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東方星剣異聞  作者: くぅすけ
4章 繰り返される紅の夢
43/106

43.時を操るメイドさん




チルノ達と別れた後、湖の上をひたすら飛び続けていると。


畔に赤色のとてつも無く大きな洋風の屋敷が佇んでいるのが目に入った。


空を覆うあの不気味な紅い霧は確かにあの建物から出ているようだ。


「あれが紅魔館か。へぇ......噂に聞いた通り本当に真っ赤なんだな。なんか周りの景色に対して酷く浮いているというか......」


「あの屋敷も外の世界からレミリア達と一緒に入って来たものなのよ。きっと周囲の景色に対して浮いて見えるのはそのせいね。」


いや......あんだけ紅一色を貫いている建物ってそうそうないし逆にあの屋敷が建っていても浮いているように見えない風景なんてあるのかな。


そうこう話しているうちに畔に到着。


徐々に高度を下げて地面へと降り立つ。


「さて、どこから乗り込むか......。どっかに抜け道とか無いかな。霊夢は前に異変を解決した時にはどうやって侵入したんだ?」


「どうやってもくそも無いわよ。普通に正面玄関から殴り込んだわ。」


「そ、そうか......でも正面突破するならほら、門の所に門番が居るみたいだし戦わないといけな......」


「門番なら大丈夫よ。確かに門の前に立ってるけど寝てるわよ、アレ。」


ーーゑゑッ!?


お祓い棒を肩に担ぐようにしてスタスタ正面門の方へ歩いていく霊夢。


霊夢が目の前を素通りしても門の前に立っている淡い緑色のチャイナドレスを着た赤髪の門番さん(?)が反応することはなかった。


よく見ると鼻ちょうちん作ってぐうぐういびきをかいている。


......マジで寝てるよ。それでいいのか門番!?


「気持ちよく寝ているみたいだし、無理に起こさなくてもいいじゃない。さ、とっとと館に入るわよ。」


「お、おう。」


門番の少女が熟睡しているのをもう一度しっかり確認してからレンも霊夢の後についていく。


門を潜って敷地内に入ると、それはそれは広い庭園が広がっていた。門から館へと続く主道には何台も噴水が並んでおり、主道を挟んで花壇には色とりどりの花々が植えられている。


白玉楼の和風の庭園も綺麗だが、紅魔館の洋風の庭園もなかなかに綺麗だ。


「それにしても本当に大きな屋敷だな。掃除とか大変そうだけど、大勢使用人がいたりとかするのかな。」


「妖精メイドをいっぱい雇ってるのよ。まあ皆揃いも揃ってあんまり役に立たないらしいけど。一人べらぼうに仕事ができる人間がいて、そいつがメイド長を務めてるの。」


「へぇ......吸血鬼の館に人間と妖精のメイドか。しっかしまぁいくら仕事が出来る人がいるとはいえこんだけ大きな屋敷を隅々まで掃除したら丸一日どころじゃ済まないだろうな。」


「そうよね。あんまり家が広過ぎでも管理が大変だし、やっぱり住むんだったら博麗神社(うち)ぐらいの狭さがちょうどいいのよ。」


「ははは......ちげえねえ。」


その狭い神社の掃除すら霊夢はさぼり気味なのだが、それを突っ込むと再度宵闇に往復ピンタ音が響いて門番さんを起こしてしまいかねないのでやめておく。


「ん......鍵は空いてるみたいね。じゃ、遠慮無く中に入りましょうか。」


と霊夢が正面玄関の戸に手をかけてちょうど半分ほど押し開けた瞬間だった。


彼女達の耳に入ったのは何か刃物のようなものが空を切り裂く音。


視界一杯に鈍い閃光が走る。


「ッ!!」


レンは幾度も聞いたことのあるその音を聞いて。霊夢は自らの勘に囁かれて。


考えるよりも早く身体が反応。それぞれ床を蹴って緊急回避、両側の戸を盾にして身を隠す。


ーー奇術「ミスディレクション」。


コンマ一秒遅れて大量のナイフが戸の内側に突き刺さる。


そして戸に阻まれずに外まで飛んできた数本のナイフはそのまま一直線に門の方へと飛んで行き......。


「ふぎゃあっ!?」


立ちながら居眠りしていた門番へと命中。


唐突のナイフ掃射が終わる頃には門番さんはピクピクと震えながら倒れていた。


「......いきなり結構な御挨拶じゃないか。」


「あら、ごめんあそばせ。居眠りしている門番にお仕置きをするだけのつもりだったんだけど......貴方達も巻き込みかけてしまったみたいね。」


館の玄関扉に入ってすぐの所はエントランスホールになっていた。そしてそのエントランスホールの中心、二階へと続く階段の一番上の段に“彼女”は立っていた。


メイド服を纏った少女。


肩にちょうどかかるくらいの長さの銀髪は左右で三つ編みにして緑色のリボンで結んでいる。身長がすらりと高く、女の子だが目測でレンとほぼ同じくらい。青い瞳からは極めて冷静そうな性格が見て感じ取れる。


