表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/53

38 お嬢様、暇だった

 

  わたしは悩んでいた。

  冬、すること、ない。


  わたしの1日は、ほぼ屋敷と庭をぶらぶらする事で終わる。なのに冬になって、庭に出る事がかなり減った。わたしが風邪を引かないように、と使用人たちに部屋に留められてしまうのだ。

  おかげで今まで庭に出ていた時間が浮いてしまった。

  それより最悪な事は、運動量が減ったからとおやつも少なくなった事だ。

  こんな寒さはわたしの敵ではないので、庭に出して欲しい。そしたらいっぱい運動もするので、おやつを元の量に戻して欲しい。こんな悪循環はもういや……


「うーっ! ぐち、おわり!」


  こうやって暇にしているから、ついつい愚痴をこぼしてしまうのだ。何か、何かしなくちゃ。


「本、読んでみる……?」


  そういえば秋にマヌエラからおすすめされた本、『ひつじのリンダの大冒険』をまだ読んでいない。

  かなりの長編で、ひつじ対人間の戦争という重いテーマに手が伸びなかった。よし、1日丸ごと使って、じっくり読んでみようかな。




「戦争が、はじまる……ひつじのリンダ、こわい!」


  でも確かに、結婚前に自慢の毛を刈られて悔しい気持ちもわかる。だからって、人間に戦いを挑むなんて、危険だわ。



「……あぶないっ」


  ひつじって、山にも登れるのね。上から石を落とす作戦なんて! このままじゃ人間の国が滅んでしまう。



「……リンダ、あなた、だまされているわ!」


  ようやく黒幕が分かったわ。リンダの婚約者が、実はヤギだったなんて……このままじゃ、ひつじも人間も共倒れ。ヤギの世界になってしまう。ああ、早く気がついて。



「……早く! 死んじゃうわ!」


  定期的に毛を刈らないと命の危機だなんて!

  リンダ、信じて、その毛織職人さんは味方よ。



「ああ、そんな……」


  なんて悲しい結末なの。

  毛織職人さん、あなたの命は無駄にはならなかったわ。ひつじと人間は分かり合えたのよ。でも、犠牲が大きすぎた……



「ぐすっ……ぐすん。ふう」


  こんなに切ない物語を読んだのは初めてだわ。

  今後一切、わたしがヤギのチーズを食べる事はないだろう……たぶん。




  涙も止まって落ち着いてきた頃に、お出かけから帰ってきたお母さまがお茶に誘ってくれた。


「リディ、目が赤いわ。悲しい事でもあったのかしら」

「いいえ、お母さま。だいじょうぶよ」

「そう……では、何か困っている事は?」

「困っていること……特にないけれど。あ、ひまだわ」


  うん、強いて言うなら、暇すぎて困っている。そう伝えると、お母さまは何か考えた後、わたしに優しく微笑んだ。


「では、習い事でも始めてみたらどうかしら」

「習い事? どんな?」

「刺繍、ピアノ、ヴァイオリン、歌、ダンス……何でも。したい事をすればいいわ」


  うーん、したい事……

  刺繍を習ったら、みんなに贈り物ができるわ。でも、ニーナが針を怖がるから、気をつけないといけないわね。そもそも、わたしにちまちました作業ができるかしら?


  ピアノも、指がわちゃわちゃして難しそうだし……でも、できたらかっこいいわね? ヴァイオリンも。


  歌も気になる。どんな歌があるのか聞いてみたい。音痴では、ないと思うの。


  ダンスは、この中で1番うまく出来る気がするわ。体を動かすのは得意だもの。ふむ?


「悩むなら、全部1回試してみたら? 刺繍はマヌエラが教えられるし、他は先生を招くわ」


  おお、全部やってもいいの? 確かに、悩むのよね。どれを身につけても素敵だわ。


「うーん。考えておく」


  わたし、どんな令嬢を目指すべきなのかしら? 10年後、どんな大人になっているの?

  なんて、ちょっとだけ、将来の姿を考えてみる1日だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