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相談

「こんにちは。戸隠(とがくし)さんいます?」

多嘉良が戸隠を尋ねると、丁度狸族の穂高(ほだか)

カラス天狗族の愛鷹あしたかが来ていた。


「よう、兄弟」 「兄弟いうなっ」

「腹の出具合が兄弟」にこにこと、お腹を指さす穂高だった。

「はいはい。そこは否定しません」


「いらっしゃい。何かありました?」

戸隠が陶器に入った、できたての甘酒を持って奥から出てきた。


戸隠は穂高と村の人々と共に、小規模だが酒を造っている。

国の許可は…。この村に日本国憲法や法律は通じない。


「おーい」と和室の戸が開いて、村の老人が手を挙げる。

「源太さんも。お茶会ですか?」


「甘酒の味見会です。どうぞ。味見してください」

戸隠は多嘉良に甘酒を差し出した。

「おおー。いつもありがとうございます。

実は聞きたいことがありまして…」



「狐族の末裔が…。美和嬢が狙われている?」

狐族の末裔と聞いて戸惑う戸隠だった。


「美和ならそこらの男には負けないくらいに鍛えてあるぞ」

愛鷹が驚くことを多嘉良に告げた。

「はぁ?一体いつ?誰が?」

多嘉良がヘンな声を出した。


藤子(とうこ)に頼まれて6つくらいの時から、戸隠が」 

「愛鷹が」

お互いに指さす愛鷹と戸隠だった。


「わしもー」と、源太じいさんが楽しそうに手を振る。

「源さんもかっ」


「愛鷹の剣に戸隠さんの鉄扇に、おまけに旧海軍仕込みの合気道とか。

…犯人、可哀想」多嘉良がぶははっと笑う。


「だが美和には実戦経験がない。

あってもせいぜい痴漢撃退くらいだ」

愛鷹が問題を指摘する。

「あ、それはまずいかもな」多嘉良の顔が一瞬、真剣になる。


「それで、わたしにお話しが?」戸隠はいつも丁寧だ。

「そうだ。藤子さんの話によると、相手は耳と嗅覚がいいらしい。

身体能力は不明。他に狐族の特徴で気を付ける事はありますか?」


「そうですね、我々は遠くの音が聴こえますが、地下の音も聴こえるんです。

地面の下にも耳が効きます。トンネルとか、地下街に隠れてもわかります。

あとは妖術が人間に継がれるのはまれです。

わかっているのは安部晴明さんくらいでしょうか」


「わかりました。そう伝えます。ありがとう」

去って行く多嘉良を見送って

「狐族か…」とつぶやく戸隠。


「美和が心配か?」 

「まあ…。狐の末裔とやらに興味はある」

山の向こうを見ながら戸隠は答えた。



「お疲れ様でした。お先に失礼します」

お菓子屋さんでのバイトを終えて、美和は店を出た。


お菓子におつまみに、お年寄り用に羊羹も買ったし

行動食も安く買えたし、バイト割引万歳~。

夏休みのうちにもう一回村へ行こうかな。


そう思って、ほくほくしながら夜道を歩いて行った。


首から下げた母のお守りのガラス玉が揺れる。



坂を上ると広い公園の近くに出る。

午後8時半。街灯の明かりが植え込みを照らしている。

住宅地でもあるのだが、人通りはない。


…ペタ    …ペタ  ペタ。


何者かが美和の後をつけてくる。

その足音が不気味に響いていた。


読んでいただき、ありがとうございます。

引き続き、楽しんでいただけますと嬉しいです。

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