82/720
82 本棚の全集
本棚を前にして……。
「なんの役にも立ってないんやから」
妻がブツブツと言う。
オレが結婚前、ローンで買った文学全集が並んでいるのだが、これまで一度も読まれたことがない。
「これ、邪魔なんよね」
結婚後も支払いが残っていたので、妻はことさら気にくわないのである。
「置いとけば、いつか読まれるもんや。そんときは日の目を見ることになるけん」
「いつかって、このまま読まれなかったら?」
「眠ったままや」
妻いわく。
「持ち主そのものやな」
本棚を前にして……。
「なんの役にも立ってないんやから」
妻がブツブツと言う。
オレが結婚前、ローンで買った文学全集が並んでいるのだが、これまで一度も読まれたことがない。
「これ、邪魔なんよね」
結婚後も支払いが残っていたので、妻はことさら気にくわないのである。
「置いとけば、いつか読まれるもんや。そんときは日の目を見ることになるけん」
「いつかって、このまま読まれなかったら?」
「眠ったままや」
妻いわく。
「持ち主そのものやな」
特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。