表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/14

2話 盗賊の極意

「……ここが、流刑地か」


 流刑の刑に処された俺は、転移魔法で無人島に飛ばされた。


 今いる場所は海岸だ。

 少し歩いたところに、鬱蒼と緑が生い茂る森が広がり……

 さらにその奥に、巨大な山が見えた。


 持ち物は、ナイフ一本。

 ボロボロの服とマント。

 ……それだけだ。


「魔物もいるだろうから、こんな装備だとすぐに死ぬだろうな。流刑じゃなくて、ほぼほぼ死刑じゃないか」


 意味もなく叫びたい衝動に駆られる。

 ただ、そんなことをしたら魔物を引き寄せるだけなので、我慢した。


「くそっ、こんなところで死んでたまるか」


 バカな父と欲深い義母に殺されるなんて結末、断じて認められない。

 生きて生きて生きて……絶対に生き抜いてやる!


「まずは水を確保しないといけないな」


 森の中は魔物の生息圏になっているだろうが、ここに留まり、海の水を飲むわけにはいかない。

 湧き水などを求めて、俺は森の中に足を踏み入れた。

 武器というにはあまりに心もとないナイフを構えつつ、慎重に森の中を進む。


 貴族の家に生まれた俺ではあるが、好奇心が強く、色々なことを学んできた。

 その中にサバイバル知識や、戦闘技術も含まれている。

 うまくいけば、こんな無人島でも生きていくことができるはずだ。


「……とはいえ、そうそう全部がうまくいくわけないか」


 ピリピリと刺すような感覚。

 唸り声と共に、狼のような獣が現れた。

 確か……ウルフと呼ばれている低ランクの魔物だ。


 低ランクではあるが、俺は戦闘経験がない。

 訓練を積んだだけで、確実に勝利できるという自信がない。

 無謀ではないが、危険な戦いであることは間違いない。


 医者がおらずポーションも持っていない中、怪我は避けなければいけない。

 無理は禁物。


「くそっ!」


 近くに落ちていた木の枝をウルフに投げつけた。

 わずかに怯んだ隙に、一目散に逃げ出す。


「グルァッ!」


 ウルフはすぐに追いかけてきた。

 速い……が、逃げられないこともない。

 このまま走り……


「ガァッ!」


 ウルフが吠えた瞬間、走る速度が倍増した。

 なんだ!?


「まずいっ、このままだと追いつかれ……るぅっ!?」


 瞬間、足元の地面を踏み抜いた。

 ふわりとした感覚。

 直後、地面に空いた穴の中に落ちてしまう。


「なっ……!?」


 数メートルほどを落下して、地面に激突した。

 鈍い痛みが走るものの、幸い骨折などはしてなさそうだ。


 これは……落とし穴?

 いや。

 地下空洞の天井を、たまたま踏み抜いてしまったのか?


「戻るのは……難しそうだな」


 天井に穴が空いているのが見えた。

 高さは5メートルほどで、とてもじゃないけれど届かない。


「ここはなんだろう……?」


 床、壁、天井が石畳でしっかりと作られている。

 特殊な鉱石なのか、ところどころに淡く光る石が設置されていた。

 たぶん、灯り代わりなのだろう。


「遺跡……なのか? 無人島だから誰にも見つかることはなくて、放置されていた……ありえるな」


 出口を探して、遺跡を探索してみる。

 構造は複雑ではなくて、分岐路も少ない。

 ただ、方向が間違っていたらしく、出口ではなくて最深部らしき部屋にたどり着いてしまった。


 ちょっとしたスポーツができるくらい広い部屋だ。

 中央に台座があり、錆びた宝箱が設置されていた。


「普通なら罠を疑うところだが……この際だ。開けてみるか」


 偶然、遺跡の天井を踏み抜いて、偶然、最深部にたどり着いた。

 言葉では言い表せないような運命的なものを感じた俺は、宝箱を開ける。


 宝箱の中には金銀財宝があふれて……いるなんていうことはなくて、シンプルなデザインの指輪が二つ、ぽつんと置かれていた。

 恐る恐る手にとってみるものの、なにも起きない。

 どうやら、罠の類はないようだ。


 宝箱は錆びているが、指輪は錆びていない。

 それどころか汚れの一つもなくて、輝いている。

 もしかしたら、なにかしらのマジックアイテムなのかもしれない。


「この状況を打開できるかもしれないし……ええい、ままよ!」


 ここまで追いつめられている以上、怖いものなんてない。

 俺は覚悟を決めて、指輪を一つ、中指にハメた。


「おっ?」



 <鑑定の指輪>

 装備することで、スキル『鑑定』を習得可能。

 『鑑定』の効果は、ありとあらゆるものを真偽や良否などを判定することができる。



 そんな知識が、ぽんと頭の中に浮かんできた。

 これが指輪の力なのか……?


