コロネの隠された力
彼は、ニズラッシェリルの女王(彼の姉)と冒険者ギルド長モロコシとの話し合いにより、コロネの国に訪れ自分の工房で作品を作っている。
何世代も経たノームの子孫は、エルフの美しさが勝り目映い程に美しい。そして鉱物を作り出す力を持っている。
ラディッシュは真鍮の件(孤児に給料を渡して、ガンテツへ弟子入りさせていた)の時から、コロネを見ていた。
(変わった人間がいるものだ。職人ならば人情的なのもまだ分かるが、貴族の令嬢がこんなことをするなんて、すごく興味深いぞ!)
そんな興味が隠し切れず。
地の妖精の加護の力で、危険人物からは自動認識阻害が常に展開されているラディッシュ。過保護なノームは店にもそれをかけてあるのだ。
だからコロネが店に訪れて、すごく驚いていた。
ちなみにモロコシとエルフの国王は、作物の取り引きを前任者から引き継いだ時からの、信頼のある付き合いをしていた。
ラディッシュが国を出て、他国の文化に触れたいとする希望に答えた女王は、それ故この地を選んだのだ。
◇◇◇
「エルフなんですか? だからそんなに綺麗なのね。納得だわ」
「ははっ、ありがとう。でもまあ、純粋じゃないけどね。僕には尊敬する、大精霊ノームの血が混ざっているから」
「ノーム様ですか? 私の方は水の妖精の加護を先祖が受けた様ですが、大精霊ではないようですし、私には何の才もありません」
コロネはラディッシュに精霊の話をされた為、自分だけ隠しておくのはアンフェアだと思い、自分の情報も告げたのだ。
「う~ん、才能はあるみたいだよ。まあ貴女よりも母上の方が力は強いみたいだけど。能力がなければ、そもそも僕の店は見つけられない。
妖精眼を貴女は持っている筈だ」
「そうなの? 私が妖精の力を! すごいことね」
コロネは思った。
この新しい情報を、両親に教えてあげたいと。
思えば孤児院に咲くチェルシー・シャインは、この国とは違う国の花で、本来は殆ど枯れてしまうのだった。
そしてこの地の気候も、それこそ豊作なんて珍しいくらい雨が少ない国だと、歴史で習っていたのだ。
この国に来た時大人だったモロコシは、何となく気付いている。これはミカヌレに潜在する、妖精からの水の力が影響していることを。
取りあえずコロネは、ラディッシュのことを友人として受け入れることにした。
コロネの知識欲がウズウズして、目を逸らすことを許さないからだ。
(世間は広いのね。もっといろんな話を聞きたいなぁ)
「じゃあこれからは、コロネと呼んで下さい。私もラディッシュ様と呼ばせて頂きますわ」
「ああ、是非そうしてくれ。僕はエルフだけど、まだ10歳だから、人生経験もたいしたことないんだ。いろいろ教えて欲しい」
「ええ、勿論良いですよ。特に美味しい食べ物とかは、お教えできます。あとは……(鍛治の専門知識はまだ学んでないわ。果物の流通も、全部は把握できていないし)……分からなければ、両親に聞いてきますから。実は私も、大したことは知らないのです。家と職場の往復が多いので。きっと私の知識は片寄っていますわ。お恥ずかしい限りです」
「そんなことはないよ。商会への情熱は素晴らしいし、みんなに好かれるのは才能だよ。僕らはまだ子供だもの。一緒に学んで行こう」
「子供? そうですね、私はまだ6歳でした。子供です」
「? そうだ、子供だ。それにしても6歳だったのか? しっかりしているから、もっと年上に見えたよ」
「それは、ありがとうございます。しっかりしているなんて、それが一番の褒め言葉です」
無理をして生きてきたコロネは、この時自分の立ち位置を客観的に見ることができた。
「もう少しだけ、丁寧に生きてみよう。それでも良いんだ」
ラディッシュはいつの間にか、コロネの気持ちを軽くしていた。
幼い少女と少年は、静かな店内で紅茶の香りを楽しみながら、時間が許すまでたくさんのことを話していた。
とても楽しげに、お互いに微笑みながら。




