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東方星剣異聞  作者: くぅすけ
6章 白銀と幻想、幽し桜の夢
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79.メイド長代理の魔導師・2





「ふーん......。」


レミリアは湯気の立ちのぼるティーカップに口をつけた後、満足そうに頷いてから皿の上に戻した。


「レンもなかなか紅茶を淹れるの上手いじゃないの。......流石に咲夜には敵わないけど。」


「気に入ってもらえたなら良かった。」


紅茶なんてほぼ初めて淹れたんだけどね。


「......どうかしら?紅魔館(ここ)でのお仕事は。」


「結構大変だよ。常に雑務に追われっぱなしって感じ。年中無休で毎日これをこなしている咲夜は本当凄いな。」


「でしょう?だからたまには咲夜を休ませてあげたくてね。ただ普通に咲夜を休ませて美鈴とかに代理をやらせるのもつまらないし、折角だからと思って貴方を呼んできてもらったってわけ。」


「なるほどな。......けどなんで俺なんだ?霊夢や魔理沙でも良かったんじゃ?」


「レンが紅魔館(ここ)で仕事するのもなんか面白いかなって。それにフランも貴方に会いたがってたしね。」


面白いかなってどういうことだよ......?


「そ、そうだったのか。」


「ふふ......従者を思いやり、妹のお願いを聞いてあげるのもカリスマってもんよ。」


レミリアは満足そうに腰に手を当てながらそう言った。


「それにしても貴方びっくりするほどそのタキシード似合っているわね。」


「あはは、そうかな......。」


指差されて、レンは胸元の蝶ネクタイを締め直した。


一応紅魔館で働く上での作業服として咲夜に貸してもらった礼服だ。


学院制服のままで働くのも違和感があるからこれを着なさい、と言われて半ば強制的に着させられたものである。


「普段のあの制服も似合っているけど、こっちもだいぶ様になっているわよ。こうして見るとレンもなかなか高貴な感じの顔立ちをしているじゃないの。」


「え......?」


「元いた世界では実は貴族とか王族の子だったんじゃないの?」


「うーん、俺が物心ついたときには両親はいなかったからなんとも言えないけど、多分そんなことはない......と思う。一応辺境の村の出身だったし。」


「あら、そう......。私の気のせいかしら。」


そう答え、レミリアはまた紅茶を啜る。


「貴方もちょっと休憩しなさい。妖精メイド達に任せて、貴方は少しパチェのところへ行って魔導書でも読んできたらどう?」


「いいのか?......じゃあお言葉に甘えてそうしようかな。」


レンはそう返事をして、嬉しそうに部屋を出て行った。


「さて......今日もそろそろ()()()がくる頃かしらね。」


レミリアは愉快愉快、といった様子でふふ......と笑った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーー紅魔館地下、大図書館にて。


「ねえねえ、お兄様ー!」


「ん、どうしたフラン?」


読みかけの魔導書にしおりを挟んで閉じる。


「これ読んで!」


「いいよ、こっち持っておいで。」


わーい、とはしゃぎながら絵本を抱えて走ってきたフランを隣の椅子に座らせ、彼女が持ってきた絵本を開いて“むかしむかしあるところに......”という昔話のテンプレから始まるお話をレンは読み始めた。


小悪魔はせっせと本棚の掃除をしており、パチュリーは相も変わらず図書館の中心に置かれている自分の机に座って何やら分厚い魔導書に読み耽っている。


だがつい先程から何故かわからないが、頻りに本を置いて机の周りをうろうろしたり、大図書館入口の大扉の方をちらちら見たりしてなんだか落ち着かない様子だ。


レンはフランに絵本の続きを催促されながらも、そんなそわそわしているパチュリーが気になって横目で追っていた......その時だった。


スパァン、という凄まじい音を立てて大図書館入口の大扉が開き(実際には蹴破られたと言った方が正しい)、凄まじいスピードで誰かが図書館内へ突っ込んできた。


「な、何だ?」


一瞬で目の前を通り過ぎて行ったので、視認することができなかった。


突っ込んで来た“誰か”は物凄いスピードで大図書館の本棚と本棚の間を飛び回っているようだ。


その姿を視界に入れようと椅子から立ち上がって本棚の後ろへ回り込んだその時。


パチュリーの声が耳を打った。


「まーた来たのね、魔理沙!今日という今日は今までに盗んでいった本を返してもらうわよ!!」


ーーえっ、魔理沙......!?


