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第一章 外伝

 「俳句を作るの」

 瀬川梓は、自慢げにそう言った。白野は、冗談だろうと思って、取り合わなかった。

 「絶対に信じてないよね」

 梓は、白野を眺めた。

 「簡単に作れるんだよ、季語って言ってね、季節を表す言葉を入れればいいんだよ」

 (それほど簡単だというのなら、芭蕉の句はどう解釈するのだろう……)

 白野は、溜息交じりに海を眺めた。青空との境界がなかった。

 「青空に かかる七色 二人分」

 白野は、そう呟いた。

 (二人分という言葉が自然に出てくるなんて、少しは成長したのかしら)

 「何、今なんて言ったの」

 梓は、興味を持ったようだった。

 「別に、ほら、虹がかかっているわよ」

 白野は、空を指さした。梓は、本当だ、と言って、目を輝かせた。

 「二人分、ね」

 白野は、もう一度、そう呟いた。

 「何が二人分なの」

 梓は、白野に近寄って呟いた。

 「あなたの俳句を聞かせてほしいわね」

 白野は、梓と適度な距離を空けて、尋ねた。梓は、一端うろたえて、暫くの間空を眺めた。

 「夏の情景を読むとしたら、海に、空、定番だよね」

 梓は言った。

 (意外に分かっているのね)

 

 「白浜の 青空に咲く 鯉のぼり」

 白野は、思わず笑いだした。梓は、失礼よ、と言って、白野の肩を叩いた。

 「鯉のぼりとは、上手いわね」

 白野は、改めて、海と青空を眺めた。

 

 「西日さす 白浜の空に こいが舞い」

 白野は、そう呟いた。

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