3.イチョウと□(四角)
宵にとっては大混乱な出来事だったけれど。
やっぱりヨシダトワの水溜りが無くなったことで、
現実は上書きされて流れていた。
次の出勤日の時、石橋さんにもう一度尋ねてみても。
「ヨシダトワ?女の子?男の子?親の名前?
うーん私は知らんわあ。
悪いけど、勝手にデータ調べたり出来へんしなあ。
まあ世間話ぽく他の先生にも訊いてみて」
そんな風にウザがられてオワリ。
バイトが休みで、定常も仕事で外出してる時には、
何時間も掛けてネット検索もしてみたけれど。
そもそも検索ワードも不明確だし。
出て来る情報は雑然粉然で益々混乱するだけ。
タメ息付いて、宵はPCの前から離れて台所へ行く。
濃い目のお茶を淹れて一息付きたい気分。
(オレはあんな鮮明に覚えとぉのに…。
関連有りそーな事件すら見つけられへん。
何んでやろ?
児童虐待とか育児放棄とか必ずニュースなるンになあ。
いやまあそんなニュース無い方がエエんやけど。
ヨシダトワちゃんの件でこんな難航しとるンやから。
27年前の水難事故の情報なんて、もっと難しいやろなぁ。
何処の誰かも判らへんし、近所どころか海外やったりして…)
茶匙に盛った茶葉がバラリと落ちて、宵ははっと気付く。
(そぉや。
あン時しーちゃんくーちゃんは「生まれへんよおに」て言うてた。
せやから上書きされた今では、ヨシダトワちゃんは生まれてへん。
その名前で事件探しても見つかるワケ無いンや)
上書き前後が整理出来てなくて。
ついついあの悲惨な状況からどうなったのか?に囚われていて。
(はぁ~オレあほやなぁ…)
テーブルに散らばった茶葉をぼんやり見つめながら思う。
(小さい命が苦しい思いをせんで済んだンなら…。
それは良かったとも言えるンやろか…)
そう自問自答するけれど。
散らばった茶葉の横に在る空っぽの湯呑を見ていると。
また違う想いも湧いてしまう。
(けど、もし生まれて来とって。
環境に恵まれンかったとしても。
里親制度とか特別養子縁組とか、生きて行くための色んな方法有るし。
生きてさえ居ったら…。
美味しいモンお腹いっぱい食べたり。
楽しいなあとか幸せやなあて思うことかて有るかも知れんし)
今更どうにも出来ないことだから余計に。
もし仮にと想像してしまって胸が痛くて、宵は唇を強く噛み締める。
そして実際。
他の人が生きるはずの時間で、自分は今幸せに生きている。
重くて苦しくて心が咎めて潰れそう。
宵は両手で顔を覆って、忘れていた呼吸をゆっくり繰り返して。
そして何んとか立ち上がるとフラフラと本堂へ向かう。
(…てをあわそ…。
上書きされた部分とか、タラればとか。
正しいとか間違うとるとか、きっと答えは見つからへん。
ただ一心に祈ろ、上書き前のコトも背負って。
オレにはそれしか出来へん)
本堂の引戸を閉める時じっとイチョウを見つめてみる。
紅葉が進んでワサワサの葉は緑と黄色のグラデーション。
優美に言われて以来。
とりあえず毎日根元周りをぐるりと掃除していて。
ゴミが有っても無くても。
イチョウから何にも感じ無くても、傍に立ってみると。
日々が流れゆく中で静かに堂々と佇むイチョウは
時計の真ん中みたいに揺るが無い。
宵は心の中で問い掛けてみる。
(なあ、イチョウさん。
イチョウさんがこの寺に根付いとるンも。
オレん中に上書き前の記憶を残してくれとるンも。
ここでご供養するンがオレの役割やて意味やんな?)