「よぉ、パチュリー。今日は図書館内にいたんだな。それといつも言っているけど、私は魔導書をここから“盗んでいる”訳じゃなくて”死ぬまで借りている“だけだぜ。」


「それを“盗む”って言うのよ。」


「お前ら魔法使いに比べたら人間の私の一生なんか一瞬なんだからケチケチすんなよー。」


「貴方ねぇ......。」


パチュリーは呆れたように溜め息を吐いた。


......ここに魔理沙が本を盗みに来るって話、本当だったんだなぁ。


「ま、いつもの通り弾幕ごっこして私が勝ったら持って帰ってもいいだろ?」


「そうね......そうしましょう。でも今日の相手は私や小悪魔じゃないわよ。」


「はぁ?」


首を傾げる魔理沙。


パチュリーはにやりと不敵な笑みを浮かべてから、こちらの方へ向かって真っ直ぐ歩いて来た。


「あの、もしかして俺.......だったりはしないよね?」


「もしかしなくても貴方よ。今日は紅魔館の咲夜代理はレンなんでしょう?ついでに魔理沙を懲らしめて頂戴。」


「えぇ......?」


「私は喘息のせいで調子良い時じゃないと本来の力が出せないし、小悪魔じゃ力不足だから。ほら、さっさと来なさい。」


パチュリーに引っ張られ、渋々魔理沙の方へと進み出るレン。


「げっ......レンじゃないか。何で紅魔館に?」


「いや、その......まあ色々あってさ。今日は紅魔館に雇われているんだ。」


「じゃあ弾幕ごっこの相手はレンになるのか?」


「うん、そういうことになるな......なぁ魔理沙、今日は魔導書を盗むのはやめて、ゆっくりお茶でも飲んでから帰ると言う選択肢は......」


「くっくっく......こいつぁ嬉しい誤算だぜ!前から一度レンとは弾幕ごっこして見たいと思っていたんだ。」


ーーあら......やる気満々。


予想外の戦闘に巻き込まれそうになってげんなりしかけたその時。


「ぐぉっふぇ!?」


魔理沙が奇声を上げた。


横からすっ飛んで来たフランのダイナミックハグの衝撃をもろにくらったようだ。


「魔理沙ー!久しぶり!!やっと遊びに来てくれたのねっ!?」


それでも飽き足らずフランは喜びを抑えきれない、と言った様子で魔理沙の肩をぶんぶん揺さぶる。


「ぐぅ......今のは効いたぜ。はは、久し振りだなフラン。」


「えへへ、だぜだぜー。」


魔理沙が人懐っこい笑みを浮かべながらうりゃうりゃ、とフランの頭を撫で回すと、フランも嬉しそうにえへへ、と笑った。


「ねえ、パチュリー。お兄様の代わりに私が魔理沙と弾幕ごっこしてもいいでしょ?」


「だ、ダメに決まってるでしょう?フランは加減があまり得意じゃないんだから下手したらこの図書館ごと吹き飛んじゃうじゃないの。」


「えーっ!やだやだー!フランが弾幕ごっこするの!!」


「ダメ!!」


「むぅ......。」


あっ、拗ねちゃった。


フランは頬を膨らましてそっぽを向いてしまった。


「私は別にフランが相手でもいいんだけどな。まあパチュリーがああ言うんだったら仕方がない。ほれフラン、飴やるから元気出せって。」


魔理沙が自身の帽子から取り出して手渡した飴を、フランは膨れっ面のまま口に放り込んでぼりぼり噛み砕いた。


魔理沙はその様子を見てにししと笑い、箒に跨って上へと飛び上がる。


「そんじゃ、勝負だレン!久しぶりの魔法......気ぃ入れて“逝き“な!!」


そんなセリフを皮切りに、魔理沙はミニ八卦路から星型の弾幕とレーザーを乱射して来た。


ーー恋符「ノンディレクショナルレーザー」。


「い、いきなりかよっ!?」


飛び上がり、壁際の本棚を蹴って宙返りの要領でレーザーを躱す。


次いでそのまま空中で腰の鞘から剣を抜き放ち、星型の弾幕を片っ端から弾き返した。


図書館中に眩い閃光が走りーー。


弾き返された弾幕があちらこちらへ衝突し、大量の分厚い本が吹き飛ぶ。


「うわああぁあぁぁーっ!?折角綺麗に陳列しておいた本棚がぁーっ!!」


......小悪魔の悲鳴が聞こえてきた。


それが聞こえていないのか、それとも単に無視しているだけなのか、魔理沙はお構いなしといった様子。


