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ストーカー・ラブ  作者: sitis
プロローグ
5/68

到着

真子かわいいよ真子

「ここが俺たちの暮らす家か…」

新幹線から電車に乗り換え、さらに船に乗り換えた挙げ句30分ほど歩いてようやく辿り着いた我が家。ぶっちゃけド田舎だった。

朝八時に出たというのに、もう日が傾いている。

「…どうする、真子」

「とりあえず入ってみましょうよ!」

興奮ぎみに真子が答える。でも長い間入ってないんならめっちゃ汚いんじゃないだろうか。

がちゃり。

おもちゃのような鍵を開け、一度躊躇ってからドアを開ける。すると…

「うわ…」

「わあ…」

薄いカーテンから差し込む夕陽。

木製のシックな階段。

整頓されたリビング。

いい部屋だった。ホコリもなぜかそんなに溜まってない。

…でもやっぱり気になるな。

ダッシュして家中の窓を全開にする。これは必要なことだ。長い間放置されてた空気なんて何があるかわかったもんじゃない。

換気扇も回して一安心。していると、真子が色んな所を見てはしゃいでいるのが見えた。

「わ、わ、すごい!いい部屋です!」

やべえすっげえかわいい。

「いい部屋だな」

「はい!ここが私たちの愛の巣になるんですね!」

愛の巣て。

「…そうだな。さて、じゃあ晩メシはどうする?どっか食いに行くか?それとも作るか?ちなみに、俺は家事のスキルは無いぞ」

「もちろん知ってますよ。でもまだガスと電気が復活してないので、食べに行きましょう」

「あ、そうか」

あんなに急に決まったのだ。ライフラインが水道しかない。どうしよう。

「ちょっと待っててくれ」

ポケットから携帯を取りだし、親父に電話をかける。

プルルルルル、プルルルルル、ガチャ。

『もしもし、着いたか?』

「ああ、お陰様で、まだ電気もガスもないこの家に着いたよ」

ピシッ。

空気が凍る音がする。

「大体何日後に復活する?」

『あー…早くて三日後くらいかな』

「そうか、そりゃ大変だ。きちんと準備ができてから送り届けられなかったこの大変さ、親父は分かるか?」

『わ、ワカルゾー』

「そうか分かってくれるか。じゃあ詫びに何をしてくれるのかな?」

『…電気ガス代払います』

「ちょっと足りないな。もっと反省を込めて!」

『…電気ガス水道代払います』

「まだだ!食費もだ!」

『いい加減にしろよクソガキ』

あ、キレた。

「じゃ、電気ガス水道代は頼んだからな」

『待て、まだ言いたいことは…』

プツッ。ツーツーツー。

「…電気ガス水道代は快く引き受けてくれたぞ。俺たちが払うのは食費だけでいいそうだ」

「…亮太くんって結構鬼畜ですよね」

そんなツッコミは聞こえなかった事にした。


「…じゃあまず、必要なもので家に無かったものはあるか?」

夕食後、家に帰ってきた俺たちは、会議を開いていた。議題は『こっちに移ったことの問題点』。ちなみに、風呂は水のシャワーを浴びた。

「特には無かったです。電気とガス以外では」

「じゃあそっちは大丈夫か…ああ、そうだ。こっちの教科書類…まあ、学校で貰うか。じゃあ当面必要なものは無いな。貯金も十万ほどあるし、今月分の食費には充分だろう」

「え、私も払いますよ」

「いや、いい。その代わりと言ってはなんだが、家事全般を頼む。さっきも言ったが、俺は家事のスキルが無い。俺はバイトをするから、家事は任せた」

その俺の発言に、真子はしっかりと悩んでから、「分かりました…」と頷いてくれた。

「よし、じゃあ明日は学校に転校の手続きをしに行くから、今日こそ早く寝るぞ。真子の部屋は向こうだからな。んじゃ、おやすみ」

…と早口で捲し立てて、イベントを回避しようと頑張ってはみたが…

「い、一緒に寝ましょう!」

やっぱり無理なようだった。

「…いや、俺も男なわけだ。正直、お前の無防備な姿が目の前にあったら何をするかわからん」

「大丈夫です!そういう妄想をしながらその…自分で…慰めて…きましたから!」

なぜこうも普通に言うのだろう。

「…それにだな。俺だってお前と同じで自分で慰めることもあるんだ。お前と寝るということは俺もそれができないわけだ」

「私で鎮めればいいじゃないですか!」

「…ぶっちゃけ恥ずかしい」

「私もです!」

だろうね。なんでこうも押しが強いんだろうか。

「…わかったよ。ほら、来なさい」

「わーい♪」

先にベッドに入り、真子に手招きをする。…まあ、こういうのも悪くないか。

真子は喜んでベッドに入り、ぎゅーっとしがみついてきた。

「亮太くんの感触…亮太くんの匂い…亮太くん…亮太くん…♪」

…このちょっと変態だけどかわいい彼女と寝るのは実際幸せだった。

お読みくださりありがとうございます。

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