14・ベッド数不足問題
「「「マルクさん ご馳走様でした‼︎」」」
結局 マルクさんは 15個のプリンをご馳走してくれた。
イザベル6個、シャルロット6個、僕は 3個だったけど…
マルクさんのおかげで 僕がご馳走するって話が 無くなったと思ったら
帰り際に「トールの奢り分は明日ねぇ〜!」ってイザベルに釘を刺された。
イザベルは 帰ったら また 普通に 夕飯を食べるらしいけど
成長期だから問題ないそうだ。
特にプリンの材料は 乙女の成長期には欠かせないモノだから
無理して食べたとか言ってたけど
まだもう 1個くらい行けそうな感じがしたのは
きっと僕の気のせいなんだろうな……
店の前で今日のお礼を言ってからイザベルと別れた。
シャルロットの部屋に鍵はついてるのかとか
お風呂の鍵は壊れてないかとか
色々うるさかったけど 無理矢理 馬車に押し込んだ。
すっかり 影が 長くなってしまった街を
シャルロットとふたり並んで 僕の店舗件住居に向かう。
2階の部屋はまったく使っていないから
一部屋をシャルロットに使ってもらうとして
着替えとか歯ブラシなんかも予備があるし
ほかに必要な物は……
明日にでも買いに行かなきゃならないだろうなぁ〜
僕はそんな事を考えながら歩いていた。
シャルロットは 今日の出来事を楽しそうに話していた。
シルトの街で はぐれてしまった事も
もう楽しい思い出になったみたいだ。
「あの時は もうトール様と会った事が
夢だったんじゃないかって思っちゃいました!
それで 袖についたミートソースのシミの匂いを嗅いで
夢じゃ無かったって確かめちゃって…」
(シルトの街外れで顔に手を当ててたのはそう言うことか!)
「私、今日1日でいっぱい笑って…泣いて…
今まで生きて来た分以上に今日だけで笑いました!」
ほんの小さなことでも喜んでくれるシャルロット。
その笑顔に癒される自分を感じながら ゆっくり歩いた。
そして 戻って家に入ってから気がついた…
うん、確かに 部屋は余ってるよ、
着替えもアメニティ関連も確かになんとかなります…
ただ……
シャルロットのベッドが 無かった!
もうこの時間だと商店は 閉まっている、
現代日本みたいに暗くなっても開いてるのは酒場くらいだ。
たとえ開いてたとしたって
出来合いのベッドが都合よく店先に置いてあるかもわからない。
とにかくこの件は シャルロットに知られちゃマズイ。
『私が 床に寝ます!ハーフエルフですから当然です!』
…………確実にそうなる……
て言うか それ以外の展開が想像出来ない………
シルトでは 走りまわってたから もう一回お風呂に入れて…
その間に僕の寝室を片づけて 客間っぽくするしかないな……
多少、私物とか残ってても そもそもシャルロット
他所の家に泊まった事なんかないハズだから
こんなモンだと思うだろう。
僕は 店舗スペースの来客用のソファーで寝ればいいことだし……
でも コレ 他にもなんか見落としてる事あるんじゃないか?
今日の『シルト作戦』にしたって穴だらけだったし……
ひょっとして 自分で思ってるより 僕って………
「トール様!私 他所のお屋敷に泊まるのも初めてなんです!」
下向きな思考に嵌りそうだった僕に シャルロットが キラキラ顔で話しかけてくる。
「え〜とね、シャルロット、今の言葉の中だけでも
いっぱい言いたい事あるんだけど?」
「はい?なんでしょうか?」
「まず、僕達は いとこ同志の設定だから『樣』はおかしいでしょ?
マルクさんの前でも『樣』づけだったし…
それと ここは『お屋敷』じゃないから 。
もっと立派な家のことをそう呼ぶんだよ」
「…すみません、私、……浮かれるばっかりで …迷惑ばかり……」
「それだけじゃないよ、1番問題な事がまだあるし…」
シャルロットの顔からさっきの キラキラは もうすっかり無くなっていた。
『シュン』と音が聞こえるくらいに うなだれたハーフエルフの頭に手を乗せて
僕は 彼女の言葉の中の1番の問題を教えてあげた。
「ここは『他所の』じゃないだろ?今日からシャルロットの家なんだから」
このセリフ、口に出すまで分からなかったけど……
なんかカッコつけ過ぎ!
あゝ死にたい!恥ずい‼︎ いったいダレだよ⁈
転生チーレム主人公かよ⁈
「トールさまあ‼︎」
それでもシャルロットは 喜んでくれたみたいだった。
…天使か?
真っ赤な顔になってるであろう僕は
しばらく天使に抱きつかれて放してもらえなかった。
結局、素直な天使は 僕の言葉になんの疑問も持つこともなく
ぼくの寝室で眠ることになった。
一緒のベッドで……っていうテンプレなどモチロンない!
だけど 店のソファーで寝ていた僕は
深夜、2階から降りてくる足音で 目が覚めるのだった。




