピーした力だけどね。」

「不老不死?コピー?・・・マキって何者なの?」

「これも言ってなかったっけ?私は転生者なんだ。神に授けられたギフトで2個だけなんでもコピーできる能力をもらって、ちょっとした事故でミカの能力を二つコピーしたんだ。」

「なんとなく話は聞いていたが、マキはそんな経緯で能力を得ていたのか。」

「そう言われてみれば、拙者も能力を手に入れる過程は聞いていなかったでござるな。」

「2人にも話してなかったっけ?まあ話しても特に何かあるわけじゃないんだけど。ちなみに神からは魔王を倒せって手紙が来てたんだけど、私にそのつもりはないから気にしなくていいよ。」

「その後は私と一緒に世界旅行を始めたって感じだな。最初に寄ったのがミッドガルドだから、そこから先はアカネとフィオも知っているだろ。」

「うーん・・・いろいろ聞いてみたいことが増えちゃったけど、そろそろ鉱山に着くからクエストが終わってからまた話を聞かせてね。」

「今日は他に予定もないし、いくらでも付き合うよ。私もエルの事を聞きたかったし。」

「それなら夕飯を一緒に食べるでござるよ。」

「クエストが成功したら打ち上げも兼ねて冒険者と一緒に食事するのが、クエストに同行するドワーフの間では結構定番みたいだし、私もご相伴に与ろうかな。」

「そんなにかしこまらずとも、我々は友なのだから気軽に食事をしようではないか。クエストなど関係なくな。」

「うん、わかった。クエストが成功したらお願いしたいこともあるし、ちょうどいいかな。」

「お願いって?」

「クエストが成功した後じゃないと意味がないから、その時に改めて話すよ。」

「ふーん?よくわかんないけど分かったよ。」

 ちょっと気になるが今話せないなら聞き出そうとしても仕方ないな。


 さらにしばらく歩くと、ゴーレムの生息地であるランメル鉱山へと到着した。ランメル鉱山はそれほど大きくはないランメル山の麓にある。ランメル山は木々に覆われており、大きな洞窟のような坑道が口を開いている。鉱山とはいってもトロッコなどは通っていないようで、想像していたものとはかなり違う。

「なんだか自然の洞窟みたいだけど、これがランメル鉱山なの?」

「ここで採れるのはゴーレムだからね。鉱石を採掘する普通の鉱山とは勝手が違うよ。ゴーレムが棲みつく以前は普通の鉱山だったって言う話もあるけど、大昔の事みたいで誰も詳しいことは知らないし、ドワーフの間ではゴーレムが採れる鉱山ってことになってるね。」

「ふむふむ。鉱山の中はどんな感じになってるの?」

「鉱山は自然の洞窟みたいに入り組んでいるけど地図もあるし、洞窟の中には光の魔法鉱石を用いた灯火がたくさん設置してあるから明るいんだ。攻撃的な生き物はゴーレムに駆逐されて、大人しい生き物しかいないはずだけど、稀に迷い込む魔物がいるらしいから一応気を付けてね。」

「拙者達はエル殿の護衛のために来たのでござるよ。どんな怪物が来てもばっちり撃退して見せるでござるよ。」

「うん、よろしく。この辺に現れる魔物はせいぜいゴーレム以下の弱い奴だけだと思うけどね。」

 アカネとエルがやたらと魔物が出るフラグを建てているけど、たとえ何が現れても護衛することには変わりないし、気にせず鉱山へと突入しよう。

 篝火ってたきびみたいなものの事を言うんだね。

 壁掛けの松明をイメージしていたから、篝火を灯火に変更しました。

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