第二十三話 魔法の授業はハプニングだらけ?
魔法使ってみたい!( ゜д゜)、;'.・☆
「むむーーーー?」
「マリー?わからないですか?」
「わかんない。でも、もう少しやってみる」
私達は今、楽しみにしていた魔法の授業を受けている。今日の課題は、水蒸気を固めて、お椀型にした手の中に、水を作り出す事。
でも………できない!!
授業が始まる前、私は先生に頼んで聖女としての能力を一切使えないようにして貰った。
何かのきっかけで聖女としての能力を失ったときにも、魔法が使えるように。
それに、能力を持っている私は教わらなくても全て出来てしまうのだ、それでは習う意味がない。
…………でも、それがいけなかったのだろうか。私の手からは、水滴ひとつも出なくなっている。
隣で魔法を使っているイブは、手の中に入りきらなくて、服が濡れてしまったと先生に乾燥さしてもらってたのに。
できない、できない、できない、できない!
「アーク!」
やけくそになって、水魔法の一番基本の呪文を唱える。やっぱりそれでも出ないか。
もしかして私、聖女の能力がなければ、ただの萌葉なのでは………?
むむむむむむーーー。信じたくない!私の体はマリアだもん!大丈夫、やればできる子だ!
「アーーク!!」
でない。
「アーーーク!!!」
でない。
「クリスティさん。お静かに。」
そう私に忠告したのは、魔法授業の顧問、ロシャード先生だ。
白髪頭をお団子にして、片眼鏡を着けた、いかにも魔法できます!みたいな女の先生。
「スミマセン。」
小さな声で謝る。
私のできなさをみんなが笑っているように感じる……
「はぁー、君が言う事聞いてくれないから私が笑われちゃうんだよー、お願い!私、お水が出したいなぁ?」
手に向かって、そう話しかけた。
昔からの、なんとなくの癖なのだ。
昔は、こうやって何かに話しかけると、神様がお願いを聞いてくれるんじゃないかとか、病気が治るんじゃないかって思っていた。まあ、神様があれだと知った瞬間から、そりゃ叶わんわと諦めたけれど。
「アーク」
小さな声で、出てって願いながら目をつぶる。
なんだか手が重たくなって、湿って来たなあと思って目を開けると………
「出た!成功した!」
「マリー!おめでとうございます!」
イブの方を見て、やった、やったあ!と盛り上がっていたのだが。
「わ!ちょ、冷た!」
「ま、マリー!早く止めてくださいませ!」
部屋中の水蒸気が私の方に集まってくる。
とうとう手に収まりきらず、近くの床や、机、私自身も大雨に降られた後のようにびしょ濡れ、水溜まりまでできてしまった。
それでも、止まらないものは止まらない。
「「「キャーーー!!」」」
まわりにいた子達が急いで私から離れる。
私も逃げたい気分だけれど、どうやら私についてくるようなのでどこに行っても同じだ。
「イブ!私から離れて!イブまでびしょ濡れになっちゃうから!」
「でも!」
「いいから!」
私の声に渋々頷いてイブは離れる。
先生は、先生は何を……
「イレース!!クリスティさん、イレースと唱えてください!!」
先生が必死に魔法の効力を消す呪文を教えてくれている。先生も唱えてくれているけれど、やはり私の使った魔法は私にしか解けないようだ。
結局、止めに入った先生までびしょ濡れになってしまった。先生は諦めて生徒たちを離れた場所に移動させる。そうしている今も、水蒸気が段々水の塊になって、私のもとへ落ちていくのだ。
「い、イレース!」
『えー、なんで?やめちゃうの?』
可愛らしい男の子の声がする。
「え、誰!なんの声!?とりあえず、やめるの!」
『そっか……止まれ。僕は水の妖精さんさ!おねーちゃんが面白かったから、せっかく協力してあげたのに、なんでやめちゃうの?さっきはお水出したそうにしてたよね!』
水の妖精さん……「止まれ」の声で、ピタリと水がとまる。
やったぁ、止まった~!
それにしても、可愛い。協力してくれたのか。
「少し出て欲しがっただけだよ!こんなにいっぱいはいらない。でもありがとう、助けてくれたんだね。」
『そっか!勘違いしちゃった、えへ。怒ってない?』
「怒ってないよ、助かったな。名前はないの?水の妖精さん。」
「うん!僕はまだ誰の専属でもないからね!」
そう言って目の前に、ポンっと出て来たその姿は、とーっても愛らしい、小さな妖精さんでした。
水を固めて髪の毛にしたような髪と、同じく水を固めて羽にしたような、小さな羽。
「可愛い~っ!!」
思わず出てしまったその言葉も、仕方がないと思います。
「そう?僕かわい?へへ、おねーちゃんの専属になってあげてもいいよ!」
「本当~?じゃあ、なってもらおうかなぁ?」
「うん!じゃあ僕に名前つけて!」
名前………名前かぁ。何だろう、水、噴水?ふんすい……すい?
「スイ!君の名前はスイでどう?」
「やったあ!僕の名前はスイ!今日から、おねーちゃんの専属妖精だよ!」
………これってもしかして、スゴいことでは?
ていうか、これってみんなからすれば、マリア・クリスティ、3人目の加護精霊なのでは?
「マリア様……すごいですわ!」
「マリア様、お美しいだけでなく、気まぐれな精霊にもお優しい!」
「気まぐれな水の精霊にマリア様が好かれたぞ!」
「マリア様、3人目の加護精霊だ!」
教室中から大きな拍手と、歓声が巻き起こる。
うひゃー、やっぱりこうなるか。
「ありがとうございます。」
私は猫かぶり発動で、ニッコリと微笑みながら「ありがとうございます」と、お辞儀した。
イブが、大丈夫でしたか?と心配そうに駆け寄ってくる。大丈夫だよ、と答えようとしたところで……
「クリスティさん。少しついてきなさい」
眉間にシワを寄せて、はぁー、と溜め息をついた先生が威厳のある声で言う。正直凄く怖い。
「は、はいっ……」
怒られるのは明確だろう。
教室はびしょ濡れ、先生も、私もびしょ濡れ。
気まぐれな水の精霊を加護精霊にしてしまって、勝手に解決した気になっているけど何も解決していないのだ。イヤだぁ。
「それから。スイさん?でしたっけ。あなたもきなさい。」
「いやだ!僕行かない!おばさんの事は好きじゃないのさ!僕、おねーちゃんの言う事しか聞かないもんね!」
うわぁぁぁぁあ!スイ!何いってんの!
そんなところで気まぐれ発動しないでよ!!
「スイ!一緒にきてください!あと、お願いだから、先生の言うこともしっかり聞いて!」
「はーい。いいよ、一緒にいったげる。」
先生は、ますます眉間にシワを寄せて、くるりと私たちに背を向け、歩いていってしまった。
「マリー、頑張ってくださいませっ……」
「マリア、落ち着いてな。」
「うん……」
イブとエドワードに応援され、クラスメイトは私の方を心配そうに見てくれている。私は勇気を出して先生のあとを歩いて廊下に出た。
アイザック早く片付けたいけど、クラスが違うので出せない……
(自分で出したくせに、早く片付けるとか言うなし)Σ⊂(゜Д゜ )




