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冬祭りの妖精と人間

「ううん…。煩いわね…。ねぇ、誰か来た?」

「あ…」

「姉様!!!」

 俺が止める暇まも無く、梨の妖精はロニを見ていきなり彼女に向かって飛び込んだ。

「ん?」

「会いたかったッス!」

 そしてそれを見た時間の妖精は…

 トッカン―――!

 と、全ての力を込めて―この時、少しロニの目が光った気もする―茄子の妖精をパンッと蹴飛ばした。

「これだぜぇぇぇぇぇぇ!!!」

 そして梨の妖精はその一言を残して夜空の星になった。

「……」

「ん?今、アタシ何かした?」

「何かした?じゃねーよ!いきなり何しやがる!」

「ええ――。だって、体が勝手に動いたんだもん」

 ロニは「テヘッ」と笑って舌を出した。

「何がテヘ―だ…」

「それよりあんた今出掛けるの?」

「ん?ああ。バイトだ」

「へ―。アタシを捨てて?」

「変な誤解されること言うな!それに勝手に出てくるな!他の人にばれたらどうする?っていうか、やばい!もうこんな時間か⁉」

「遅れちゃうの?」

「誰のせいだよ!」

「誰のせいなの?」

 うっ…元はと言えばこいつについて来たあの梨の妖精のせいだから結論的にはお前のせいだ。とも言えないし…。

「あ――もういい!12時までのは戻ってくるからおとなしく部屋でテレビでも見ながら待っていろ!いいな?」

「ええ?12時まで待たなくちゃいけないの?」

「じゃあ、寝ればいい!」

「ふ―ん。まあ、いいわ。お土産忘れないでね」

 そんな笑顔で言ってもよ…。

「とにかく!妙な事故起こすな!」

 そう言って俺は自転車を漕ぎ出した。


「すみません!おそくなりましたぁぁぁ!」

「だから自転車乗ったままで入るなよ。そして、今日は完全にアウト!」

 と、真里さんがはっきり言い切る。やっぱり…。

「でもあなたにしては珍しいわね。遅くなるなんて」

 真里さんは自転車を止めて中に入る俺を見てそう言った。

「ははは…。ちょっと事情が…」

「事情?もしかして登我の奴が何かやらかした?」

 ここで言う登我は山田のことだ。ちなみに真里さんのフールネームは山田真里。山田の従姉だ。俺より三つ上の女性の真里さんは元々は冬祭り荘の住民だったが今は事情があって他の所で住んでいる。

「いや、それはないです」

 そういえばあんなに煩かったのに山田もじゅんも出て来なかったよな。山田なら事情を知ってるからといってもいいが…二人とも出掛けてまだ戻って来なかったのか?

「でもいっつも迷惑かけてるでしょ」

 仕事の途中、急に真里さんが話しをかけた。

「あはは…でもそれなりに楽しいですよ」

「そう?それは良かったね。でもあいつが変なまねしたらいつでもいいから言ってね。アタシがすぐ駆けつけてぶん殴ってやるから」

 と言って、にっこりと笑う真里さん。

 でも多分山田は真理さんを見た瞬間逃げ出すだろう。そして3日ぐらいは冬祭り荘に戻ってこないかもしれない。

 山田と真里さんは仲がいいのか悪いのかは分からないが、確かなのは山田は真里さんのことをかなり怖がっているってことだ。

「了解です。そん時はお願いします」

 ま、どうでもいいけど。

「うん。任せてね。そして今日遅くなった分、罰のトイレ掃除はしっかり頼むわよ」

「はいはい…」

 やっぱり、厳しいんだからなー。


「ただいまー」

「遅いよ!」

 12時が少し過ぎた時間、帰って来た俺は理由も無く、真里さんから言われたことをロニにも言われてしまった。…何でだ?

「12時までは帰ってくると言ったでしょ?5分過ぎたよ。トイレ掃除しなさい」

「何だそれは」

「何でも。あ、メモ見た」

「そう?弁当は?」

「食べたけど…冷たかった」

「はあ?何で?温めて食べろと言っただろう?」

「だって、レンジの使い方分かんないもん」

 レンジの使い方さえ知らなかったのか?

