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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
エルフの国ミッドガルド
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忍者修行中

 物音がしていつもより少し早く目が覚めた。いつもと言ってもまだ異世界に来て数日なのだが。不老不死で疲れも感じないし眠りを妨げられることは別にいいのだが、何の音だろう?


「おはようミカ。」

「おはようマキ。今日は早いな、早速だが朝食の準備をするぞ。」

「おっけー。フィオとアカネは昨日言ってた朝の修行をしてるのかな?何か物音がしたけど。」

「二人は走り込みしながら瞑想と合気の訓練をやってるみたいだな。」

「全部まとめてやる必要あるのかな?」

「忍者だから問題ないでござるって言ってたぞ。」

「忍者すごいな。問題ない理由はわからんけど。」


 ミカが料理を作り、私はテーブルの準備をする。なんとなく避けていたが手の扱いに慣れて来たら料理も挑戦してみようかな。料理ができそうには見えないヴァイキングも繊細な料理を作っていたし、最初からできないと先入観で決めつけるのはよくないな。


「そういえばミカはどうして眠るの?眠る必要はないんだよね?」

「昔の習慣だな。癖になってるからそのまま続けてるだけだ。」

「習慣ってどういうこと?」

「旅行をしていた時の習慣だな。ほとんどの種族は朝起きて夜は眠るから夜は暇だったんだ。ドワーフとか酒好きの種族の酔っ払いは夜遅くまで活動してる奴もいたけど、私は酒に酔わないからな。それで夜は眠るようになったんだ。」

「他種族の習慣に合わせて眠ってるのか。」

「エルフもお酒は飲むけどほとんど酔わないねー。単純に味を楽しむだけだねー。」

「おはようミミル。気配がなくて気づかなかったよ。」

「ずっと一緒に居たけどねー。」

 私が気づいてないだけだったのか。毎度話しかけられるまで存在に気づけないけどわざと視界から外れて動いているんだろうか?ヨツンは客観的な記録が取りたいと言っていたから、そのためかな。


「そういえば今日会いに行くミカの知り合いってどういう人なの?」

「人というか樹だな。あいつはユグドラシルと呼ばれているな。」

「よく知らないけど北欧神話に出てくる世界樹だね。木がしゃべるの?」

「樹と言っても樹の精霊ドライアドと似たような存在だからな。あいつの場合は樹が人型に変身するからちょっと違うけど。」

「ユグドラシルにはいろいろと伝承があるけど、ミッドガルドができるより前から存在するって言われてるねー。あまり人が近づかない樹海の奥深くに生えているって話だったけどミカと知り合いなんだねー。古い伝承については口伝だから不明点も多いし細かい話を聞けるかなー?」

「あいつは結構忘れっぽいというか、あまり周りを気にしないからどうだろうな。」

「ミミルって図書館の情報はなんでも引き出せるの?」

「そうだねー。昨日も言ったけど情報が正しいかどうかはわからないけどねー。」

 つまり図書館を持ち歩いているみたいなものなのか、結構すごいんだなミミル。でもよく考えたらネット検索機能だけのスマホみたいなものか、そう考えるとあんまりすごい感じがしないな。ミミルは自分で動いてしゃべるけど、スマホもそのうち勝手にしゃべりだしそうだしな。


 朝食の準備が終わるころにちょうどアカネとフィオが戻ってきた。

「ただいまでござるー。」

「初日なのになかなかいい鍛錬ができたな。さすがは同志だ飲み込みが早い。」

「走り込みと瞑想と合気の訓練を同時にやってるって聞いたけど、別々の方がいいんじゃないの?」

「マルチタスクも魔力量増加に有効な訓練なのでな、同時にやったほうが効率が良いのだ。合気に関しても体が勝手に動くレベルまで身につかなくては実戦では使えないしな。」

「納得したような、しないような・・・。それじゃあ瞑想って何?」

「瞑想は自分の魔力を感じ取り操作する感覚をつかむ訓練だな。魔力をしっかりと知覚できれば訓練の効率がぐんと上がるぞ。イメージがトレーニングに与える影響は軍隊でも様々な検証が行われ立証されていたのだ。これは言われたことをやるだけでは効果が落ちるとも言い換えられるぞ、自分で考え結果をイメージし自らの意思でやりぬいてこそ共産主義者なのだ。」