そんな独り言に。
たっぷりの葉を付けて重そうな枝がくくんと頷くから。
ちょっと宵はびっくり。
でもそれは大きな雨粒が落ちてきたせい。
「わ!降り出してもたっ洗濯物取り込まんと!」
現実に引き戻されて慌てる様子はカッコ悪イけれど。
生きて、生活していると。
行動が憂鬱を飛び越えてくれるコトもあったりする。
原付なら5分も掛からないけど。
雨になってしまったので、宵は徒歩で農産物の直売所へ向かう。
色々まとめ買いするならスーパーか商店街。
でも野菜と卵くらいなら直売所の方が近いし安い。
それに今は頭の中がごちゃごちゃだから。
散歩のつもりで、雨に洗われた空気を深呼吸するのは気持ち良い。
傘を畳み雨靴で直売所へ1歩入ると。
「あらあら後竺寺の中江さんやぁ、いらっしゃーい」
「おはぎ有るよぉ味見してって~」
「なあゴボウ要らん?運ぶ時に折れたヤツやけど」
わあわあと明るい呼びかけに囲まれて、宵も自然と笑顔になる。
挨拶して少し言葉を交わしていると。
お試しや・おまけや、そう渡される品でエコバッグはぱんぱん。
そして〆は「新しー住職さんにも食べて貰うてなー」だから。
(どこでも定常は人気モンやなあ)
宵は苦笑するしかない。
でもそーゆーコトなら、今晩の夕食は少々豪華にしよう。
定常に喜んで貰える食卓を考え出すと、すっかり楽しくなってきた。
「中江さん?」
しっとりと上品な声を掛けられて宵が振り返ると。
そこに山崎孝一が立っていた。
いつも宵が珈琲豆を買いに行く店のスタッフさん。
「わ、孝一さん。こんにちは。
直売所でお会いするとはびっくりやぁ」
店での白シャツとカフェエプロン姿しか知らなかったけれど。
今はGパンに柔らかそうな萌黄色ブルゾンを羽織ったラフな格好。
カチっとした雰囲気でテキパキ動く店での印象とはちょっと違う。
「お店から遠いんに、お買い物ですか?」
「いえ納品です。ドリップパックを置かせて貰うてて」
「そおなんですか?
オレよお買物来るンですけど。
ドリップパック売っとるなんて気ぃ付かんかったです」
孝一が持つ箱の中には、豆の種類が書かれたキレイな緑色のパック。
「手作業で手間ばっかり掛かるし、たまにしか作らへんので」
「へえええすぅごいですねえ。こんなん自分で作れるンやぁ」
たっぷり粉が入ってるらしくパッケージはふっくら大きい。
いつもより手の込んだ夕食の後にゆっくりコーヒーを淹れて。
そんな風に定常と過ごせたら、気分も浮上しそう。
箱の中にはぎっしりパックが詰め込まれてるし。
店頭に並べる前に売って貰えそうかも。
「あの2つ欲しいンですけど買えますか?」
「あ、えと。これは…」
宵が箱を覗き込むと、残念な言葉に遮られてしまう。
「ごめんねえ住職さん。
それウチが頼んだヤツで、販売用ちゃうンよ~。
ココに並べても一瞬で売切れやから。
欲しいンやったら注文しとく方がエエよ~」
ひょいと顔を覗かせた女性は箱ごと受け取って行ってしまう。
手に入らないガッカリ感がそのまんま宵の顔に浮かぶから。
孝一は優しい声でその場を立て直してくれる。
「あの、豆の焙煎所はここからすぐなんで。
良かったらちょお寄って行きませんか?
パックは無理でも何んかお渡し出来ますよ。
雨も強ぉなって来たし、オレは車なんで一緒にどおぞ」
宵の濡れた雨靴を見ながら孝一はにっこり微笑んだ。
直売所から少し行くとすぐ里山の麓。
せいぜい山菜取りにしか使わない道の入口に焙煎所は在った。
短い煙突がちょこんと付いて絵本みたいに可愛らしい外観。
砂利の駐車場には旧型のロードスターが1台停まっていて。
ちょっと孝一の顔が曇る。
「えー…何んで居るん…」
「あ、あの先客有るンやったら。オレ別に」
「いえいえ、そんな気ぃ遣う相手ちゃうんで。どおぞ」
煙突から煙は出ていないけれど。
家屋全体に芳ばしいコーヒーの香りが沁み込んでいるし。
焙煎機とかせっかくなら見てみたい。
厚かましいけど、興味の方が大きくて。
「おじゃましますぅ」
孝一に付いて宵も中へ入ると。
「おっかえり~ダーリーンっ」
ぐわっと大きな人影が襲い掛かって来た。
「ふわあっ」宵はビビってのけ反るけど。
孝一はびしっと鋭い一言を投げ付ける。
「恥ずかしい真似せんでくださいっお客さん居るンですよっ」
ワイシャツ姿の熊は、抱きしめる為に広げた両腕を一時停止して。
宵を覗き込んで来た。
「お。学生?迷子?」
「失礼なコト言わんでくださいっ。後竺寺の住職さんです。
五十嵐さんも協議会でお会いしたことあるはずでしょう?」
「えー?いやお初やと思うけどなあ」
むむっと口をへの字曲げて記憶を探る男の様子は。
その大きな身体と声には驚いたけれど、屈託の無さが滲んでて。
宵のビビリも溶け、眼鏡の位置を直しながらペコリと頭を下げた。
「はい。初めましてやと思います、中江と申します。
諸事情あって今は住職2人居りまして。
協議会に出とるンはもう1人の外越の方になります」
「そうそう!思い出したワ、外越さんや。
清々しい程キリっとしとって、頭もよお切れる人やった。
へえ~お坊さんて2人体制とか有るンですかあ。
失礼しました、オレ五十嵐いいます。
高山先生の一番弟子で、孝一のぱ…」
「いがらしさんっ!
