13・伝説級の転移者への道
「いやぁ〜、ドレスギルドで見かけたって 全く思い出せなくってさあ~」
僕等は 自分達の街 トリノに戻って来ていた。
今 3人で馴染みの店【プリン】でプリンをオーダーして待ってる間に
『シルト作戦』の反省会を開いていた。
店名のプリンは あのカスタードプリンのプリンからとったもので
僕が食べたくってレシピを教えて作ってもらったのだが、
それが 評判になったので店名もそれにしちゃったっていう
なかなか軽い兄ちゃんマルクが オーナーの店である。
それで 最初の話、
シャルロットが訪ねたお店に途中で来てた謎の男………
どっかで見覚えがあるって言ってたけど
ドレスギルドの集まりで見かけてたんでした。
怪しいひとでもなんでも無かった。
シャルロットが 『服屋のトール』を探してるって言うんで
おんなじ服屋なら知ってるだろう……とわざわざ呼んでくれたってオチだった。
同業者さん 忘れちゃダメだよねー
その件で さっきからイザベルが絶好調だ。
「トールったら『オレ、あの男に見覚えがある』とか 眉間にしわ寄せちゃってさあ〜
もう完全に悪の組織の幹部扱いでさあ〜、もう ププッ
一体 どんな異能バトルが始まっちゃうのかって ヒヒヒヒ〜」
訂正します、反省会ではなく『 トール吊るし上げ会』でした。
まあ、しょうがないけどね!
馬車を動かしてもらった僕が全ての元凶ですから…
シャルロットも笑ってくれてるし……いいんだ……
「お待たせ〜、プリンみっつねぇ〜、トール、イザベル様 毎度で〜す。
おや?この子は 初めて?……あ……」
最後の 『 あ 』 で分かった。
マルクも 『感じた』のだろう、ハーフエルフの放つ『違和感』を…
「ああ、マルクさん 紹介しとくよ、僕のいとこのシャルロット、国から出て来たんだ。
これから僕の店の手伝いをしてもらうから、宜しくたのむよ?」
「いとこって、それ……トール……」
マルクの言わんとする事は分かる。ハーフエルフのいる店がどうなるのかなんて
想像に易い事だから…
「マルクさん、もし迷惑ならもうお邪魔するのは 遠慮するよ、客商売の立場も分かるし、
ただマルクさん との付き合いは 今まで通りでいてくれると嬉しいけど…」
残念ながら世間のハーフエルフに対する偏見は 確かだし、
マルクだって軽く見えても生きる為に商売をやってるんだ、
僕が 文句を言える筋合いの問題じゃない。
「そっか そう言うことか。」
そう言うとマルクは調理場に引っ込んでしまった。
(シャルロットにはまた嫌な思いをさせてしまったな…後で話せば良かった…)
そう思っているとマルクが トレイをもって戻って来た。
「そう言うことなら 俺からも就職祝いがないとな?
ウチのプリンは ひとり3個は 食べたくなるんだ。」
そう言って6個の追加プリンをテーブルに並べ出した。
「店の物で わりいんだけどさ……」
どうやらマルクは シャルロットを受け容れてくれると言うことらしい。
普段 おちゃらけているのは 熱血漢の本質が照れ臭くてのポーズだと思っていたけど
どうやら その通りだった。
「マルクさん、ちょっとカッコつけすぎじゃない?」
素直にハーフエルフなんて気にしないって言えばいいのに…
「ん〜〜?トールの方こそ水臭いだろー?
お前のいとこなら 俺にとっては 妹みたいなモンだろー?
それをいちいちそんなつまんないコトきくなよ。」
「いや、妹って?それ おかしいでしょ?
なんで 僕よりマルクさんのが 二親等も身内になってんの!」
「男はあんまり細かい事言ってるとモテないらしいぞ?」
「トールもマルクもモテないのは そんな理由だけじゃないけどね」
男同志の照れ隠しのやり取りをしているとイザベルが 口を挟んで来た。
女性にはこう言う儀式が理解出来ないみたいだ。
「もう、イザベル、今日はとくに僕の扱い酷くない…って
もうプリン2個目⁈ え? シャルロットも⁈」
「トール様!なんですかコレ!もう凄い美味しいです!本当に3個くらい余裕です!もう!」
シャルロット、美味しくて喜んでくれるのは嬉しいんだけど ……
いとこの設定なんで『樣』は美味しくないです、マズイです!
上手い事言いましたよ 僕!
脳内だけに留めておくのが 勿体無いレベルです!
「そうでしょーシャルロット!でもひとり3個とか…
マルクも格好の付け方が中途半端なのよねー、そう思わない?」
「はい!イザベル様!5個はいけます!」
この店のプリンは 丸い容器で一個ずつ作るタイプでなく
四角い型に入れて作ってからカットしているのでカステラみたいな形状なんだが
5個は……… 細かい事………モテないんだっけか?
ここは黙っとこう!異世界に来てもモテなかった転移者とか
逆に伝説扱いされちゃうだろうし……
僕は 1個目のプリンを食べながら
ハーフエルフを理解するより女性を理解するほうが
よっぽど難しいのではないかと考えていた。
おそらく追加のプリンを取りに行ったマルクも同意してくれる筈だった。




