不思議な道具達
店の中に置いてあった物は、ボタンを押すと周囲を照らす道具や、木の先を擦ると火が付く道具、野菜のような物は薬に使う為の、生薬だと言う。
赤や黄色の宝石のような物が、所どころに見える山の形をした置物は、研磨していない魔石の原石だと言う。
明らかにこの国には、ないものばかりだった。
取りあえず灯りを付けてみたが、仄かな灯りが部屋全体を優しい光で照らしていた。先ほどよりも格段に店内の様子が分かる。
きっとタバサなら、似たような物を知っているかもしれない。まあここには、今のところコロネしか入れないので、見せることは出来ないのだが。
コロネが驚くのを見て、ラディッシュは嬉しそうにニコニコしていた。
「すごい物ばかりね。意匠も素敵だし、誰が作ったのかしら?」
その問いに「僕だよ。実際に外ならどうやって使うのか、見てみたくない?」と、ラディッシュが言うので、コロネは目を輝かせて頷いた。
「ええ、見てみたいわ。でもラディッシュ様は、あんまり外に出ないのでしょ? 無理じゃない?」
さっきとは一転し、シュンと肩を落とすコロネ。
「大丈夫だよ、コロネ嬢。夜にモロコシに迎えに来て貰って、ガンテツの鍛治屋に行こう。あ、でも、夜はコロネ嬢は無理か。公爵家に戻らないといけないものね?」
「ああ、それは大丈夫よ。今晩は食堂の2階に泊まるから、平気よ。普段使いの道具がどんな感じになるか見せて。お願い!」
「うん。僕の自信作だから、商人の目で判断して欲しいな。ダメ出し大歓迎だ」
そう言ってラディッシュ様は呪文を唱えた後、「ふうっー」と長い息を吐けば、息の先に青い鳥が現れた。
「わあ。可愛い小鳥。ごめんなさいね、煩くして」
小鳥は小首を曲げてコロネを一瞬見るが、すぐにラディッシュの方を見た。
ラディッシュは小鳥に囁く。
「伝言をお願い。今夜モロコシに、ここに来て欲しいと伝えて。コロネ嬢も一緒だと。頼むよ」
小鳥は飛び上がると、窓をすり抜けて行った。
元々実態のない小鳥だから、物を通り過ぎることは訳もないのだろう。
そんな光景を目にしたコロネは、魔法に対する恐怖よりも好奇心が上回った。
「すごいね、ラディッシュ様は。道具も作れて、その上魔法まで。ねえ、ラディッシュ様。魔法って、エルフしか使えないの?」
「どう、だろ? 僕らは幼い時から詠唱を習って、魔法を発動するんだ。でも……エルフでも使えない子もいたんだ。たぶん、魔力の保有率が多くないと駄目みたい。人間の中にも魔力が多い者もいるようだから、学んでみるのも良いかもね」
「うん。学びたい! 私、覚えるのだけは得意なので、是非お願いします!」
「う、ん……。僕が教えるのか。そうだよね、他にエルフもいないものね。まあ、やってみよう!」
「はい、師匠。よろしくお願いします」
思いっきり頭を下げるコロネ。
カーテシーではなく、庶民のように手を膝の上に重ねながら。お互いに周囲へ身分を隠しているから、今はその方が相応しく思えて。
「良いよ。でもあまり期待はしないで。物は試し程度の軽い気持ちでいてよね」
「ありがとう。勿論だよ、私はエルフじゃないしね。フフっ」
そんな感じで、勝手にラディッシュに弟子入りしたコロネだった。