何んでココ居るんですか?
今週は案件大詰めで休み無しやて言うてたやナイですか」
「そんなん決まっとるやん。こう…」
「はいはいっコーヒー休憩に来たンやったら。
リビングで待っとってくださいっ」
「そんな邪険にせんでもぉ」
強めの口調で五十嵐の言葉を遮ったり、素っ気ない態度とか。
宵が知ってる孝一とは全然違うから、ついじっと見てしまって。
焦って少し火照った孝一の表情とか。
そんな様子を嬉しそうに眺めている五十嵐の雰囲気とか。
何んだか宵は今すぐ定常に会いたくなってしまった。
木目調の広々したリビングで、淹れたてのコーヒーを頂きながら。
宵はちらっと視線を上げて向かいに並ぶ2人を見る。
さっき直売所で見たドリップパックは元々五十嵐の為だったらしく。
マンデリンは外せんけど、このトラジャつーンも旨いなあ、なんて。
試飲しながら五十嵐はどのパックをどれだけ箱に詰めるか悩んでる。
そして、にっと明るい笑顔を宵に向けて。
「中江さんはどれ持って帰りますぅ?」
「わ、ありがとございます。
孝一さんとこの豆はどれも美味しいンで、ほんまにどれでも」
「そぉでしょー!オレもそない思いますっ。
仕事行き詰まっとっても孝一のコーヒーぐっと飲んだら。
頭冴えるンですよー」
「よぉ言いいますねぇ。
考え事しながらお湯注いどって、溢れとるのも気ぃ付かんのに」
「いやいやアレはやな。
最後のパックやったから、薄うして量増やしたんや」
「そんなん味も香りも別モンやないですか」
店とは違う孝一の雰囲気や2人のやりとりに、宵は笑ってしまう。
「あははは、仲良えンですねえ」
「そらもぉめちゃめちゃ惚れてますよお」
「…五十嵐さん?お仕事忙しいでしょおし。
夕方なったら高速混むし、そろそろ事務所戻った方がエエでしょお」
冷静を装いながら孝一はパックをぎゅうぎゅうと箱に詰め。
ついでに、早く立ちぃと言わんばかりに五十嵐をぎゅうと圧す。
「高速反対方向やん」
スレンダーな孝一に圧されても、五十嵐はビクともしないけど。
「お仕事場遠いンですか?」
「大阪市内なンで。高速空いとっても2時間弱ですねえ」
「それはまた…」
余計なコト言うてと孝一は益々ムスっとしてしまう。
さすがに宵も、コーヒーの為に片道2時間掛ける理由が判ってしまうし。
初対面なのに在りのままを見せてくれる五十嵐に却って信頼感が湧く。
そんな風にちょっと楽しい時間を過ごしたけど。
とうとう五十嵐も腕時計をちらっと見ると。
味わうようにゆっくりコーヒーを飲み干し、立ち上がる準備。
「オレ検事あがりの弁護士で、まだ実務経験浅いンでねえ。
今はまだ知り合いの事務所で勉強中やけど。
一人前成ったらココで開業するつもりなんで。
これからも末長くよろしくお願いしますねえ」
相手はちんまりした童顔の年下なのに。
五十嵐は深々と頭を下げるから、孝一の顔は沸騰してしまう。
「中江さん、こんな戯言ホンキにせんでくださいねっ」
恋人のノロケと言えばそれまでだけど。
違うワードが宵の中で引っ掛かって、思わず身を乗り出す。
「え、あのっ元検事さんやったら!