「今の全部剣で捌き切ったか。へへっ、面白い......なんだか妖夢を相手にしているような気分だぜ!次行くぞ!!」


なんかすっごく楽しそう。


いつの間にかフランの機嫌も直っていたようで


「お兄様も魔理沙もがんばれー。」


というような声が下から聞こえてくる。


魔理沙は懐から何か液体の入った瓶のようなものをいくつか取り出すと、こちらへ向けて放り投げた。


ーーなんだか嫌な予感がする。


レンは敢えて飛んできた瓶を剣で叩っ斬らずに横っ飛びで避けた。


すると、案の定瓶は床に着弾した瞬間爆発。


凄まじい爆風と共に巻き込まれた大量の本がこちらへ吹っ飛んでくる。


ーー危ないな、おい。


「あああぁぁぁぁあっっ!!」


またもや本棚が荒らされて小悪魔の悲鳴が響く。


「レンさーん!!図書館が荒らされないように戦えないんですか!?」


「むっ、無茶言うなよっ!?」


小悪魔にそう叫び返しながら、次々と落ちてくる爆弾瓶から死に物狂いで逃げ回る。


「これでとどめだぜっ!!」


魔理沙は一気に大量の爆弾瓶をレンの方へ放り投げ、同時に無数の星形の弾幕を放った。


避けられる隙間も殆ど無い弾幕の嵐がレンの元へと降り注ぐ。


ーー霊夢ならもしかしたら躱せるかもしれないが、あいつ以外にこの弾幕を避け切れる奴はいないだろうな。


魔理沙が勝利を確信したその時だった。


「おっ......!?」


”キィン“、というような甲高い音と共に青みがかった波導が発生し、魔理沙の放った弾幕が相殺されていく。


波動の中心にいたレンは安堵のため息を漏らした。


ーーあっぶねぇ......。


たった今彼が咄嗟に繰り出したのは”霊撃“。


霊力を圧縮して放出することによって相手の弾幕を掻き消すという技である。


ついこの間暇つぶしに霊夢から教わったのだが、まさか実戦で使うことになるとは。


魔力消費が激しいので乱発はできないが今後もお世話になる機会は多いかもしれない。


......と、油断しかけた刹那。


箒に跨ったまま凄まじい速度で突っ込んでくる魔理沙が視界に入った。


息を呑み、躱そうとしたがもう遅い。


「ぐっ......!?」


反射的に刀身を前に持ってきて防ごうとしたが、間に合わない。


不意打ちの体当たりを正面から喰らってレンはそのまま空中へ吹っ飛ばされた。


その拍子に剣が手から離れる。


ーーしまった。


空中で思いっきり身体を捻り、なんとか受け身を取る。


剣はそのまま幾重もの円を描きながら飛んでいき、図書館の一角に積んであった本の山に鋭い音を立てて突き刺さった。


「よっと......。」


すかさず畳み掛けるように魔理沙が繰り出してきた箒での薙ぎ払い、上段蹴りをすんでのところで躱す。


近距離戦なら剣の扱いに秀でているレンが魔理沙よりも圧倒的有利だが、剣が無い丸腰の状態であれば話は別だ。


このまま格闘戦を続けてもジリ貧だと判断したレンは飛び退って距離を取った。


すると魔理沙は距離を詰めようとはせずに魔法弾幕を放ってきたのでレンも魔法弾幕で応戦する。


......この状況をどう打開しようか。


魔法弾幕を撃ちながら考える。


メディウムであるアルテマが手元に無いので強力な魔法は撃てないし、徐々に魔力供給量が消費量に追いつかなくなってくる。


このままではいずれ魔力枯渇で詰みだ。


......突っ込んでみるか。


レンは目と鼻の先まで近づいて来ていた弾幕を宙返りで躱して壁際の本棚に着地すると、そのまま本棚の壁面を走った。


「げっ......お前ウッソだろ!?」


魔理沙は驚きながらも壁を走るレンを狙って弾幕を乱射。


その弾幕を掻い潜ってレンは魔理沙へ急接近していく。


「っ......!!」


魔理沙は弾幕乱射ではレンを止められないと直感するや否や八卦路を箒に持ち替えてレン目掛けてふるう。


対するレンはその一撃を身をかがめて躱し、魔理沙の足元を刈り取るように足払い。


それをステップで躱す魔理沙。


......押し切られる。


そう判断した魔理沙が飛び退ろうとしたその時。


レンが放った手刀が彼女の箒を捉えた。


ーーしまっ......!!


