夏の算段2
どんなにぐうたらと生きていても、時間は平等に過ぎゆくものだ。俺達の夏休みも半分を過ぎ、終わりの方が近くなってきた。今日は男三人、時和の家に集まっていた。
時和と小林は実家から大学までが遠いので、近くのアパートに間借りをしている。小林の部屋は画材が部屋に散乱し、絵の具の匂いのようなものが充満しているが、時和の部屋はただ汚いだけだった。
「これが彼女のいる部屋かよ。」
小林がマンガ雑誌で見えない床を自分のスペース分片づけながら言った。
「すまん。ま、適当に座ってくれよ。」
俺はベッドの上の洋服たちを軽く畳んで枕に放り投げ、そこに陣取った。時和がスナック菓子を開けて、俺たちの前に置く。そうして会合が始まった。時和が菓子を食べながら、かつての幸せな思い出を思い出すようにしみじみと言った。
「もうすぐ夏も終わりだな。」
「そうだね。藤崎はどうだった?今年の夏は。」
「ああ。楽しかったよ。」
あっという間に過ぎ去った夏を顧みた。暇というのはなんと素晴らしいものだろう。何も成しえなかった空白の時間が、日々のせせこましい日常の傷を癒してくれていた。
「あ、そういえばさ。これ、行かない?」
「なんだよ。」
時和は小林の手からチラシをひったくると、しげしげと眺めた。見終わった彼は俺に回す。
「夏祭りかあ。いいな。行こうぜ。」
チラシを見ると今週の土日に、近所の神社でお祭りするようだ。お祭りなんていつぶりだろう。小学生以来だろうか。久しぶりの打ち上げ花火に心が踊った。
「そうだな。行こうぜ。」
小林の顔がぱっとほころんだ。その拍子にずれた眼鏡をかけなおしていた。時和が冷蔵庫に向かう。
「まあ、後のこともあっさり決まったし、飲もうや。」
「おい、時和、まだ昼だぜ?駄目人間かよ。」
「そうだよ。藤崎。俺は駄目人間だあ。あ、そうそう。」
彼は自分のカバンから、包みを取り出した。
「借りてきたんだよ。『血みどろ男爵』シリーズと、『ゾンビクライシス』シリーズ。一緒に観ようぜ。」
「お前、大丈夫になったのか?こういうの。」
「指の隙間から観るから大丈夫。」
「おいおい。」
「よし、小林。音頭取れ。」
「かんぱーい!」
缶のタブを引く景気のいい音がして、酒盛りと映画鑑賞会が始まった。ゾンビクライシスのタイトルの文字がテレビに浮かび、ゾンビの頭から血が噴き出した。時和も負けじと発泡酒を吹き出した。