過去の刑事事件とか調べること出来るンやろか?」
それまで平和で穏やかだった宵の顔色が突然変わるから。
孝一も五十嵐も驚いてしまう。
「何んかあったんですか?」
せっかくそう訊いて貰えたのに。
現実に何かが在ったかどうか判らないから、説明が難しい。
緊張と焦りで汗を浮かべながら、宵は必死で言葉を探す。
「あ、あの。
夢みたいな話なんですけど。
寺いう場所柄か色んなお声が聞こえることあって。
今すごぉ気になっとるコトあって。
妊婦さんが起こした事件やと思うンやけど。
赤ちゃんは生まれて来えへん方がエエ言うて、自分で包丁で…。
それで赤ちゃんは生まれへんかったけど。
でもオレは、その子の姿も名前も知っとって。
ずうっとオレん中には、生まれてへんその女の子が居るンです。
もしかしたら全部思い込み言うか気のせいかも知れんけど。
ちゃんと、その子のコト知ってご供養出来たらて思おとって。
ニュース探したンですけど、全然見つけられんで。
このまんま、あの子は無かったことになるンが苦しいて…」
オカシイ話と敬遠されないように、少々誤魔化しながら話すから。
宵自身も混乱しそーになりながらも。
「そんでその、せめて。
どぉやって過去の事件調べられるンか。
その方法だけでも知りたいンです、けど」
何んとか話をまとめて、宵がそぉっと顔を上げると。
さすがに五十嵐はちょっと驚きとか呆れを隠せない表情でも。
孝一は静かで落ち着いた目をしていて。
「優美さんが店に来てくれとった時も。
よぉ不思議な話聞かせてくれてました。
お寺は、生きとる人と亡くなった人が交差する所やから。
色んな想いや声とか、現実も現実に成らんかったコトも。
入り混じってあの場所に満ちとぉって」
「母さんも…」
ふと宵には、店でスイーツをつつく優美の姿が思い浮かぶ。
小夜と孝一相手に、怪談みたいに遊火の目で視たコトをお喋りして。
それはもしかしたら。
いつか必要になる相談相手として、宵とつなげてくれたのかも。
「社会を回して行くには、法律で白黒付けるしかナイですけど。
それだけで全部が解決するワケや無いですし。
誰もがスッキリ納得とは行かへんモンです。
聞えへん声・見えへん姿・届かんかった想い、そおいう
拾い切れへんコトでも、修行された方の耳になら届く言うンは。
解る気ぃします、オレには」
にっこりと孝一が微笑んでくれるから。
「孝一さん…」
ほっとした宵は涙がこぼれそうになるし。
「さすが孝一…」
惚れ直してまうワと五十嵐の目にハートが灯る。
そのまま抱き着いてきそーな五十嵐を押しやりながら
孝一はメモを持って来て。
「刑事裁判記録はさすがに閲覧可能者は限られますけど。
犯罪防止の目的としてオープンになってる情報もあるンですよ。
シンプルな内容だけですけど。
高山先生のお手伝いで、オレそおいうの見慣れとぉので探してみます。
中江さんが聞いたコトや気になっとるコト、教えて貰えますか?」
「そんな…エエんですか?
オレの話信じてくれるンですか…」
有難さと申し訳無さが入り混じって、宵が複雑な声になると。
何故か五十嵐がご機嫌顔になって。
「いやもお安心してエエですよっ。
今は情報の正確さや重さて、簡単に脚色されて広まってまうけど。
孝一はほんま優秀なんでっ!玉石混淆に惑わされんし。
淹れてくれるコーヒーは旨いし、もお最高の秘書いうか嫁さんい…」
「企業のコンプラ案件が専門の五十嵐さんには、別分野の話やし。
もおエエでしょお。
そろそろホンマに事務所戻った方が良えンちゃいます?」
少々冷ややかな孝一の視線は、五十嵐の胸ポケットに向いていて。
まるで溜まってる着信記録が見えてるようだった。
優美のアドバイス通りイチョウの周りを毎日掃除しているお陰か。
行き詰っていた状態やキモチを孝一に話せたからか。
宵の体調は安定してきた。
そうは言っても、バイト先で楽しそうに遊ぶ子供達を見てると。
やっぱりヨシダトワちゃんのことを思い出すし、後悔とか自責とか
いつまでも引きずってしまうけれど。
(せめて今目の前に居る子ぉ達とはしっかり向き合お)
そんな風に、自分に言い聞かせている。
焙煎所にお邪魔してから1週間。
(朝冷えて来たし。温いコーヒー淹れるんに豆買いに行きたいけど。
孝一さんから連絡無いンに行ったら、催促しとるみたいやしなあ)
キモチは立て直せたけれど、残念ながら状況は足踏み状態。
そんないつも通りの朝。
身支度を済ませた定常が声を掛けてきた。
「宵、今日はバイト無い日だろ?
体調悪くないなら、昼飯一緒に喰おう。
オレ午前中は市役所分館だから、13時頃ロビーに来てくれよ。
たまにはそーゆーのも気分転換になるだろ」
「わぁ確かに定常と外食久しぶりやぁ。
もお全然元気やで大丈夫。ありがと嬉しいわあ」
ついはしゃいだ声が出てしまって恥ずかしくて。
宵は慌てて言葉をつなげる。
「けど今めっちゃ忙しーんやろ?
