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『潰れかけ喫茶店ごと異世界転移したので、黒猫と静かに営業していたら最強の休憩所になっていました』  作者: CASCADE


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第九十七話 雨上がりの虹と涼風




しばらく降り続いていた夕立は、

やがて勢いを弱め、静かな小雨へと変わっていった。


雲の切れ間から、夕暮れの柔らかい光がすうっと差し込み、

濡れた石畳をキラキラと照らし出す。


「雨、上がったみたいだな」


朔夜が窓を少し開けると、

雨で洗われた澄んだ空気と、ひんやりとした心地よい涼風が

店内にすうっと流れ込んできた。





「にゃぁ……!」


窓辺に座っていたクロノが、嬉しそうに短く鳴いて

窓の外の空をじっと見上げている。


「ん? どうしたんだ、クロノ」


朔夜もクロノの目線の先を追うように見上げて、思わず息を呑んだ。

茜色に染まり始めた東の空に、

くっきりと大きな七色の虹がアーチを描いていたのだ。


「すごいな……綺麗な虹だ」





日中の猛烈な暑さが嘘のように、

通りには涼しい風が吹き抜け、家路につく人々も

足を止めて空の虹を見上げている。


濡れた街並みと、澄んだ夕空に架かる虹。

異世界で初めて見るその美しい景色に、

朔夜はクロノと一緒にしばらく見惚れていた。


隣でクロノも、金色の瞳を丸くして

静かに空を見つめている。





「よし、空気もすっかり涼しくなったし、

夜の営業に向けて温かいお茶の準備でもしようか」


朔夜が声をかけると、クロノは満足そうに

「にゃん」と喉を鳴らして窓枠からひらりと飛び降りた。


夕立が洗い流してくれた夏の暑さと、空に残る虹の余韻。

黒猫亭には、穏やかで涼やかな夕暮れの時間が

優しく満ちていくのだった。

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