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43 お嬢様、予想外だった

 

  魔王降誕から1週間。

  わたしは嬉しい悲鳴をあげていた。


「ニーナ、これ、ほんとに今日届いたぶん!?」

「はいっ! これは北と東の孤児院からですね。午後に南の孤児院からも届いたら、全部ですわ!」

「ひええ」


  わたしの部屋に届けられたひつじボールの山。とても嬉しい。しかし想像以上のそれに戸惑っているのは、孤児院は王都に1つしかないというわたしの勘違いが原因だった。


  お兄さまに手伝ってもらって、ひつじのリンダさんの絵付きカードを仕上げていた時に、王都には中央と東西南北に合わせて5軒の孤児院があるという事を初めて知った。


  そんなに送られてこないだろうから、庭の木を飾る分はわたしが頑張っていっぱい作らないと……! と考えていたら、まさかの5倍。

  しかも、子どもたちも張り切ったのかたくさん作ってくれたものだから、はじめに想像していた量の10倍近くのひつじボールが送られてきたのだ。


「すごいわ……この調子なら、あっという間に世界がひつじボールでうめつくせ……じゃなくて。庭の木をかざれるわ!」


  お返しのおもちゃは、孤児院の先生が子どもたちに希望を聞いてくれている。

  あとは、リンダさんに扮した使用人が、それぞれの孤児院に贈り物を届けに行くだけだ。




「リディアお嬢様、リンダさん用のふわふわ毛皮も届きましたわ。大きめに作ったそうですが、誰にリンダさん役をやってもらうのですか?」

「うーん……みんなに着てもらって、リンダさんっぽい人にお願いするっ」


  ふわふわ毛皮、待ってました!

  ここに、第1回プラトナム家のリンダさんオーディションの開催を宣言します!

  ノリノリで発表するわたしの周りで、使用人たちが拍手をする。

  本気を出してもらえるように、リンダさん役を勝ち取った人にはご褒美があると言ったら、みんなの目がギラッと輝いた。手足や首を回しながら準備運動を始める使用人たちを見て、ちょっと早まったかもしれないと後悔した。ねぇ、みんな、顔が怖いの。

  ご褒美なんて用意していないってバレたらどうなるのかしら?



  何をご褒美にしよう……と頭を悩ませるわたしの目の前のドアが開く。いけない、もうオーディションが始まるようだ。


「じ、じゃーん! リンダさんデス。ひつじボールを、アリガトウ! オカエシノオモチャだよっ」

「メイドさん、きんちょうしている?」

「はい……」


  残念! メイドさん、棒読みすぎるため不合格っと……感想を紙に書いて、退室してもらう。わたしのチェックは厳しいのだ。

  さて、次は誰かしら。



「どうもー! お返しのおもちゃを持って……あれー? この袋、なんで麦が入ってるのかなぁ」

「……料理人さん、きっとおもちゃはちゅうぼうにあるわ」

「あぁ! 僕、さっき……取ってきますー!」


  さようなら、料理人さん。

  ドジっ子すぎるため、不合格っと……よし。

  次の人、どうぞ。



「皆さん、ひつじボールをありがとうございました。おかげでこの世界は滅……ふふふ。さあ、子羊たちよ、報酬を差し上げましょう。一列にお並びください」

「いやああああ! しつじさん、いちばんだめーっ!」

「おや? 失礼しました。私のリンダさんが、1番実物に近いかと思ったのですが」

「り、リンダさんはこわい妖精じゃないから! 世界せいふくなんて……え、実物? 」

「ふふふ」

「じ、実物なんて、いないよう。……いないよね?」

「さあ……ふふふ」


  執事さん、ぜーったい不合格!

  怖すぎる、絶対だめ。と念入りに書いておく。

  ぐいぐい背中を押して、一刻も早く退室してもらった。ああ、次のリンダさんは怖くありませんように!



「みなさーん、ひつじボールをありがとうございました。お返しに、おもちゃを持って来ましたよっ」

「……ふむ。おて」

「はいっ! うふふ」

「どう見ても、ひつじじゃないわね。しっかく」

「ええっ!」


  犬すぎるため、不合格! うぅん、プラトナム家のお犬さまオーディションなら1位なんだけれど……ニーナ、ごめんなさいね。

  わたしが今回求めているのはひつじなの! 次の人どうぞ。



「…………。オイ」

「…………。グレおじさん、ごめんなさい」


  グレおじさん、一目で不合格! 似合わなすぎるわ。

  はい、次の人ー!




「ふう。やっと終わった……」


  オーディションを終えて、ソファにだらっともたれかかる。みんな、演技下手なのね……意外と不合格が多かった。

  最終的には庭師さん、マヌエラ、デイヴィスの3人が合格。ふわふわ毛皮は5つ作ったから、本当は5人いれば良かったけれど、まあ仕方がない。


  全ての孤児院からひつじボールが送られて、おもちゃの用意も済んで、リンダさん役も選んだ。リンダさん役のご褒美も、お父さまからの特別手当に決まった。

  この1週間、やる事がたくさんで忙しかったけれど、ようやく落ち着いたわ。あとは子どもたちの感想を聞くだけ! 楽しみだなぁ。



  そんなふうにのんびりと構えていたわたしに予想外の知らせがもたらされたのは、翌朝の事だった。



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