第138話:寝る子は育つ
ユウトの部屋。
「もしもし、アメリ……」
セレスが通話をつなぐ。
『どうしたの?』
「ユウトがおかしくなっちゃって……」
(言い方!!)
「少し遅れそうなの……」
『……』
『おかしいのは前からじゃない?』
「そうなんだけど……」
(おい!)
「今回は様子が変なの……」
『それも前からよ……?』
(なんて失礼な会話だ……)
「ごめんね、アメリ……」
「うまく説明できないから後で話すわ……」
『分かったわ、シオリ』
『また後でね』
「うん」
そう言って、セレスは通話を切った。
「……」
「お前ら、普段俺をどんな目で見てんだよ!!」
「そんなこと、どうでもいい!」
(そんなこと……)
「それより……」
セレスは、改めてユウトを見る。
「なんで一日中寝てただけで、スキルが覚醒するわけ!?」
「え……」
「俺は昨日、ウラジオ商会で仕事したぞ!」
「それは一昨日よ」
「は?」
ユウトは固まった。
「いくら俺でも、一日経ったことに気づかないわけないだろ!」
「……はぁ」
セレスは大きくため息をつく。
「色々と想定外な事ばかりして!」
(えっ…無視かよ…)
「それにしても……」
「覚醒の条件が、一日中寝ているだけって……」
「なんてやる気のない覚醒なの……」
「いいだろ……別に……」
「それより、天地創造?」
「これ、使いにくい……」
「世界を変えることもできるスキルなのよ……」
セレスは、呆れ果てたような。
哀れむような。
そんな目でユウトを見た。
「その顔やめろ!」
「何ができるんだ?」
「……なんでもよ」
「なんでも?」
「そう」
セレスは、少しだけ表情を引き締める。
「魂を閉じ込めておく空間を創造したり……」
「地中にケーブルを創造して、世界中に張り巡らせたり……」
「イメージした効果を持つ、特殊な空間を創造したり……」
「……」
ユウトは、言葉を失った。
「それって……」
「そう」
セレスは頷く。
「ルイスがしたことよ」
「……」
ルイス。
あいつと同じことが。
自分にもできる。
そう言われても、まったく実感が湧かなかった。
「けど」
セレスは、すぐに言葉を続ける。
「ユウトは真似しない方がいいわ」
「なんでだよ……」
「失敗したら滅ぶわよ」
「……」
ユウトは、ゆっくりと顔を上げた。
「何が?」
セレスは、真顔で言った。
「世界が」
「……」
「これは、便利な創造スキルの延長じゃないの」
セレスは静かに続ける。
「使い方を間違えれば、世界そのものに影響が出る」
「そんな大袈裟な…」
ユウトは眉をひそめる。
「もし……」
セレスの声が、少し低くなる。
「太陽をもう1つ創造したら?」
「……」
「もし……」
「巨大な隕石を空に創造したら?」
「……」
ユウトは、自分の手を見つめた。
創造。
いや。
天地創造。
その力の意味を。
ユウトは、この時初めて理解した。