「それにしても、『鑑定』か……鑑定士と同じ能力、ということか? それほどのレアスキルではないが、今の俺にとってはなによりもありがたいな」


 情報は命だ。


「それじゃあ、早速……」


 鑑定を使用して、もう一つの指輪を調べる。



 <盗賊神の指輪>

 装備することで、スキル『盗賊の極意』を習得可能。

 『盗賊の極意』の効果は、ありとあらゆるものを盗むことができる。



「ふむ……?」


 こちらは、やや大げさな名前がついていた。


 『盗賊の極意』……か。

 盗賊が持つスキル『盗む』とは違うのだろうか?

 ありとあらゆるということは……もしかして、有形無形に限らないのだろうか?


 だとしたら、このスキルはとんでもない力を秘めて……


「グルァッ!」


 獣の雄叫び。

 振り返ると、ウルフの姿が。

 先ほどのヤツがしつこく追いかけてきたのだろう。


 しかし、これは歓迎すべき事態だ。


「せっかくだ、試してみるか」


 ウルフを対象に『盗賊の極意』を発動させた。


「特に、これといった変化はないが……どうだ?」


 自分のステータスを視る。

 すると……



==============================

 名前:ノクト・フォン・アーデルハイド

 種族:人間

 職業:――


 レベル:1

 HP :14/14

 MP :0/0


 攻撃力:6

 防御力:4

 魔力 :3

 速度 :7

 運  :8


<スキル>

『疾風・レベル1』

==============================



「よしっ!」


 ウルフが持っていたであろうスキルが俺に追加されていた。


「『盗賊の極意』は、本当にありとあらゆるものを盗むことができるんだな。もしかしてと思い、試してみたが……いいぞ。このスキルは最高に使える!」

「ガルゥッ!」

「っと、戦闘中だったな」


 ウルフの突進を回避しつつ、対抗策を練る。

 能力は、ほぼ互角。

 経験は俺の方が下。


 経験不足を補うためには……


「盗んだスキルを調べてみるか」


 スキル『疾風』を鑑定する。



 <疾風>

 一時的に物を加速することができる。

 レベルに応じて速度、持続時間が変化する。



「なるほど。あの時のウルフの加速は、このスキルのおかげ、っていうわけか」


 『疾風』を盗んだから、もうウルフは加速できない。

 逃げることは可能かもしれないが、先のことを考えると、ここで倒して糧としておきたい。

 とはいえ、怪我をすることなく、うまく倒す方法はあるだろうか?


「……待てよ? 『疾風』を使えば、あるいは……」


 『疾風』の効果的な利用方法を思いついた俺は、さっそく実行に移す。

 そこらの小石を手に取り、ウルフに向けて投擲。

 同時に、『疾風』の対象を小石に設定して、スキルを使用する。


 小石がグンッと加速して、三倍ほどの速度に。

 矢のごとく鋭く飛翔して、ウルフの頭に突き刺さる。

 ウルフはギャンッと悲鳴をあげて、倒れて……そのまま死んだ。


「『疾風』があれば、しばらくは攻撃手段に困らないな。そして、なによりも……」


 二つの指輪を見る。


「『鑑定』と『盗賊の極意』……か。この二つのスキルがあれば、こんなところでも生きていくことはできるはずだ」


 いや、それだけじゃない。

 いずれ、こんな無人島から脱出して……

 そして、ふざけたことをしてくれた父さんとネーリャ母さんに……いや。

 クズ親父と腐れババアに一矢報いることができる!


「待っていろよ……俺は、まだ生きているぞっ!!!」

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

ブクマや評価をしていただけると、とても励みになります。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