もし会議が終わらんで食事出来んくても、気にせんでな。
オレ駅前で買物ンとか用事済まして帰るし」
(そおや、ついで言うカンジで孝一さんの店寄れるしな)
そんなコトをひとり思っていた。
そして10分前に市役所分館の自動ドアを通ったのに。
もう定常がロビーに居て、あれれ?と宵が焦ったら。
何故かその隣にはスーツ姿の熊も立っていて、宵は冷や汗。
「五十嵐さん…」
「どーもどーも1週間ぶりですねえ」
「本当に知り合いだったのか」
にっと明るい笑顔の五十嵐とは正反対に、定常は渋い顔。
そしてその声には少し怒気を感じて、宵はぎくり。
「宵、全部説明して貰うからな」
「定常…」
定常がそんな風になるのはすごく久しぶり。
宵は大学時代を思い出してしまう。
人の業を学び悟っている定常は、誰かに怒ることは少なくて。
修行が足りていないと感じる時だけ、自分にイラつくカンジ。
でもさっきの言葉は自分に向けられたものだから。
(オレ…定常を怒らせて貰うた…)
いっぺんに周りが暗く陰って、不安で心臓が縮こまる。
「昼飯は孝一んトコで良えですよね?」
五十嵐は当然という感じで歩き出すので。
宵は慌てて定常の隣に並んで、略装用法衣の袖を引っ張る。
「何んで五十嵐さんと一緒なん?」
「今週は高山先生が東京出張で、代理参加だそうだ」
くるっと向けて来た定常の顔は不機嫌そのもの。
「宵こそどーゆー知り合いなんだ?全然接点無いだろ?
いきなり軽薄そーなヘラヘラ顔で宵の名前聞かされて。
オレは…」
つい上がってしまったボルテージは、五十嵐にも届いてしまって。
薄っすら浮かぶ怒りマークを五十嵐は作り笑いで取り繕う。
「はははっなーんやオレの言い方が悪かったみたいで。
外越さんの保護いうか独占欲を刺激して貰うて」
「独占?どーゆー意味ですかっ」
「わっわっわっちょお待って~」
市役所分館は駅裏のビジネスビルが並ぶエリアに在って。
孝一のカフェは駅を挟んで反対側。
(うわ~早よぉ店着いてぇ~助けてえ~孝一さーんっ)
半べそ顔で宵は2人の間に割入って、店へ向かうしか無かった。
ランチのピークを過ぎたカフェはゆったりムード。
昼休み時間を気にしない馴染み客だけがコーヒーを味わっている。
3人が店へ入った時。
「いら…しゃいませ…」
さすがの孝一も意外そうな顔と声。
不穏な空気にも気付いたみたいで、一番奥のテーブルを案内した。
「孝一、オレらこれから昼飯なんやけど」
ご機嫌顔に戻った五十嵐が言うと、とりあえず孝一も営業スマイル。
「ランチメニューは全部出て貰うて。
何んか見繕ったセットにしても良えですか?」
その助けに感謝しながら宵は応えるけれど、定常はまだ不機嫌顔。
「ありがとおございます。
あの別にベジタリアン言う訳ちゃうんで、オレら何んでも大丈夫です。
豆販売以外にスイーツあるんは知っとったけど。
ランチもあるんですねぇ忙しい時にすみません」
「いえランチ営業も不定期なんで」
「今週はオレん為の営業やんなっ」
「いーえったまたまですっ」
「随分親し気なんだな」
先週と変わらない五十嵐と孝一の雰囲気に、宵は楽しくなったのに。
定常のイライラはMAXで、宵の手を握ると立ち上がって。
「帰るぞ」
「え?定常?どないしたん…」
「どうもこうもっ、宵こそ何を隠してる?
オレには言わないコトも、この2人には相談してるんだろ?」
痛い程の力で宵の手を握る定常は、もう怒ってなくて。
まるで哀しみを堪えるように苦しそうに歪んでいて。
つ、と涙がひとすじ落ちたのは宵の方だった。
(そおや定常の言う通りや…。
何ひとつちゃんと伝えてへん、誤魔化してばっかりや。
オレずっと逃げとる…)
何から逃げてるのかと言うと。
(もし。もし、話をして。
それ聞いて、定常までどっか行ってもぉたら…)
「せやかてオレ…定常が好きやから…
一緒に暮らせるよぉなったのに…嫌われたぁない、し…」
涙を堪えて宵は言葉を絞り出す。
涙は同情を買う演出みたいだから。
泣いたらあかんと表情も身体も必死で強張らせて。
「宵…」
照れ屋の宵から「好き」なんて言葉が出て来るのは珍しい。
しかもこんな人目がある場所で。
信じられないキブンで定常は固まるし。
さすがの五十嵐も孝一も目を丸くして、言葉が止まっている。
そこにぴょこっと小柄な女性が顔を出して来た。
それは店主の小夜さんで、孝一からトレイを取り上げると。
「狭い店内で熊と虎が睨み合うとったら。
せっかくのコーヒーが不味うなってまうワ。
孝一くん今日はもおエエから、この2頭連れ出してや」
小夜さんはビシっと店のドアを指差した。
そんなこんなで。
1週間ぶりに宵は焙煎所のソファにまた座っていて。
でも今回は隣に定常が居て、宵の手を優しく包んでくれている。
「ごめん、ほんまにオレ強ぉないから…」
「もういい」
