第百八十七話 永久の架け橋と、最高のフィナーレ
カチリ――。
静かな音とともに羅針盤の針が完全に固定されると、店内を包んでいた黄金の光はゆっくりと収まり、店内の空気はこれまでになく清らかで、どこまでも穏やかなものへと変わった。
「……空間の揺らぎが、完全に消えました。それどころか……」
アルテが立ち上がり、自分の手をじっと見つめながら呟く。
「天空都市とこの街を結ぶ次元の回路が、まるで昔からそこにあったかのように、しっかりと、永遠に安定したのを感じます。もう二度と、扉が閉ざされる心配はありません」
「本当か、アルテ! じゃあ俺たちは……いつでもサクヤのメシを食いに来れるし、天空都市へ遊びに行くことだってできるってわけだな!」
ガルドが歓声を上げ、隣に座る天空都市の住人とガシッと固い握手を交わした。
「ええ、もちろんです! 黒猫亭が……サクヤ殿とクロノ殿が作ってくださったこの『温もり』が、世界を繋ぐ永久の架け橋となったのです!」
◆
湧き起こる大きな拍手と歓声。
セレスとレインも感無量の表情で、互いに顔を見合わせて微笑み合っている。
「サクヤさん……本当におめでとうございます。お父様とお母様の夢が、ついに叶いましたね」
「ありがとう、セレスさん、レインさん……。みんなが居てくれたから、ここまで来られたんです」
朔夜が胸いっぱいの感謝を込めて頭を下げると、カウンターの上から誇らしげな声が響いた。
「みぁ〜〜〜っ!」
クロノが胸を張り、店内のみんなに向かって「僕たちの勝利ニャ!」と言わんばかりに可愛らしく咆哮してみせる。
「ははは! クロノも大活躍だったな! よし、黒猫亭と、最高の店主と相棒に……乾杯だーっ!」
「「「乾杯―――っ!!!」」」
◆
歓声と杯の重なる音が店内に響き渡り、大感謝祭は夜遅くまで最高潮の賑わいを見せた。
美味い料理とあたたかな酒、そして笑顔。
かつて孤独だった喫茶店は、今や無数の次元と人々の想いを結ぶ、かけがえのない大いなる交差点となったのだ。
◆
宴が終わり、客たちが名残惜しそうに、けれど満たされた笑顔でそれぞれの帰路についた後。
静けさを取り戻した店内で、朔夜とクロノは新しく掲げた手彫りの看板の下、夜風に当たっていた。
「終わったね、クロノ」
「ふにゃ〜ん……」
やり切った満足感からか、クロノは少し眠そうに目を細めながら、朔夜の足元にすり寄ってくる。
「両親が遺してくれたこのお店……最高の場所になったよ。でもね、僕たちの日常は明日もこれからも、ずっと続いていくんだ」
朔夜は腰を落とし、愛おしい相棒の体をそっと抱き上げた。
「明日もまた、お腹を空かせた旅人さんが来るかな?」
「みぁ〜っ」
『当たり前ニャ。僕たちの美味しいご飯を待ってる人が、世界中にたくさんいるニャ』
クロノの鳴き声に、朔夜は心からの笑顔を浮かべた。
「うん。これからも一緒に、美味しい料理を作っていこうね、クロノ」
◆
夜空には満天の星が輝き、黒猫亭の看板を優しく照らしている。
次元を越える温かな喫茶店『黒猫亭』。
ドアベルのあたたかな音色とともに広がる物語は、これからも永遠に、人々の笑顔とともに紡がれ続けていくのだった。
(「黒猫亭」―― 完 )
最後まで読んでくださりありがとうございました!
この小説は私自身初めて書いたもので、手探りで書いたものになり、小説としては読みにくいものだったな…と自分でも思っています(;'-')あの話も、この話も入れたいってなってしまい、諦めた話もありますが、何とか完結させることが出来ました!
本当にありがとうございます( . .)"