「共産主義はよくわからないけど、了解でござるよー。」

「魔力の知覚って私もできるのかな?」

「体を鍛えるわけでもないしできるんじゃないかな?」

「アカネの場合はすでに魔力の知覚はできているのでイメージの具体化の段階なのだが、マキは自分に魔力があることもよくわからんのだろう?」

「そうだね。」

「それならば目を閉じて自分の中にある魔力を感じるところからだな。体を包み込む薄い膜のようなイメージが最初はいいだろう。暇があればいつでもやるといいぞ。まったく魔力を感じないというのは聞いたことがないのだが、ミカができるというのならできるんだろう。」


「ところでフィオはアカネの走り込みに付いていけるんだね。」

「身体強化の魔法と短距離転移の断続使用を併用して疑似的な高速移動ができるぞ。吾輩は遠距離からの魔法攻撃が主体だし、接近戦も基本受け身の合気を使うから戦闘では使う機会のない技だがな。移動だけに使うにはあまり魔力効率もよくないしな。」

 100年以上生きているだけあっていろいろできるんだなフィオ。ミカは生まれつき強いらしいけど、エルフは訓練して成長して強くなるんだな。


 二人はシャワーで汗を流してきて、その後朝食を取ることにした。

(一同)「いただきます。」

「さっきの話の続きだけど、ミカはユグドラシルとはどうして知り合ったの?」

「私がユグドラシルに会ったのはずっと昔のことだけど、家の近くを散歩してたらでかい樹があったから近づいただけだ。あいつは遠くからでも目立つからな。」

「それでどうしたの?」

「ちょっと話をして別れて、その後はたまに会うってだけだな。私の家にあいつが訪ねてきたことはないし、必要ないかもしれないけど一応家を空けることくらいは伝えないとな。」

 他人以上友人未満って感じなのかな?あまり親しくなかった近所の同級生みたいな感じだろうか。


「ユグドラシルと言えば人間が切り倒そうとしている、なんて噂を少し前に商人達がしていたな。」

「あいつは人間の力じゃ倒せないと思うけど少し心配だな。余計な事せずにさっさと逃げてるといいけど。」

「樹なのに逃げられるのでござるか?」

「人型に変身できるらしいよ。」

「変化の術でござるか。忍者の正体見たり枯れ柳でござるな。」

「たぶん全然違うよ。」

「実際会ってみればどんな奴かわかるから、今は細かいことは説明しないぞ。」

「それもそうだね。」


「今後の事なのだが、ユグドラシルに会ったらそのままドワーフの国ニザヴェリルに向かうか?それともミッドガルドにもう少し滞在するのか?吾輩は両親には既に報告したからいつでも出発できるぞ。」

「拙者も特に用はないからどちらでも構わないでござるよ。」

「それじゃあユグドラシルに会ったら、そのままニザヴェリルに向かおうか。家の片づけと戸締りもしないとだね。」


(一同)「ごちそうさまでした。」


 朝食の片づけと家の掃除をしてから出発の準備をする。しばらく留守にすることになるので張り紙をしていくようだ。

 これまでは何も持たず手ぶらだったが、今日からはドワーフの雑貨屋で購入したポーチを身に着ける。まだギルドカード以外は何も入っていないが、少しだけ冒険者っぽくなっただろうか。

「それじゃ出発しようか。」

「ユグドラシル殿は強いのでござるかね?戦ってみたいでござる。」

「強いけどあいつは手加減が下手だからやめた方がいいぞ。」

「怪我をしたら吾輩が治すから強気でぶつかっていけ。」

「頑張るでござる。」

「行ってきまーす。」

 なんだか回復役がいるとそれだけで頼もしいな。私とミカは不死身だけど。数日だがお世話になったフィオの家に別れを告げてとりあえず冒険者ギルドへと向かう。

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