エピローグ
山のバス停の終点には朝方に着いた。
空が紫色とオレンジと、都会では決して見る事ができない色に
染まっている。
「送ってくださってありがとうございました。
先に村へ帰って知らせてきます。皆、歓迎したいでしょうから。
服も多嘉良さんに返さないと」
そう言って戸隠は飛ぶように森に消えた。
「え!?あの服多嘉良さんの?」
「ああ、見たことあるって思ってたわ」
「多嘉良さん、本当にスリムだったんだぁ。
…イケメンだったって本当?」
「さあ、昔のことは忘れたわ」
*
「美ぃ-和ぁぁ。俺があれほどスルーとぉぉ」
村に着くと、多嘉良がこぶしを握って出迎えた。
「ごめんなさい ごめんなさいっ」
頭を抱えて小さくなって謝る美和。
「…んまぁ。無事でよかったよ」
多嘉良はこぶしを広げて、美和の頭をなでた。
*
「アヤカシの事はよく知っているのに、戸隠くんに狐の事を
聞きにいったんだって?」
縁側に座って、藤子が多嘉良に問う。
「まあ、確認な。でもわざわざ都会まで行ってくれるとは」
「いい子だわ。彼になら美和を嫁にやってもいい」
「おいおい」
梓と早瀬にお菓子を届けに来た美和が盛大にくしゃみをする。
「誰か何か言ってるー」
*
「あ、いたいた。藤子ちゃーん」と源太をはじめ、
村人たちが神社へやってくる。
「戸隠さんから聞いてきたのよー。久しぶりねー」と大歓迎。
「みなさん、具合が悪いところがあったら言ってくださいね」
「大丈夫、大丈夫。みんな元気で長生きよー」
*
「あ、愛鷹―。目を診せなさい」
通りかかった愛鷹を捕まえて、藤子が眼帯をめくる。
「変わらないよ。何ともない」 「いいからお診せー」
抵抗する愛鷹としがみつく藤子を
「姉と弟みたいよねー」「うんうん」と老人たちがニコニコ見ている。
美和たちが持参したおつまみやお菓子や、村で捕れた魚や鹿肉で
その日、村は翌朝まで宴会だった。
「ほえ~っ」と部屋でゴロゴロする美和を見て、
「平和でいいわねぇ」藤子がしみじみ言った。
*
数日後、ニュースが流れた。
【暴行で逮捕された会社員。恋人殺害を自供】
城田晃一の写真がアップで映し出されていた。
読んでいただき、ありがとうございました。
次作は番外編の予定です。
引き続き、読んでくださると嬉しいです。