箒は綺麗な弧を描いて飛んでいき、少し離れたところへ音を立てて落下した。


「「......。」」


互いにたっぷり十数秒程相手の動きを警戒して相対したまま構えを解かずに見合った後、ほぼ同時に地面を蹴って走り出す。


そしてレンは剣を、魔理沙は箒をそれぞれ回収すると再び構え直し、相対する。


「なかなかやるじゃないか。流石、伊達に魔導師やってないな。弾幕ごっこしていて楽しいぜ。」


「そっちこそ。魔理沙ぐらい強い奴相手の弾幕ごっこはやっぱり楽しいな。」


レンのその言葉を聞いて、魔理沙は少し嬉しそうに笑った。


「へっへっへ、そりゃどーも。」


実際、魔理沙は強い。


こちらのちょっと捻った斬撃に合わせてきっちりカウンターまで決めて来たり、うまく相手を追い詰めるように弾幕を敷いていたりといったところから察するに、相当実戦慣れしているようだ。


流石は霊夢と並んでこれまでに幻想郷で起こった数々の異変を解決して来た猛者である、と言ったところか。


「ふっふっふ......だがな、レン。悪いがこの勝負は私が勝たせてもらうぜ!!」


「臨むところだっ!!」


二人とも楽しそうににやりと笑みを浮かべた後、決着を付けるべく同時に床を蹴った。





※※※





「あーあ、惜しかったなぁ。あの場面で上に逃げるんじゃなくて右に横っ飛びしていればなー。」


椅子を仰け反らせ、手を頭の後ろで組んだままため息を吐く魔理沙。


弾幕ごっこは壮絶な接戦の末に辛うじてレンが勝利に終わった。


結局魔理沙は約束通り本を借りていく(?)のを諦め、大人しく大図書館でパチュリーと一緒にお茶だけ飲んで帰ることになったのである。


「そんな言い訳したって変わらないでしょ。今日は魔理沙の負け。大人しくお茶だけ飲んで帰りなさい。」


パチュリーは本から全く目を離さずにそう答えた。


「ちぇっ、大体なんでレンがそっちの陣営にいるんだよ?そんなのずるいぜ。それに今日は私の必殺のマスタースパークも撃って無いからな!私はまだ負けちゃいないのぜ。」


「あら、ここに来て負け惜しみかしら?」


「ぐぬぬ......レン、また今度......次は神社で勝負な!今度は負けないぜ!!」


「あはは......。」


びしっと人差し指を突きつけられたレンは苦笑い。


「それにしても......フラン、よく寝てるなぁ。」


フランはレンの膝の上に座ったまますやすや寝息を立てている。


その可愛らしい寝顔には見ているだけで癒される。


......が、一歩も動けない。


その様子を見て魔理沙は悪戯っぽく笑った。


「お前、フランに本当によく懐かれてるよな。」


「どうしよう。まだしなければいけないことがたくさんあるのにこのままじゃここから動けないな......。」


「いいじゃないか。フランが目覚めるまでそこで寝かせといてやれよ。なぁ、お兄様?」


「うっ......勘弁してくれよ。」


そのやりとりに耳を傾けていたのか、珍しくパチュリーはぷっ、と小さく吹き出して笑った。


「くくっ、まあまあ。楽しく弾幕ごっこさせてもらったお礼に私も後で少しだけ仕事手伝ってやるからさ。せっかくだし今はフランをゆっくり寝かせてやれよ。」


「本当?ありがとう、助かるよ。」


......やっぱり魔理沙はいいやつだな。


膝の上で寝ているフランを起こさないように気を付けながら、レンは机の上にあった自分のティーカップを取って紅茶を啜った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



