赤いハンカチ
進んでいくと小さな村が見えて来る。
話し声が聞こえ、耳を澄ます。
「人狼の種族の長としてお前には早く婚約して欲しいのじゃ。だから……」
「はい、分かっております」
あれ、ロウさん?え、婚約!?人狼!?意味がわからない……。
頭が回らなくなり足元の注意がおざなりになった私は恐怖であとずさり、瞬間、森に枝の折れた音が響く。ざわざわと声が聞こえ始め、見付かると覚悟した私は誰かに引っ張られる。……ロウさんだった。
「……どういうことですか、人狼だとかなんとか…………」
小さな小屋へ連れて来られた私はロウさんに質問責めをする。が、返ってきたのは期待したものではなく優しい笑顔で
「君は知らなくていいんだよ。」
……唖然とする私をよそに話を続けるロウさん。私には全く入って来ない。壁を造られて胸が痛む。そんなとき、外から声が聞こえてくる。あいつらだ、食べられる…そう考え始めると震えが止まらない。
「こっち」
景色が無くなり暗闇になったと思ったら狭いロッカーの様な場所に押し込まれた。……ロウさんとの距離が近くて呼吸が聞こえる度に体が熱くなる。嬉しい様な恥ずかしい様な……と、悶々としていると声が止んだ、行ったようだ。少し惜しい気もするけど、不謹慎だよね。
「いい?これから言う場所へ走っ……」
言い終わる前に扉が物凄い音を立てあいつらが入ってくる。私の所を見ている、食べられる……
「ずるいですよ~、俺らまだ彼女すら居ないのにこんな可愛い子と~」
「……え?」
それを聞いたロウさんは顔を赤くしながらも目の前の人狼に弁解を始める。
「ばっ!ちが……お前らがすぐ人間の女性を見かけると行動に移すから、まだ年齢が低いこの子を守ってやってたんだ!」
私の頭がクエスチョンマークでいっぱいになると説明を始めてくれる。人狼は食べ物としては人間を食べない、ということと人間が恋愛対象という事を。
「なんだ、そういうこと!……食べ物として食べない?じゃあ何として食べ……」
「……まだ、早いよ。」
とそっぽを向き言い私の口を塞ぐ。……何がだろう?
「あ、そういえば……」
あのハンカチをロウさんに渡す。これが元の目的だもんね。
「あ、ありがとう、無くしたと思って……」「赤いハンカチって……もしかして?」「プロポーズの?」
周りの皆がニヤニヤと笑いながら私達を交互に見ている、何処か楽しそう……?
「違う!落としたのを拾って貰ったんだよ!!」
なんかロウさん苦労人だなぁ、なんて人事の様に考えているが私の事も言われてるのだろうか…面倒そうなので関わるのはやめよう。って帰れるかな、私……。
「もういっその事、ここ住んじゃえばいいのに!」
え、心読まれた?なんて思う位ナイスタイミングで言われる。
「そちらがいいのであれば、ですかね」
……言わない方が良かったかな、凄い目が輝いてるんだけども……。
そして、あれよこれよと話が進んで行き私の歓迎会が行われることになった。
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「ロウさん、少し聞きたい事があるのですが……」
歓迎会も終わりに近づいた頃、ロウさんへ再び質問責めに合わせるため呼び出す。
「貴方の名前を教えてくれませんか?」
少し悩んだ後にいつもの優しい笑顔で答えてくれた。
「……いいよ、俺の名前は」
耳元で聞こえる彼の声に胸が高鳴る音が聞こえた。




