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05・彼女がトールの店を訪ねるまでの話



食事をしながらの会話で

ハーフエルフのシャルロットのだいたいの身の上は分かった。


彼女は15歳。


この異世界ではエルフも人間も平均寿命は 殆ど同じくらいだ。

エルフは 外見の老化が 表れるのが極端に遅いだけで

日本で言う『美魔女』とか言われる若作りみたいなものだ。



ここからはその15歳のハーフエルフの少女のはなし


父親がエルフ、母が人間、とだけは 聞かされていた。

名前は 知らない、 顔も知らない。

物心がつく頃には 母方の関係者らしい屋敷で暮らしていたが、

ほぼ屋敷から出ることは 許されなかった。



家庭教師や屋敷の使用人以外には接する人もなく

彼等に虐待される訳では無かったが

出来るだけ関わりを持たないようにされているのは、ハッキリ分かった。


その中で 月に1回 訪れる50代程の男性だけが

相手から話しかけてくれた。


「今日は暖かいね」とか「庭のお花がキレイだね」といった

当たり障りのない会話だったし

幼い彼女もどう接したらいいのかわからず

「うん」とか「はい」で会話は 終わってしまっていた。


だが、シャルロットの中で彼は 自分の祖父だと思っていた。

彼が訪れた日には決まってお菓子やオモチャなどが部屋に置かれていたし

自分を見る瞳が 優しそうだった、

それだけの理由。


ひと月程前に シャルロットは 気づいた。

自分は 一生この屋敷のなかにいるのだろうと

生きるだけなら不自由のないここで。


自分がハーフエルフであること。

ハーフエルフは 屋敷の外では迫害されている とは教わっていた。

そんな世の中が 変わったら屋敷の外に出れるのだと…


そして気づいた。


そんな日は 来ないのだと。

きっと死ぬまで この屋敷の中で不自由のない暮らしが 続くのだと…


その日 シャルロットは、何の準備も 何の心構えも持たずに 屋敷を抜け出した。


両親に会ってみたかった訳でもないし

祖父だと感じてたひとに会いたかった訳でもない。


屋敷の中に居る理由が 無かったから


丸1日歩いて知らない街に着いた。

初めての外の世界は全てが 新鮮だった、

世の中の仕組みのことは 教わってはいたけど

自分の目で見る全てが 新鮮だった。


それに だれも自分を傷つけようとはしなかったし

声を かける者さえいなかった。

皆 シャルロットを見ても直ぐに視線を外して遠ざかるだけ。


それは お腹が空いても

たとえ倒れてもそれは変わらなかった。

だが 商店の前で倒れたときだけは違った。

人通りのない場所に引きずられて横に包みを置かれた。

中にはパンが入っていた。

屋敷で食べていたよりずっと固かったけど…


『ハーフエルフだから迫害される』?

見ず知らずのハーフエルフに食べ物までくれるのに?


夜は柔らかそうな所で眠った、着ているものも少し汚れてきた。


商店の前で暫く立って見て居るだけでパンをもらえる様になった。


街の様子も最初ほど新鮮に感じなくなったころだった。


街を歩く人たちを眺めていた。

自分と同じくらいの女の子がふたりで笑いながら歩いていた。

自分より小さな女の子が 母親?に手を引かれて笑っていた。


面白い話を聞かせてもらってるのだろうか?

自分にも聞かせて欲しいと思ったが

知り合いでもない自分では無理だということくらいは分かっていた。


気がつけば 屋敷を出てから 一言も話して無かった。


仕事をすればいいんじゃないかと気づいた。

お店の人たち同士、お客さん、話しをして笑っているのを 見たことがある。


そして求人の貼り紙のしてあるお店を訪ねて

やっと初めて『ハーフエルフ』とは何なのかがわかった。


話しも聞かずに追い出される、

無理矢理外に引きずりだされる、

黙ってパンだけ持たされて背中を押された事もあった。


そして その街を出てトールの店の貼り紙を見つけた。


また 自分がハーフエルフだと言うことを思い知らされるだけ…


(このお店で最期にしよう)



ほんとは その前の店に入る時も

シャルロットはそう思っていた。


ただ また冷たくあしらわれるだろうとは思いながらも


(もう一軒だけ……)






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