言葉は素っ気ないけど、定常の声は落ち着いていて。
「オレもまあ、こんな性格だからな。
色々気になっても圧を掛けないで焦らないで。
宵から話して貰えるまで待つつもりだったんだ。
でもあの弁護士の、何んていうか軽さとか余裕っぷりが…」
はぁと深く一息つくと。
「オレもまだまだ修行が足りない」
「オレもや」
孝一と五十嵐はキッチンで昼食を用意してくれているから。
リビングは2人きり。
定常と宵はこつんと額を合わせると、そっとキスした。
まあもう色々バレてるとは思うけれど。
ボリュームサンドイッチをメインにサラダやスープと。
オシャレメニューは定常と宵には珍しくて。
材料や調理方法を聞きながらの美味しい食事が終わる頃には。
すっかり4人の雰囲気は和んでいた。
そして食後のコーヒーを淹れると、孝一は茶封筒を持って来た。
「情報の出どころまでお伝え出来へんので。
オレが編集した内容で申し訳無いンですけど。
中江さんから伺った情報で、5年前・場所・ヨシダという苗字
と事件の概要から多分この件やと思います」
緊張で少し震える手で宵が受け取ると。
定常も覗き込んで来て。
「オレも見て良いか?」
「うん、オレひとりでよお見ンかも」
少し過去になっていた悲痛な場面が宵の頭に蘇って来るけれど。
触れる膝や手から定常の体温が伝わって、宵を支えてくれた。
それはヨシダマヨという風俗嬢が交際相手を殺害した後、
自殺未遂で発見された事件。
ただその自殺方法が異様で。
臨月を迎えた自分の下腹部を刃物で切りつけるという行動。
自分の命を絶つと言うより。
守るべき自分の胎児への暴力であり、2人目の殺人行為では?
そう注目された事件だった。
最終的には、錯乱状態の自傷行為と見なされ懲役10年の判決。
文字にするとA4用紙1枚。
あんなに重く胸が潰れそうな出来事だったのに。
薄い紙のはかなさで、宵は頭のてっぺんからヒンヤリしてしまう。
言葉が出て来ない宵の冷たい手を、定常がぎゅっと握る。
「大丈夫か?」
「あの子の命も名前も…何処にも無いンやなあ…」
「何んて名前だ?」
「ヨシダトワちゃんて女の子やった」
「オレも覚えておく」
「うん…ありがと。
孝一さんもホンマにありがとおございました。
オレがあのまま抱えとっても、よぉこんな調べられンかったです。
ちょおっと…まだキモチが追い付かんけど。
定常と2人で精一杯ご供養させて貰います」
ぺこりと宵が頭を下げると。
ずっと黙ってコーヒーを啜っていた五十嵐が口を開く。
「知り合いから聞いた補足いうか蛇足いうか。
事件そのもんに直接関係は無いンで、オープンにはなってへんけど。
その事件があったアパートは違法風俗店が用意した場所で。
行き場の無い子ぉを軟禁して働かせとったそうです。
せやから事件発覚したお陰で、その子らぁも保護出来て。
それでまあチャラに出来る訳や無いけど。
救えへんかった命があるにしても。
救えた命もあったと言えるて、オレは思います」
その言葉で。
暗く澱んだゴミだらけの部屋を、宵は思い出す。
ヨシダトワの枝みたいな身体は微かに動いただけだったし。
その身体さえ存在し無いコトになったけれど。
上書きされた現実では。
別の部屋のドアが開かれ、外の光と空気が流れ込み。
警察官や救急隊員の手が届いて。
助けを求めていたいくつかの命が救われて。
今は何処かで平穏に暮らせてるかも知れない。
そんな想像をすると。
初めてヨシダトワに、しー&くーの笑顔が重なって見えて。
また涙が零れてしまう宵は、ただ何度も頷いた。
そんな宵の前に、孝一がティッシュBOXをそっと置いてくれて。
ついでに、湯気立ち昇るカップもすっと進められる。
「これまだ店に出してへんのですが、ピーベリーいう豆なんです。
チョコみたいな風味と甘い後味なンですよ。
可愛らしい味わいなんで是非飲んでみてください」
「チョコ…」
その単語にまたしー&くーの姿が思い出されて。
(もしかしたら、ここまで全部つなげてくれたンやろか)
「せんせー何も知らないのね」そんな2人の声を耳元で感じながら。
宵は優しい甘味のコーヒーを味わった。
帰る時には珈琲豆以外にもたくさんお土産を渡されて。
ゴマ味噌ドレッシングや豆腐のパテに野菜のマリネ。
どれもカフェで人気のメニューで美味しさ保証付き。
地味な食卓が華やぎそう。
宵は大きな袋を抱えながら何度も頭を下げて。
定常も冷静さが戻っていて。
いつの間にか五十嵐と、協議会で検討中のコンプラ案件について
意見交換して盛り上がっていた。
そして2人が乗ったタクシーを見送ると。
五十嵐はむぎゅっと孝一を背中からハグして大きなタメ息。
けど孝一もソレは想定内で、それほど邪険にはしない。
「エエなあ、あーゆーの。
2人で同じ場所に帰るンやで。ええなああ羨ましいいいい!
