大図書館クワシールとミミル
文化エリアには博物館や美術館、公園や運動場等の施設があり、その中心部に大図書館は有った。このエリアでは最も大きい施設だ。
「ここが我らエルフが誇る大図書館クワシールだ。細かいことは司書が話してくれるだろうが、簡単に説明しよう。知識が財産であることは今更議論の余地はないだろう。しかしエルフには私財という概念が存在しないので、すべての知識や技術はここに集積され公開されている。知的財産権だの著作権だのと言ったものは資本主義が生み出した悪制なのだ。大図書館にはエルフの知りうるすべてがあると言っても過言ではない。」
パクったり盗んだりするのは普通に悪いことだと思うけど、反対意見を出すと共産主義論が展開されそうなので黙っておこう。たしかにすべての知識を共有できる形にしているというのは文明の発展においてプラスに思える。悪用されなければという前提条件はあるが。
「それでは中に入ろう。」
「拙者読書は苦手でござる。」
「懐かしいな。私はここの建造を手伝ったんだぞ。」
ミカは友達居ないって言ってたけどエルフとは割と仲いいな。
図書館の中に入るとカウンターに一人の人影があった。金髪巨乳でメガネのエルフだ。
「あらいらっしゃーい。おやおやフィオちゃんじゃないか。」
「おはようヨツン。今日は吾輩の同志を連れてきたのだが、彼女らにクワシールの案内をしてやってほしいのだ。」
「もちろんオッケーだよー。なんだか変わったメンバーだねー。」
「和の国の忍者アカネと転生者でパンダという動物になったマキ、もう一人はミカだ。」
「ミカ?まあいっかー?私は図書館の司書をやってるヨツンだよーよろしくねー。」
「よろしくお願いします。」
「よろしくでござるー。」
「それでは吾輩はアカネとの模擬戦の準備をするので後のことは頼むぞヨツン。」
「はいはーい。」
フィオを見送ってから改めてヨツンに挨拶する。
「改めてよろしくお願いしますヨツンさん。」
「案内は任せてよー。それにしても転生者がこの国に来るなんて珍しいねー。」
「フィオは転生者ではないんですか?」
「フィオちゃんも転生しているのには違いはないんだけど普通に両親から赤ん坊として生まれる場合は記憶持ちとか記憶保持者って呼んでるねー。転生者は人の神にギフトを与えられて既に成長した状態で送り込まれる人達の事だねー。前者は便宜上転生者とは呼ばないほうが分かりやすいでしょー私が考えたんだけど。」
たしかに紛らわしいとは思っていたので別のものとして定義したほうがよいだろう。今後は私もそう呼ぶことにしよう。
「それで転生者のマキちゃんはこの国には何しに来たのー?」
「特に目的はないんですが主に観光ですね。」
「そっかー、楽しそうだねー。それでミカはなんで転生者と一緒に居るのー?」
「久しぶりだなヨツン。マキは友達だから一緒に旅をしているんだ。」
「みんなで旅行か、いいなー。それとアカネちゃんは和の国から来たのかー遠いのにすごいねー。」
「なんか調子が狂うお姉さんでござるな。」
「それじゃあクワシールについて説明しようか。」
「はいお願いします。」
「80年くらい前までは大図書館クワシールはその名の通りたくさんの本を所蔵していたんだー。でも商人づてに科学の世界のコンピューターってものがこの国に伝わってきてねー。便利そうだから魔法で再現したんだよねー。機械的な仕組みはわからなかったけど。それで今は本をデータベース化してるんだー。」
「パソコンがあるんですか?」
「パーソナルコンピューターはないねー。エルフはみんな魔法で計算とかもしちゃうから必要ないし。大図書館にある大規模情報集積装置ノルンがたぶん世界唯一のコンピュータ―だねー。ただのデータベースじゃもったいないし私がたまに機能をアップグレードしてるけどねー。」
「私でも使えますか?」
「魔法さえ使えればマニュアルを読めば誰でも使えると思うよー。」
「私魔法使えないんですよね。」
「えー?すごい魔力持ってるのに変わってるねー?ふむふむ。」
