根暗に過ごしやすい闇
1日目にして小さなハプニングはあったものの、今はこうして、みんなで無事にキャンプファイヤーを囲んでいる。パチパチと燃える音が絶え間なく耳に入ってくる。全員で肩を組んで校歌斉唱なんて青春みたいなことをして、勇美は少し気分が高揚した。両隣が男でも、気にならないくらいに。
一通り教師の話も終わり、自由時間が訪れる。と言っても、キャンプファイヤーの周り限定ではあるが。勇美は、丸太に座って夜空へ舞い上がる火の粉を眺め、1日をなんとか終えたことに安堵していた。
「か……かん、神田くん」
突然の呼び掛けに少し肩を跳ね上がらせた。振り向くと、俯いて目を泳がせている晴夏がいた。勇美は、どうしたの、と首を傾げて立ち上がる。晴夏が口をパクパクさせる様子を、じっと見つめながら。
「お昼……カレー、水っぽかったの……」
単語を聴いて、ああ、と手を打つ。思い出すのは、青ざめた顔の彼女。
「私が、水の量間違えたの……、神田くん、知ってたんでしょ?話、そらしてくれて、あの、私、何も言えなくて、ごめんなさい……!」
頑張って頑張って言葉を紡ぎ、頭を下げた晴夏の誠意を、勇美はしかと感じた。
「そんな大したことじゃないし、大袈裟だなぁ」
怒っていないよーとヘラヘラと笑ってみせるが、晴夏の頬には涙が一筋伝っていた。勇美はギョッとして、慌てて彼女の頭を撫でた。そして、しまった、と感じた。
彼女にとって、今の謝罪行為は大変勇気のいるものだったのではないか。それを、オレは、軽い気持ちで……!
「よ、よかった……。ありがとう」
「え、お、おう」
……なんだ、緊張の糸が切れただけか。
自分の行為によって、誰かの背中を押せた。あの時、彼女が困っていたから話をそらしたワケではなかった。自分に重ねてしまったのだ。昔の自分に。林間学校でテントの準備をした際、紐を結び忘れて風で屋根の部分が飛び、運悪く降っていた雨でみんなの荷物が濡れてしまった。みんなは「誰だよ」「名乗り出ろよ」と怒り心頭だった。『犯人』は勇美だ。しかし、「ごめーん私だったエヘヘ」と言えるキャラではなかった勇美は、真顔のままやり過ごした。誰も、フォローは入れてくれなかった。当然だ。友達はそんなにいなかった。挙句、その夜も周りの女子はテント事件の『犯人』について話していた。そして聞こえた「神田じゃね?」の声。震えながら過ごしたあの夜を、忘れはしない。
もし、晴夏がそうなったら?これこそ大袈裟な考えかもしれないが、トラウマとは消えないものだ。今の班員に悪い人はいないと思うが、あそこで声を出さずにはいられなかった。
何はともあれ、彼女を救えたし、自分も少し、救われた気がした。
「ありがとう晴夏ちゃん。よく言ってくれたね。偉いと思う」
何様だよというようなセリフを言ってしまったが、改めて伝えたかった。しかし、彼女はさらに泣いてしまうワケであった。




