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弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


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閑話 前チェロスト子爵夫妻

 ちなみに。


 コーラスばかり優遇し、南の島で暮らしている前チェロスト子爵夫妻には、手紙で顛末を連絡をしている。


 子爵家がなくなりサイダー達も商会で働いている為、以前の仕送りは無理だとも付け足して。


 本当はそこそこ儲けのある商会を経営しているのだが、今まで虐げられてきたサイダーが教える義理はないだろう。


 南の島は路地の果物なら、勝手に食べて良いことになっており、少し働けば暮らしていける場所である。


 サイダーはコーラスが家を継いだ時から平民であるが、この度前子爵夫妻も後ろ楯がなくなったことで、没落した前子爵夫妻となった。


 チェロスト子爵は、貴族名簿から消えたのである。


 ここからはもう平民になったのだから、彼らも働くべきなのだ。まだまだ50代だから、頑張るしかない。


 そして帰る旅費もないから、南の島で踏ん張って貰おう。



「嘘でしょ? 私達の生活はどうなるのよ!」


「喚いている暇はないぞ。宿を出て、安い家を借りなくては。当分はお前の宝石を売って暮らそう。それとも、その金で(元チェロスト子爵へ)帰るか?」


「宝石を売るなんて嫌よ。貯金を降ろせば良いじゃない」


「お前なあ。ここで食べまくって、太ったから服を買い換えただろ? 腐るほど。尻の目立たない豪華な服を。宝石の付いた高いのを買ったから、もうないぞ。毎月の仕送りを当てにして、散々食って使ってただろ?」


「だって。他の貴族にも会うから、安い服は着れなかったのよ。ただでさえ、太って気にしてたのよ。ゴニョゴニョ……」


「そうか。まあ、これからは平民だから気楽だろ。仕事も見つけないとな。俺は店屋の経理とか力仕事で、お前は刺繍とか針仕事くらいか? あ、不器用だったか。まあ駄目そうなら、畑仕事くらいならいけるだろ?」


「う、嘘? 働くの? 私が?」


「最初は家にいて、料理と掃除と洗濯を頑張ってくれたら良いさ。俺も休みの日は手伝うし。当たり前だが、メイドなんて雇えないからな」


「嘘でしょ? そんなこと出来ないわよ~」


「完璧じゃなくても良いから、何とかやっていこう。野垂れ死にが嫌なら、もうそれしかない」


「酷いわ、もう。この年になってから落ちぶれるなんて。クリムとコーラスが無能だからよ! あんな出来損ないの婿、私は最初から反対だったのよ。うあ~ん」



 公爵子息の婿(クリム)を歓迎していた夫人のバタフライと、クリムの威圧が苦手だった前子爵のレアチ。


 実はレアチ、少しだけほっとしていた。尊大な婿が酔って喧嘩とかして、重い犯罪を起こすよりもマシだと思っていたのだ。


 レアチは働くことが嫌いじゃないので、のんびりと島で働ければ良いと思っている為、苦痛は少ない。ちょっと使用人がいないのが不便かな程度で。


 軍の徴兵訓練時は風呂も入れず、山中で狩りをして獲物を取ったこともあるので、案外平気なのだ。ただバタフライはコーラスに似て我が儘お嬢様だったので、慣れるまで時間がかかりそうだ。



「もう、嫌~!!! 美味しい物が食べたいの。甘いケーキを食べたい。えーん」



 時々絶叫が聞こえるのも、近所の風物詩になっていた。


 南の島の人は、とってもおおらか。


「きっと辛いことでもあったんじゃろ。早く立ち直ると良いのぉ」とか、「お爺ちゃん、大変ねえ。カレー多く作ったから持っていきなよ~」「すいません、助かります」とかで、少しずつ馴染んでいくのだ。





 3か月後。


 金銭面の問題をなくすべく、バタフライが一念発起し、ケーキを買う為に本気を出す。

 農家でサツマイモを土から掘って袋に入れる作業や、マンゴー取りの玉吊りや収穫に奮闘するのだ。



 マンゴーの玉吊りとは……マンゴーは重くなると垂れ下がり、葉に隠れて色付きが悪くなるため、一つひとつ実をネットや紐で釣り上げる作業のことを言う。首や腕が辛く、大変な手間がかかる。


 またマンゴーの木の皮や樹液でかぶれたりして赤くなり、大変なこともあったようだ。




 そんな感じでバタフライもすっかり逞しくなり、子供から「ポッチャリ婆ちゃん、今日もドタドタ歩きだな♪」と囃し立てられ、「コラー! バタフライさんと呼びなさい~」と、追いかけて行くのだった。


 子供達は嫌みを言っている訳ではない。

 単純に可愛い、バタフライ婆ちゃんが好きなだけなのだ。


 忘れがちだが、バタフライ、コーラス、ブルーベルは、とても似ていて可愛い顔立ちをしている。


 三人とも桃色の髪と新緑の瞳。

 今のバタフライは白髪が増えてきたが、南の島のポッチャリはモテる要素の一つなのだ。




 レアチはいつもバタフライに微笑み、バタフライも少しだけ楽しくなっていた。


 バタフライが料理中に作った包丁傷や洗濯の指の荒れに、傷薬を毎夜塗り込むレアチ。



「ありがとう、貴方」


「こちらこそ、いつもありがとうな」


「貴方だって、頑張ってくれてるわ。……元気でいてよね」



 手に触れながら労りあえることなんて、今まではなかった二人。気持ちも素直に言えるようで♡



 お金は多く持っていないが、たまに一緒にケーキを食べに行き、近所の人とお弁当を持って釣りに行く日々だ。


 こんな生活も、悪くないのかもね。



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