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第6話 少女の涙と決断

夜が終わり、朝が来る。そんな当たり前の日常が僕は好きだった。夜が開け、静かに色づき始める桜の花びら。朝が来て餌を求める鳥のさえずり。そのすべてが好きだった。言葉では言えないほどの魅力があり、それを近くで感じるのが毎朝の楽しみだった。僕は外に出るために部屋を出て階下を目指す。

階下には目を疑うような光景が広がっていた。いつもは何もないはずの廊下が荷物で埋め尽くされている。


わーい。やったね。季節外れのサンタさんが数年分のクリスマスプレゼントを届けてくれたよ?……いやそろそろ現実を受け止めよう。そこに広がる荷物は決してクリスマスプレゼントではなく、服やらなんやらの荷物だった。その無法地帯から目を背け、僕は外に出る。少し冷たい風が僕の頭を冷やす。桜は少しずつ緑になっていき、春の終わりを告げようとしていた。かすかに鼻孔をくすぐるいい匂いがする方へと、顔を向けると、恐らく無法地帯を作り上げた張本人であろう君敵時雨がいた。なにか文句でも言ってやろうと近づくと、一気にその気が覚めた。


いつもは可憐で人当たりもよく欠点を見せない彼女が、桜の木の下で

『泣いているのだ』理由は分からない。分からないなりに昨日の事を思い出すが、彼女を悲しませる要素は限りなくゼロに等しかった。そんないつもと違う儚げさをまとう彼女に声をかけることが僕にはできなかった。ただただその場に立ちすくみ、彼女を観察していると、こちらの姿に気付いたのか、涙が伝う顔でこちらを見やる。


まさか彼女もこんな所に僕が来ると思っていなかったのか、驚きの表情を浮かべ、涙を拭う。


「どうしてこんな所に月乃瀬君がいらっしゃるのですか?」


 先程の涙を思い出させないようにするような作られた笑顔で僕に尋ねる。


「いつもの日課でこの辺りを散歩しているんですよ。この時間帯が一日の中で最も美しい時間ですから」


「あら、奇遇ですね。私も毎日日課として外に出るんです。この時間が一番美しいから。」


そう彼女は言い切り顔をうつむける。その横顔は春の景色とうまくマッチし、とても絵になっている。


「ところで月乃瀬君?あなた私の泣き顔見たりしました?」


「ええ…まあ気分を害してしまったのなら謝ります。すみませんでした」


深く頭を下げて謝罪する。君敵さんは浅いため息をついて、僕に言った。


「月乃瀬君が謝る必要なんてないんですよ?私が勝手に泣いてただけですし…しかし、どうしても気が済まないと言うなら一ついいですか?」


 軽く身構えてしばしの沈黙を作る。昨日までのノリでろくなことにならない事はわかっている。しかし彼女の瞳はかすかに潤んでおり、また泣き出しそうだった。

覚悟を決めて首を縦に振る。


「ありがとうございます月乃瀬君。私からの提案はこうです。」


そう言ってA5サイズの紙を手渡してきた。恐る恐る中身を見ると


・月乃瀬君の家に住み込む


・登校は毎日一緒に!


・家事は二人で助け合う


・椿さんと七瀬くんを付き合わせる


と書かれていたもはやツッコむ所しかなかった。一つ目が成立しなければ下二つは成立しないし椿さんと七瀬くんを付き合わせるなんて何を考えているのか分からない。もし二人が付き合えば一気に部員が二人になる。何を考えているのだろう。この人は…


「どうですか?その…厚保がましくなかったですか?」


「ええ…でも四つ目は少し考えものですね。確かに部の目的は恋人を作ることです。しかし部員同士をくっつければ部員は半数になりますよ?」


「月乃瀬君?私が部室で言った言葉を覚えていますか?私は言いました。部員の中で好きな人ができた場合皆で助け合うと。」


「え?ということはつまり?」


「はい。あのお二人は『両思い』なんです。なので部長として彼らの恋をサポートする義務があります。」


頭が回らなかった。こんな数日で僕の怯えていたifの話が現実になってしまった。そんな緊急事態に頭が回らなくなり

僕はその場で気絶した。

その直前に君敵さんが漏らした

『手紙の真実』を聞かないまま。

いやはや早いもので6話目に突入です。

時雨の見せた涙の真実は⁉あの手紙に隠された時雨の本当の目的とは⁉

次回からも胸熱ですね


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