早よぉ一緒に暮らしたいワ~」
「五十嵐さんは今それどころちゃうでしょお。
今回はまあ助かりましたけど。
自分の仕事が山積みやナイですか。まずはソレ片さんと」
「いやいやちゃうンや。
あのお二人さん見て思うたンや。
一緒に暮らすンはゴールや無うて、始まりなんやて。
暮らし始めたら今度は毎日やってく為に、
互いに押したり引いたりせんとならんし。
あんな風にこじれるコトもあるンやからなあ。
やっぱ少しでも早よぉ始めんと、なあ?」
「五十嵐さんはいつも押すばっかりやナイですか」
嫌味なはずの孝一の言葉はちょっと楽しそうで。
自分の胸元で交差する五十嵐の腕にそっと手を寄せて。
「明日の朝食用におかず詰めて渡すつもりやったけど。
全部中江さん達にあげて貰うたンで。
朝食はここで一緒に食べますか?」
「うわーーーーーっそれ最高やっ」
焙煎所には芳ばしい珈琲以外にも、甘い甘い香りが漂っている。
寺に戻って色々片付けて。
やっと定常と宵は大イチョウの下に2人で並ぶ。
もうすぐ日没時刻、それこそイチョウの背景は宵の空。
定常はイチョウのゴツゴツして太い幹に触れながら1周2周。
「普通の樹にしか思えないけどなぁ。
大きな木が異次元の入口になってる童話って有ったよな。
ナニカの国のアリスだっけ?」
「あーそおや、急いどるウサギとか笑う猫とか登場する話や」
「境目が在って、ソッチとコッチで時間の流れが違うって
設定は結構広く信じられてるのかも知れないな」
別に茶化す風でも無く、かと言って完全に納得してる風でも無く。
敢えて言うなら。
いつもと変わらず落ち着いて真っ直ぐな定常。
ごくりと緊張を飲み下すと、宵は思い切って言葉にする。
「定常は、オレのあんなあやふやな話を信じてくれるん?」
宵の方へ向けられた定常の表情は、夜の影ではっきりは判らない。
だからどんな言葉が返ってくるのかも判らなくて。
宵は両手をぎゅうと握りしめて、返事を待つ。
「そうだな…」
少しの沈黙の後やっと定常の声。
「このイチョウの向こうに別次元があって。
ソコでは時間の流れを遡って、現実を上書きすることが出来て。
今回宵が気に掛けてた、女の子の事件とか。
この間のIK教絡みの遺産相続トラブルとか。
別の結末が在ったと今ここで言われてもな…。
宵の言う通り、確認の仕様も無いし。
正直オレは、確証の得られない事柄を受け入れるのは苦手だ」
ひと言ひと言があまりにも定常らしい言葉で。
ちゃんと受け止めて考えてくれてるコトが、宵に伝わってくる。
「うん…そおやと思う…」
「ただ。
その不思議な話がイマイチ信じられなくても、何も変わらない。
オレにとって、宵は唯一の特別な存在だ。
宵が気になるコトがあれば知りたいし。
何んとかしたいと考えるなら協力したい。
誰よりも先に一番に頼りにして欲しい。
はっきり言って!
宵に好かれる為に、生活も仕事も気合入れてるんだ。
その為なら、信じ難いコトでも受け入れる。
もう一度言うぞ。
宵が一番大切だ。それはずっと絶対に変らない」
いつの間にか定常の声は宵の耳元に在って。
気付くと宵はしっかりと定常に抱きしめて貰っていて。
定常の肩越しに見上げるイチョウの葉の隙間からは星が煌めいていた。
それから互いの名前を呼び合って、肌を重ねて温もりを感じて。
愛おしく想うキモチそのままに熱く長い夜を過ごした。
だから翌朝、枕元でアラームが鳴っても宵は熟睡。
定常はアラームを止めてとりあえず身体を起こす。
隣の宵は唇半開きのままぐっすり眠っていて。
(可愛いな…)
そんな単語が湧いてしまって定常は頭を振る。
(いや…落ち着けオレ。
オレが浮かれたままだと、宵も日常に戻れない。
平常心平常心。何があっても変わらないことを見せないと。
とりあえず昨日のコーヒーを淹れてみるか)
スウェットに着替えた定常はやかんをコンロに置いて準備しながら。
緩みそーになる口元を噛みしめ我慢する。
宵とは大学からの付き合いだし、エッチも慣れた関係だけど。
昨日の夜は特別で。
あんな宵は初めてじゃないかと思うくらい、素直に甘えてくれたし。
宵の体調が良く無かったこともあって、そもそも久しぶりだったし。
恥ずかしく思うくらい我を忘れて定常は夢中になった。
