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弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


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ミカヌレの生い立ち その2

 そんな環境であった為、将来に夢などをみることなく、ある程度の年齢になれば、先輩達のように傷付いて死んでいくのだと思っていた。



 けれど7歳(とだいたい思われる年)になり、子供達は選別された。


 闇に紛れて対象を暗殺する者、戦闘力で主を守る者、邸や商会に使用人として紛れ秘密を探る者、そして男性や女性に対して色恋を仕掛け、情報を直接的に探る者とに。



 ミカヌレは、大人達が思っていたように美しく成長した。

 だからもう、花の蜜を吸ったり木の根を煮て食べ、空腹を凌がなくても良くなった。


 食事内容は格段に良くなり、厳しい戦闘訓練はなくなった。


 その代わりとして、アルカイックスマイル(張り付けた笑顔)や優しげな笑みの練習を行い、男性が好きになりそうな女性を演じる訓練が始まった。



 こう言うタイプにはこんな対応をすると好感度が上がる、逆にこうしてはいけないなど、実践での失敗を交えながら教えられる。


 女性の先輩にも男性の先輩からも、幼い男女同時に。


 どんな相手にも対応できるように、語学を7か国ならい、貴族のように礼儀作法も教え込まれる。


 話題に困らぬように、女児ならば貴族女性の嗜む趣味、楽器演奏、歌唱などを。

 男児は貴族男性の嗜む趣味と、剣術訓練などを。


 平民男女の情報は、普段の生活で市井に買い出しに行く時などに、子供の様子を観察して収集した。


 

 それ以外はターゲット(標的)が決まった時に、集中して講義と言う名の詰め込み教育が行われるのだと言う。


 普通の貴族教育のように、社会情勢やこの国の常識などは教えられない。反抗する気持ちを、ミカヌレ達が持たないように。



 そしてミカヌレの任務が近付いた時、化粧の仕方や閨教育が行われた。

 快楽で相手に翻弄されないように、女性の先輩の指導下で張形(はりがた)(男根の形状を模した性具)を用いて純潔を散らし、その後馴らし行為を行う。

 行為中も、口内に吐き気を催すほど苦味のする飴を含み、アルカイックスマイルを浮かべることで主導権を渡さない訓練。

 

 

 性交に至らぬ前に会話で情報を引き出したり、場合により睡眠薬を酒に盛り眠らせたり、口内に含んだ薬を口移しして、相手の体を痺れさせたりするのが先な為、閨の行為は最終手段だ。



 他にも、無理矢理暴行されたりしないように、防衛の護身術を学んだり、暗器(隠し武器)の使い方を教えられた。


 ミカヌレは特に美しくか弱く見えるので、何もせずとも、扇情に見えることが女性から見ても多くあったから特に。


 変装していても、漏れ出る美しさとプロポーションは隠せないのだ。



 結果として初期の任務では上手くことを運べず、性交に至る事態があった。


 情報は聞き出せ任務は成功しても心はボロボロで、泣きながら帰ってきた彼女を先輩のウォンディーヌは抱きしめ慰めた。


 遥か昔に同じ思いをした、自分の思いを重ねて。


「泣きなさい。我慢しなくて良い。あんなターゲットのことなど、犬に咬まれたと思えるまで。……ずっと傍にいるから、泣きなさい」



「……うん、ありがとう、ウォンディーヌ、今は、っく、泣かせて……ぁあ、うわあぁん、っく……」




 ミカヌレは泣いた。

 男性からの力による蹂躙と、自分の無力さとこの仕事の理不尽さと、他にもいろいろなことを思いながら。夜更け深くに帰り、明け方近くまでずっと。


 いや。本当は昔に「淫売になるんだ、こいつらは!」と、投げつけられた言葉が胸に刺さったからだ。同じ隠密の仕事なのに、自分達が好きで選んだ訳でもないのに。




 ウォンディーヌは強く彼女を抱きしめて、共に泣いていた。彼女(ウォンディーヌ)の亡くなった妹はミカヌレと同じくらいの年齢の時、ターゲットに正体がバレて殺されていた。


 

 ミカヌレを妹に重ねていたウォンディーヌは、彼女(ミカヌレ)を生かす為の教育を、隠密のものとは別に彼女にし始めた。


 いつか彼女を、ここから逃がす為に。





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