ーー十六夜咲夜。


前の宴会で少し話したことがある。確かレミリアの所でメイドをやっていると言っていたが......霊夢がさっき言ってたメイド長っていうのは咲夜のことだったのか。


「出たわね、咲夜!」


「いらっしゃい。お掃除が中々進まなくて大変だわ。霊夢と......レン、だったわよね。今日は何の用があって来たのかしら?」


「白々しいわね!性懲りも無く二度も同じような異変起こして......あんたのご主人が出してるあ紅い霧、大大大迷惑だから今すぐにでもやめてちょうだい!!」


びしっとお祓い棒を咲夜へ向けて霊夢は叫んだ。


指を突きつけられた咲夜ははぁ......、とため息を吐きながら首を横に振り。


「......悪いわね霊夢。いくら普段仲良くしてもらっているとはいえ私もお嬢様を裏切ることは出来ないの。例えお嬢様が戯れの為に起こした異変であっても......ね。お嬢様に話を通したければ力づくでも私を倒してから行きなさい。」


「ふん、元からそのつもりよ。レン、いくわよ!」


「了解!」


レンが返事をするのとほぼ同時に、咲夜は空中へと飛び上がり、凄まじい量のナイフを放って来た。


霊夢ならひらりひらりと躱してのけるだろうが自分は流石にこの数を躱し切るのはきついだろうと判断し、レンは腰の剣を抜き放った。


飛来するナイフを片っ端から見切り、剣で弾き返す。


弾き返されたナイフは回転しながら投げた咲夜の方へと飛んでいく。


「へぇ......面白い芸当が出来るのね。」


弾き返されて自分の方へと飛んでくるナイフをひょいひょい避けながら咲夜は感心したような声を漏らした。


「じゃあ......これはどうかしら。」


「レン、来るわよ!」


霊夢の警告する声を聞き、レンは身構えた。


対する咲夜は続けて先ほどまでと同じようにナイフを投げる。


「何度投げても同じだ!」


ーー見切った!


飛んでくるナイフの軌道を予測し、それを弾くべく剣を振るおうとしたその時だった。


「ッ!?」


ナイフが一瞬消えたかと思うと、次の瞬間レンの眼前ギリギリからいきなりナイフが出現。


ーー馬鹿な、瞬間移動!?


動揺しつつも直感的に首を傾ける。


飛んできた複数のナイフのうちの一本の刃がレンの頬を掠めた。


危なかった......。


と安堵しかけたのも束の間、視界を正面に戻した時にはもう咲夜の姿はどこにもない。


ーーどこへ行った......?


冷たい汗が首筋を流れる。


「後ろよ!」


霊夢の叫び声を聞いた刹那、背後から殺気を感じ取った。


弾かれたように振り向くと、そこにはナイフを振りかぶった咲夜。


「くっ......!!」


反射的にナイフの刃の方向を見て斬撃の機動を予測。初撃を辛うじて躱し、続く追撃は剣を立てて受ける。


広間に鋭い剣戟音が響く。


すかさずカウンターの一撃。


受け流された。


が、反撃はさせない。


反撃するべく振りかぶった咲夜の手首を剣を持っていない空いた方の手で掴み、外側に捻る。


ーーもらった!!


一瞬怯んだ隙にそのまま手首を一気に引き、背負い投げの要領で投げ飛ばした。


......投げ飛ばしたはずだった。


ーーが。


背負った刹那、咲夜は上体を捻って投げを回避。レンはその勢いのまま着地した咲夜に脚を絡めて倒された。


背中から地面に叩きつけられ、骨と痛覚が悲鳴を上げる。


「がはっ......!!」


「悪いけど私、体術は割と得意よ。」


咲夜は新たにナイフを取り出して追撃しようとしたが、霊夢の牽制の蹴りに阻まれて飛び退る。


「レン、大丈夫?」


「ああ。地面に背中をぶつけただけだ。だが......強いな。咲夜は瞬間移動できるのか?」


「いや、あれは周囲の時を止めて自分だけが動いているだけよ。私達の時間も止められてるから瞬間移動しているように見えるだけ。」


「そうか。霊夢、前回の異変解決の時に咲夜と戦った時はどうやって勝ったんだ?」


「だいぶ苦戦したけど勘で避けたり攻撃したりしていたらなんとか勝てたわ。ただ......それだと今回も勝てる確証は無いわ。何か時止めの対処法は無いかしら?」


「俺に一つ考えがあるんだが......どうだ?賭けてみないか?」


「いいじゃないの。勝敗のある賭け事とか私大好きよ。乗ってあげるわ。」


霊夢がにやりと悪戯な笑みを浮かべる。


レンは手短に自分の考えた作戦を霊夢に耳打ちで説明した。


「よし、上手くやってくれよ。勝敗は霊夢に掛かってるからな。」


「任せなさい!泥舟......だっけ?に乗ったつもりでいなさいよ!」


霊夢さん霊夢さん......逆ですよ。泥舟じゃなくて大船です。泥舟だと撃沈しちゃいます。


「......話は終わったかしら。さぁ久しぶりの弾幕ごっこ、せいぜい楽しませて頂戴。」


そう言うなり咲夜は再び太腿のホルダーから新たなナイフを抜き放った。








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