(ダメだ…全然落ち着かない。先に読経しよう)
そう思い直して定常がくるりと振り返ると。
「ちょお危ないで、離れるンなら火ぃ止めやあ」
「うわああああっ!!」
背後に人が立っていて、定常は叫び声をあげてしまった。
その少し前。
身体は重くダルくて動かないけれど。
身に付いた習慣で宵はゆっくり目が覚めた。
「あさ…」
そして皺くちゃのシーツや放り投げられた布団と。
自分の身体を見て、頭が噴火する。
「わ、わわわっ」
(うわーうわーうわーっ!オレ昨日あのまんま。
そおや夕方のお勤めもせんと、定常と…)
恥ずかしさで思考回路もショートしそうになった時。
定常の大声が耳に飛び込んで来た。
「さだつねっ?どないし…」
パンツだけの恰好でヨタヨタでも精一杯急いで宵が台所へ行くと。
目を見開き青ざめた定常と、黒糸が絡み合ったモヤモヤが並んでいる。
「かあさん…」
振り向いた等身大サイズ黒モヤは。
頭部や指先は判別出来るものの全体的に落ち着かなくモヤって。
上半身を形作ったかと思うと崩れて黒ワンピースになったり。
見るからに姿をキープする力不足なまま浮かんでいるけれど。
そのボヤける輪郭からでも、宵には優美の存在が感じられる。
「ちょお宵、あんたの相手コレでええん?
偉そーなコト言う割には肝っ玉小さそーやで」
その声その口調もう優美そのもの。
つい宵はくしゃくしゃな笑顔になって手を伸ばすけど。
「あかん触らんとって。
もーコッチ側とつながるつもり無いねん、シンドイだけや」
「そんな…帰って来てくれたんやろ?」
「あほ。頼まれてもソンなコトせんわ。
イチョウに無理やり引っ張り出されたンや。
イチョウがあんたら2人を心配してなぁ。
どおや?これで納得したやろ?
イチョウを真ん中にこの辺はまぁヤヤコシイ所なんや」
めちゃめちゃ大雑把な説明をしながら優美の白い指が□を描く。
ただ、その□が現実的にどれだけの面積なのかは不明。
それでも半分黒モヤな優美の顔にジロリと睨まれると。
定常はもう認めるしかなくて。
キっと強い瞳で優美を睨みつけると。
宵の腕を引っ張って抱き締める。
「宵はココに在るんだよな?
アッチ側とか、上書きとか…無くなったりしないよな?」
「う、うん」
たぶん、と言う言葉は飲み込んで宵は頷く。
「定常と一緒にココで生きて行く」
宵も定常の背中に腕を回してしっかりと心を決める。
そんな盛り上がった場面なのに。
いつの間にかふよふよと黒モヤ優美は移動して。
棚に仕舞われたコーヒー袋を引っ張り出してる。
「これ小夜さんとこの?」
「そおやで。昨日頂いたばっかで新しいで、飲む?」
「あほやなあ、この状態で飲めるワケ無いやろ。
けどまあ香りなら楽しめそーやし、とりあえず淹れて貰おか」
「うん!すぐ」
小さな電動ミルを出してセットする宵を、浮かぶ優美は見下ろす。
輪郭ははっきりしないのに。
定常には優美が微笑んでるように見えた。
「イチョウが中江のニンゲンを気に入っとるから。
あんたに限らず。
繰り返し昔の命を持って来て縁が絶えンよーにして来たんや。
それてあんたらが言う輪廻とかと似とるンちゃう?
命が奪われるとか上書きされるとか。
別にそお大したコトや無うて、何時でも何処でも起こっとぉコトや。
命や出来事が在るから、流れとるワケちゃう。
流れン中で命が生まれたり消えたりしとるだけや。
あんたら2人が出会うてココで暮らすンもその程度のコトやし」
挽きたての豆を膨らます為のお湯を数滴落とすと。
ふわあと芳ばしい香りが台所に広がって。
黒モヤ優美は満足げに、蕾が開くように広がった。
「まあイチョウの□ン中に居ると。
何んかタマタマ見たり聞いたりするかも知れんけど。
2人で仲良ぉ乗り越えて行き。
それって割とフツーに生きるンと同んなじやろ」
優美の言葉は段々笑い声みたいになって、黒モヤと一緒に霧散した。
「母さん?」
「せっかちだな、まだ淹れてる途中なのに」
いつもの朝の場面に巻き戻されたように宵と定常は顔を見合わす。
ドリッパーから抽出された雫が小さくなってきて、そろそろ完了。
「カップ3つにしてもエエ?」
「そうだな。きっちり三等分にしないと文句言われそうだ」
ぷふっと笑い顔になって2人は軽くキスをする。
きっとこれからも毎日変わらずに。




