第5話 お泊まり
「人数分揃えてきた甲斐がありました!」
そう言って君敵さんは四本のギャルゲーソフトを僕たちに見せびらかしてきた。
先程までの妙なテンションは消え失せ、僕たちはその場に座り込んだ。
君敵さんはそれでも笑顔を絶やさずに僕たちの足元にソフトを並べていく。
「それでは今日はこの辺でお開きにしましょうか。あっ月乃瀬くんはちょっと残っていて下さい。」
君敵さんの一言で七瀬くんと椿さんは力なく退室し、部室には僕と君敵さんの二人になる。君敵さんはなぜかずっとモジモジしていて、先程までの騒がしさを消し、妙に重たい空気が僕たちを包む。あまりの空気の重たさに耐えきれず僕から口を開く。
「どうしたんですか?何かお話したいことがあったのでは?」
なんだか上から目線な話し方になってしまったが、さほど気にしていないのか、先程の明るい君敵さんに戻る。
「そうなんですよ!月乃瀬君にご相談があるのですが…よろしいですか?」
「大丈夫ですけど…何ですか?」
「少し恥ずかしいのですが…月乃瀬君の家にお世話になってもよろしいでしょうか?」
「はっ?え?それってその…どうしてですか?」
今日で何回目になるか分からない爆弾発言に思わずテンパってしまう。先程、元気になったかと思った君敵さんは再びモジモジしながら答える。
「理由…ですか…そうですね。部活動の延長と言えば聞こえが良いですね。採用です!」
「なにが『採用です!』ですか!ちゃんとした理由もないのにそんな…」
「部活動の一環です。恋愛を知りたいなら私と同居すべきです。家も隣ですしね」
「それを持ち出すとは…しかし僕たち高校生ですよ?その…色々問題があるんですが」
「大丈夫です!私はあなたを信用していますから。それに誰かに見つかった場合には『私たちお付き合いをしてるんです~』とか言えば大丈夫ですから」
「話始めて二日目の男子に気を許さないで下さいよ!それに、ぼくの家は一般のお家と対して変わりませんよ?」
「大丈夫ですよ!私、こういうのに憧れだったんです!」
「はあ…なら部活の一環として一日泊まっていって下さい。それでも一緒に住むと言うなら許可します。これでどうですか?」
「はい!ありがとうございます!月乃瀬君!それでは一緒に帰りましょうか?」
そう言い、右手を差しのべてきた。僕はなんだか気恥ずかしくてその手を握らずに、「いきますよ」と声をかけ部室を後にする。
生徒玄関を抜けると部活動に勤しむ声が聞こえ、それに負けじとセミも鳴く。
そんな夏のありふれた光景を聞いて感じ、校門を抜ける。
帰り道に部活動のことについて話し合ったり、少しだけギャルゲーの話をしたりしながら、僕の家につく。
「それではしばし…十分くらいのお別れです!また後でお邪魔しに来ますね」
そう言い残し君敵さんは自宅のマンションに姿を消した。僕もゆっくりしていられない。女の子が家に来るのはイレギュラーの事態で少しテンパる。家の掃除を急いでこなし、部屋着に着替えると玄関の扉が開き、君敵さんが入ってくる。「おじゃまします」と丁寧に挨拶し僕の元までやってくる。
「これから二年間お世話になります。不束者ですが、未来永劫末長く宜しくお願いしますね!」
恐らくからかっているだけなので、「こちらこそ」と軽く返し再び彼女を見やる。
先程とは違い、ロングスカートにカーディガンという秋っぽさを彩る服装だった。それでもよく似合っていたので季節のことなんて気にはしなかった。
「わあ~よく片付いていますねー!」
「まあ君敵さんが家に来るって言うから急いで掃除したんですよ」
「それはどうもありがとうございます♪お礼といってはなんですが、今日の夕飯は私に任せてください!」
「いや、いいですよそんな、せっかく来てくださったのに」
「まあまあ、良いではありませんか。ここらで少し私の女子力をご覧にいれましょう。」
「そこまで言うんなら…じゃあお言葉に甘えさせていただきます。」
「任せてください!」
夕飯に出てきたのは夏の定番とも言える夏野菜カレー。途中から色々鍋にぶちこんでいたので不安は残るが匂いだけは無事だとわかったので、口に運ぶ。
「何ですかこれ⁉めちゃくちゃ美味しいんですけど!君敵さん本当に料理できたんですね」
「まあ!喜んでいただいてよかったです♪一緒に住んでいただけるのであれば、毎日でも作ってさしあげますよ?」
「本当ですか?いや~君敵さん本当に今からでもお嫁に行けますよ?」
「あら嬉しいです!なら月乃瀬君のお嫁さんになって差し上げましょうか?」
「冗談きついですよ君敵さん」
「あら、ばれてしまいましたか。」
そんな感じで晩御飯を食べ終え、順番にお風呂に入って、ベッドに横たわり、今日が終わる。君敵さんは僕のひとつ隣の部屋を使ってもらった。家の中でそこだけに鍵が着いており、安心して眠らせてあげたかった穆なりの考慮だ。
そんなこんなで今日が終わる。
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