「でも美味しかったよ。トリの優しさが感じられた」

「また変なこと言いやがって…」

 …恋の感情を失った妖精。契約者が人間だからこそ彼らのみが時間の妖精になれる。それがこいつ。つまり今彼女がやっている事はまぎれもなくただ俺をからかうための嫌がらせそれ以上でも以下でもない。つまりこいつはこうやって俺が困っていることを楽しんでいるだけだな。…だか、怒れない。むしろ可哀想だと思ってしまう。俺と同じく…。

「……」

「何で?」

 俺が黙ってずっと見つめていると彼女は首を傾げて言った。

「…いや、何でもない」

「ならあんまり見ないでちょうだい?キモイから」

 とか言って目を逸らす。

 何だ。もしかして、照れてるのか?意外だな―。そりゃまあ、感情が全然ないもんでもないからそんなに驚くことはないか…。ふーん。


 そして翌日。日曜日。普段なら午後まで寝たはずの休日。だったはずだが…朝っぱらから人の上で正座してテレビでやっている何とか戦隊を見ながら昨日作った例のガラムマサラの歌を歌っていた妖精のおかげで俺は悲鳴をあげながら同時に起きてしまう、凄い朝を迎えなければならなかった。つか、座り心地がいいからといって人の上でテレビを見るのはやめて欲しいんだが、あの妖精は人の言葉なんかは全然聞いてない性格だから言った俺が疲れてしまった。でも言っておきたい。俺の体は座布団じゃない!それにガラムマサラの歌も何か聞きづらい!

 騒がしい朝を迎えた俺達は目玉焼きと味噌汁で朝飯を食べた。でもそろそろ作っても見たいなー。いつまでレトルトプラス簡単料理じゃ…。

そしてご飯の後は買い物に行くことにした。ロニが管理局から援助されたお金で服とか色々買う必要があったから。まだこいつはジャージー姿のままだし。

「うん…。もうちょっと派手な服は無いかな…」

 とりあえず服を買いに近所のショッピングセンターに来た俺達。でもロニはあんまり気に入った服を見つからない様だ。

「いいかげんにしろ。適当に体に合う物を選べばいいだろう?」

 慎重に服を見ていたロニは人差指で文句を言う俺を指して言った。

「何言ってんのよ。女の子に服を適当に選べと言うのは大きな失礼よ。女の子にとって服を選ぶのは命をかける戦いなのよ!戦争!戦!」

 食べ物には一所懸命。服には命がけか。それも戦って。大変だなーこいつの人生も。

「あ!これ可愛い。ね、トリ、どう?」

 と言いながらロニが俺に見せた服はすっごく派手で着たらただ立っているだけてもパンツがチラッと見えないかなと思われるくらい超短いミニスカートであった。男としてあんな服はありがとう!と言いたくなるの服だ。が…。

「でもちょっ…」

「あの、すみません。これ試着してみてもいいですか?」

 聞いたら聞け!…はっ!これいける!いいネタになるかも!後で使おう。

 結局その服を買ったロニはその後にも何件か店を回り、さらに何枚かの服を買ってからやっと満足したようだった。今、彼女は買った服の中で一つを着ている。さっき見た時にはスゲー派手だと思ったが何だかこいつが着ていると意外と似合っている。金髪に白くて細くて長い手足。胸はちょっと小さいけど全体的にはまるでモデルのようなスタイルだ。誰かが近づいてきて、「キミー、モデルやってみない?」と話しかけてもおかしくないくらい。通り過ぎる男達にはそう見えるだろう。だが違うぞ。こいつの本姓を知らないからそう惚れた様なアホみたいな表情で見れるんだぞ。俺もこいつのことを知らないままで見たら他の男と同じ表情をした…かも。いや…するかな、俺も。

 ちなみに荷物は全部俺が持っている。だから気持ちよさそうな顔でウィンドーショッピングしながらガラムマサラの歌を歌う前に少しぐらいは俺に感謝しろ、この迷惑の妖精!

「で、今度は何買うつもりだ?」

 何故か服を買ったショッピングセンターとはまったく反対側の商店街まで来て俺は聞いた。ちなみにさっき買った服は来る途中にルート内であった冬祭り荘の俺の部屋に置いて来た。

「ん…。そうね。今必要なのはこれくらいかな…。テレビは引越ししたら買えばいいし、洗濯

機はトリのを使えばいいし…」

「良くない!最後の言葉が全然良くない!」

 と、言った俺を無視したロニは右側を指して言った。

「ね、あれ何?」

「人の話聞け!」

「いいから。あれ何?」

 ここの商店街は大きいスーパーとドラッグストアー、100均、DVDレンタルショップ、食堂、そして電気屋など色んなお店が一つの広い空間の中に集まっている。商店街というかまるで商店タウンだ。

 ロニが指した方は証文の反対側の小さい裏口の方だった。

 キンッー

 カーン

あそこからは金属のバットがボールを打つ音が聞こえてきた。

「ああ。バッティングセンターだな」

「バッティング?へ―あれが噂の…」

「噂?」

 ロニは俺を見て話した。

「うん。UFOキャッチャーの中で住んだ時ね、ある人から聞いたの」

 ああ、そっか。三年間その中で色んな話を聞いて言葉とか物の使い方とかを覚えたんだのか。で、実物を見たことは無かったってことだな。

「行ってみようかい?」

「うん!」

 即答だなぁー。


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