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弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


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『無いものは作る』は、常識? その2

 コロネは(ミカヌレ)が、装飾品より食べ物を貰って喜ぶ顔を思い出して頬が緩んだ。


 真鍮や金属加工の教育を受けた当時、まだ3歳の彼女(コロネ)には知識のみが授けられた。

 さすがに装飾品の加工は、彼女の体ではまだ無理だったし、その後はミカヌレも公爵夫人の業務が多忙となり、鍛冶屋に来られなかったのだ。



 このことを思い出したコロネは、モロコシに相談し、孤児院の子供で力のある子に協力して貰うことにしたのだ。


 

 あの後もクリム一家の散財は続き、一時期赤字から回復した予算が再び赤に堕ちた為に、新たな収入が必要だった。



 コロネはそれに装飾品作りを選び、真鍮を選択した。

 真鍮は、デザイン性・高級感・独特の美しい金色で、使っていくうちに味わい深い色合いに変化し、アンティークな風合いを楽しめる一方で、手入れを怠ると変色や思わぬ黒ずみになりやすく、他の金属よりも脆く金属アレルギーなどのデメリットもある。


 けれど価格面で、真鍮は多くの人が手にしやすい。

 日本では純金価格が1kg、2万5千円程度。真鍮1kg、1500円程度(変動あり)と低価格である。 彼女は意匠(デザイン)の工夫で真鍮を流行に乗せ、購入意欲を高めようと考えたのだ。


 この国では金貨1枚……………10万円

 銀貨1枚……………1万円

 銅貨1枚……………千円

 半銅貨1枚………500円 

 が、だいたいの相場である。


 金貨1枚がだいたい10gなので、大きさによって価格も上昇する。


 他に必要なのは、繊細な意匠と確かな技巧力、そして誰もが欲しい気持ちになる宣伝能力。


 


 コロネは多くかけられない費用で、孤児院の子供達に労働を託して(修行期間もコロネから給金が出る契約済みで)、意匠は流行に敏感な公爵家の侍女とメイドに依頼した。


 コロネが大好きで役に立ちたい子供達は、モロコシが仲介に入った装飾品専門の鍛冶師に、仮弟子入りした。


 普通の弟子と同じ扱いなので、1年は準備や手伝いなど、見て学ぶ修行である。


 その間に彼女(コロネ)の取り組みに賛同した鍛冶師が、彼女の侍女達がデザインした図案を元に、格安で真鍮や金や銀細工を作成してくれた。



「良いんですか? 玄人の品をこんなに安く。儲けがないじゃないですか?」


「それをあんたが言うのか? まだ作品も作れない子供達に、給金を払っている癖に。俺だってあいつらがいて助かってるんだから、このくらい良いんだよ」


「ありがとうございます、親方。正直、すごく助かります。うっ、うっ」



 チェルシーハニーが高額で売れても、高級品の為に常に売れる訳ではない。金銭的に綱渡りのコロネは、つい気が緩み泣いてしまった。



 鍛冶師の親方も働く子供達も、様子を見に来ていたモロコシも、さすがに胸が苦しくなる。


「なんで5歳の子をここまで悩ませるんだ。その爺さんが解決する問題を棚上げして、苛めているのか!」

「コロネが可哀想だ。俺が早く一人前にならないと」

「セサミはそんな奴なんだよ。たぶんコロネが屈するまで、助けない気だろう」



 モロコシの発言に、一同は目を見張る。

 実の孫になんでそこまで?

 やらかしてんのは、自分の息子だろ?



 血筋や貴族の関係なく、常識の通じないセサミの態度に困惑する一同。



「だから俺、セサミが嫌いなんだよ。俺は逆らってでも、コロネの味方をする。絶対見返してやるんだ! 孫にする仕打ちじゃないだろ」


 その意見に周囲も同意した。


「俺も嬢ちゃんに協力する」

「僕も頑張る。一流の職人になるよ!」

「俺だって、コロネに褒めてもらうぞ」


「今、褒めてもらう話じゃないよね?」


「そうか? 俺は褒められたいぞ」

「そんなの僕だって」

「俺も、俺も褒められたい!」



 何だか盛り上がる男性陣と、やれやれと呆れるアンナとよく分からないまま泣き続けるコロネ。



 真鍮の宣伝には、モロコシが仲の良いギルド職員に声をかけ『今作の真鍮ブローチは意匠が繊細で、隣国でも評判らしい』とか『恋人に贈ると親密度があがる』など、嘘と噂を混ぜ込みながら囁き続けていた。

 言い切っていないから、罪には問われないやつだ。

 勿論ワッサンモフ公爵家の侍女やメイド達も積極的に購入し、『流行りなんですってよ。可愛いでしょ』なんて言って、自分の意匠の物を褒めまくっていたのだ。一部羞恥プレイになっている者もいたそう。


 でも実際に花柄のモチーフが多くて、女性に好まれたのは言うまでもない。金属アレルギーには影響の少ない、ネクタイピンやボタン、ドレスの飾りとしても重宝されたようだ。





◇◇◇

 泣いた後にスッキリしたコロネは、クリムの妻コーラスと娘ブルーベルが投げ捨てた真鍮を回収し、鍛冶師に渡す(メイドが捨てないで、保管していてくれたの。感謝)。


 彼女達(コーラスとブルーベル)は金や銀の装飾品を次々に買い漁り、安い真鍮を不要だと言ってゴミ箱に捨てていたのだ。


「安物は、美しい私達には似合わないよね。そうでしょ、お母様」

「ええ、そうよ。さすがブルーベルね。審美眼が素晴らしいわ!」



 働きもせずにコロネを困らせる母子の行動は、ワッサンモフ公爵家の使用人達を完全に敵に回していた。



God damn(ガッデム)《チキショー》」である。








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