レンが紅魔館に来てから3日目の夕方。


この三日間慣れない雑務に追われて多忙ではあったが、とても楽しい時間を過ごした。


レミリア達への挨拶や最後の仕事も済ませ、椅子に座って欠伸をしていると。


「ふふ......お疲れ様。悪かったわね。いくらお嬢様のご意向といえども三日間も代わりに仕事をして貰っちゃって。」


そう言いながら部屋に入って来たのは咲夜だ。


「いや、俺としては忙しかったけど三日間結構楽しかったしあっという間だったよ。......しっかし改めて咲夜は凄いよな。こんな量の仕事を年中無休で毎日こなしているんでしょ?時々嫌になったりしない?」


それを聞いて咲夜はちょぴり嬉しそうに笑った。


「嫌になることなんて......無いわね。どれだけ忙しくて大変でも、お嬢様と妹様の笑顔が見られるなら私は幾らでも身を削るわ。私は特にお嬢様には救ってもらった過去もあるし。」


「へぇ......見上げた忠誠心だな。」


「貴方にはいないの?“この人の為なら死ねる”みたいな大切な人。」


咲夜に言われて、レンは頭をぼりぼり描きながらうーん......と考え込んだ。


相当悩んでいるのかなかなか返事が返ってこない。


「......元いた世界にはいたかもしれないけどもう死んじゃったしな。今は......」


「今は?」


「幻想郷のみんな、かな。贅沢な願いかもしれないけど......誰か一人を救うとかじゃなくて出来ることならこの幻想郷に住む人々全員の為にって感じ。あっごめん、答えになってないな。」


おいおいおい......。


咲夜は手で自分の目元を覆った。


「じゃ、じゃあ逆に今現在貴方のことをそういう風に想ってくれてるなぁ、みたいな......それか自分に好意持ってくれてるっぽい人とか心当たりある?」


「いや......まったく無いな。なんでそんなこと聞くんだ?」


即答して、不思議そうに首を傾げるレン。


「......貴方鈍すぎ。」


「えぇ......?」


盛大にため息を吐いて呆れる咲夜。


何故そんな反応をされたのか、はたまた何故そんな質問をされたのかもまったく思い当たらないレンは困惑する。


霊夢はツンデレだし、逆に妖夢は好意ド直球だし、レンは超鈍いしで側から見ていてもどかしいなこいつら。


霊夢や妖夢はあんなにレンのことを想っているというのに。


「まあいいわ。ほら、そろそろ霊夢が痺れを切らして迎えにくる頃じゃない?帰る支度だけしておいた方が......」


咲夜がそう言い終わらないうちに、一階のエントランスホールの方から


「誰かいるー?鍵空いてるから勝手に入るわよー?」


という霊夢の声が聞こえてきた。


「......霊夢?」


「ほら、早く行ってあげなさいな。帰り支度は済んでるの?」


「うん。一応荷物だけは纏めておいたからすぐ出られるよ。」


咲夜に促され、レンは部屋を出た。


「......レン。」


ドアを閉めようとしたその時、咲夜は彼の名を呼んだ。


「ん、どうした?」


「みんなを救ってあげたいっていう思いも大事だけど、貴方のことを特に想ってくれている子もいるってことを忘れないで。」


「えっ、あっ、うん......。」


レンには咲夜の言葉の意図が汲み取れ無かったが、取り敢えず曖昧な返事を返した。


そのままドアを閉め、廊下を渡り、階段を降りてエントランスホールへと向かう。


「あっ、いたいた!た、たまたま近くを通り掛かったから迎えに来てあげたのよ?」


「ああ、ありがとう。丁度全部仕事が終わって、レミリア達にも挨拶を済ませたところだったんだ。」


「そう。......じゃあ帰りましょ?」


「うん、そうだね。」


霊夢に手を引かれてレンも歩き出す。


「どうだった?三日間紅魔館で働いてみて。」


「館が広いから掃除とか大変で忙しかったけど楽しかったよ。霊夢は三日間楽しく過ごせた?」


「私は......あんたがいなくて久々にゆっくり過ごせたわよ。」


「あはは、こりゃ手厳しいなぁ。」


ーー本当はちょっぴり寂しかったけどね。


と霊夢は心の中で呟く。


「ねぇ、今日はもう疲れたでしょ?人里でご飯食べて行かない?」


「いいね、少し飲んでいくか。」


紅魔館を出て、雪の積もっている中庭を並んで歩く二人の姿。


その姿を咲夜は微笑ましそうに二階から窓越しに眺める。


「少しお節介だったかしらね。」


私らしくもない、と言い掛けて彼女は自分で小さく笑った。




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