地味に過ごしたい
料理といえば、女子力を存分に発揮できる場であるとともに、女子に大体の仕事を任される場だと思われる。あ、そんなに料理得意じゃないどうしようと、勇美も一瞬考えたが、今自分は男であることを思い出した。これでも10年以上女だったのだ。時々、忘れてしまう。ということで、わざわざ調理側に回ることもあるまい。とは言うものの野菜を切ったり洗ったりなど簡単な作業がほとんどであるため、それくらいはやらなければ申し訳ない気がした。龍二はというと、
ダンッダンッダンッ!!
野菜を切っているはずなのにこんな音がするものだから、火起こし班へ回されていた。沖野も龍二の見守り的立場でそちらにいる。晴夏は米を研ぎ、雪乃は勇美とともに野菜を切る。
「神田くん、男子なのに器用だね!」
元は女子だし母さんの手伝いしてたしなぁ……と言いたいが、苦笑いでやり過ごす。それでも、普段、女子っぽいことをして褒められることはなかったので、嬉しかった。柄にもなく張り切り、調理は順調に進む。なかなかよいチームワークではないだろうか。他のグループよりも早く出来上がる。昼飯にありつける。
ご飯が炊け、カレーが煮えてきた頃。とても家庭的な、食欲をそそる匂いが漂ってきた。他のグループも完成が近いのだろう。
「ね、ね、開けてもいい?」
龍二が目を輝かせてみんなに問う。一同は頷いた。正直、お腹が空いて仕方がなかった。龍二が鍋の蓋を開ける。湯気の向こうに、カレー。
「ん……?」
怪訝な顔をして、雪乃がお玉で鍋をかき混ぜた。
「……思ったより水っぽいね。いい匂いだけど」
さすがの龍二も楽しみにしていた分、戸惑いを隠せなかった。その後ろで、晴夏が顔を青くして立ち尽くしている。勇美はそれに気付いた。
「まぁ、いいんじゃない、手作り感があってっていうか……。きっと、味はどこよりもいいよ」
その言葉に、龍二は再び目を輝かせた。
「そうだよね!!僕が一生懸命火の番したもん!早く盛り付けよ?」
それはフォローになっているかわからないが、勇美はいそいそと皿を持ってきた。ご飯をよそい、ルーをかける。それはしっとりとご飯に染み込んでゆく。
いただきます、ズズズズズズ。
カレーライスを食べるときに鳴る音ではない。が、勇美の言った通り、味は美味しかった。晴夏はホッとした様子でカレーを食べていた。
「お?このグループのカレーはやけにシャビシャビだな」
語尾に「(笑)」をつけながら、新塚がやってきた。少し和んだ空気を壊しつつ、沖野のカレーを一口、颯爽と奪う。
「へぇ、味はダントツだ。よくできました」
彼はウインクを落として立ち去った。
鬱陶しいと感じたが、その一言で飯盒炊爨は成功したと思えてしまった。