「ちょっと見ない間にかなり変わったんだな。本じゃないってことはどうやって読むんだ?」
「魔法で動かせる情報端末があるからこれを使うと・・・。」
ヨツンがゴルフボールくらいの大きさの玉に魔力を込めると空中にモニターが現れた。これも魔法で動かせるようだ。スマホみたいなものだろうか。
「こんな感じで魔法が使えれば誰でも読めるよー。」
「魔法が使えない場合はどうするでござるか―?拙者もあまり得意ではないでござるが。」
「こっちの製本装置を使うとデータベースから製本して貸し出しもできるよー。エルフも紙の本の方が好きな人が多いから製本する人は多いねー。だから魔法が苦手な他種族でもこの図書館は利用できるよー。」
「本はどうやって探すんですか?」
「本を探すためのカタログを用意してるからジャンルが絞れてるなら自分で探すことができるよー。私は全部の本を読んでるから私に調べたいことを聞いてくれれば本を紹介するし。」
「エルフの全知識が集まってるってフィオは言ってたけど、全部読んでるんですか?」
「本好きだからねー。」
ちょっと変だけどすごいなこの人。
「ところでマキちゃん達は旅をしてるって言ってたけど、もしかして世界中回るつもりだったりするのー?」
「特に次に行く先は決めてないですけど和の国にはそのうち行こうと思ってますね。世界中回るのもいいかもしれないですね。」
「おおーいいねー世界旅行ー。そこで相談というか頼み事なんだけどさーいいかなー?」
「頼み事?なんですか?」
「旅行先の記録を取ってほしいんだー、ミッドガルド以外の他国についてはクワシールにあるデータが古くてねー。更新したいんだー。」
「ヨツンさんが直接行ったり他のエルフの人たちには頼めないんですか?」
「エルフが集団で他国に行くとちょっと問題があるんだよねー。かといって一人で行くのも危ないし、私は今はクワシールを離れられないし。」
「事情があるなら仕方ないですね。記録ってどうやるんですか?さっきの端末なら私は魔法使えないから使えないですけど。」
「さっきの端末はミッドガルド内くらいでしか使えないよー距離があるとノルンとの電波がねー。でも安心してくださいソンナコトモアロウカトー。情報収集用賢人装置ミミルちゃんを作っておきましたー。はいどうぞ。」
ヨツンの生首の姿をした何かが差し出された。
「よろしくねー。」
「うわっ!生首がしゃべった気持ち悪っ!」
「えー?だめー?じゃあこっちで。」
今度は妖精のような姿の小さなヨツンを取り出した。
「おー今度はかわいいでござるなー。」
「私ミミルよろしくねー。」
「この子もしゃべるんだ。なんですかこの子?」
「この子は私が作った魔法生物みたいなものなんだけどノルンと繋がっていて見たり聞いたり食べたりしたものの情報を収集できるよー。ただし私から離れる場合は誰かに魔力を代わりに供給してもらわないといけないんだー。収集した情報をノルンに送ったり逆にノルンの情報を引き出したりできるようにしたり、あとしゃべったり食べたりでかなり高機能に作っちゃったから燃費が悪いんだよねー。」
「魔力の供給って私でもできるんですか?」
「ミミルと一緒にいてくれるだけで大丈夫だよー。マキちゃんはかなり魔力多いのに色んな耐性がまったくないみたいだからミミルが勝手にドレインできるよー。」
「魔力量とか耐性って見たらわかるんですか?ミカとかアカネもわかってたみたいだけど。」
「拙者はこっそりいろいろ試したからマキ殿の耐性がないのを知ってたでござるよ。」
こっそりってどの時点の話なんだろうか。忍術修行の時かお風呂の時か。
「私はこのメガネにちょっと細工してるからねー。」
「私は見たらわかるだけだ。」
やっぱミカはすげえよ。
「そういうことなら私の魔力特に役に立たないし構わないですよ。」
「ありがとー。よろしくお願いするよー。」
「ミミルは食事が必要なんですか?さっき食べるって言ってましたけど。」
「魔力さえあれば大丈夫だけど食べることもできる感じだよー。」
「それじゃよろしくねミミル。」
「よろしくマキ―。」
小さな仲間ミミルが旅に加わった。




