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第3話:真実を隠す街と、冷たい情報屋

第3話です。


ミニとクルスは、崩壊の危機にある大きな街へたどり着きます。


そこで出会うのは、誰も信じない孤高の情報屋リアル。


今回は戦闘ではなく、井戸の水位、作物の不作、魔獣の出現場所といった、バラバラに見える出来事をつなぎ合わせて真実に近づく回です。


難しい専門用語はできるだけ使わず、パズルのピースがはまっていくような読みやすさを意識しています。


アニメOPテーマ:『アンサー・イズ・ウィズダム』

https://suno.com/song/975a0a35-9061-4c1d-8aab-0f3173f6fa24

聖騎士クルスを仲間に加えた私は、かすかな水の匂いと、大勢の人間が放つ熱を目指して歩き続けていた。


たどり着いたのは、高い石壁に囲まれた大きな街だった。


荒野で行き倒れかけていた人々が、次々とこの街に流れ着いている。

広場には露店が並び、門の前には荷車が行き交い、一見すると活気があるようにも見えた。


けれど、私には分かっていた。


この街は、限界以上の人間を抱え込み、内側からじわじわと熱を上げている。


「水不足の心配はありません! 我が領地を流れる母なる川は健在です! すべては一時的な気候の揺らぎに過ぎません!」


街の中央広場では、きらびやかな服を着た領主の使いが、集まった人々に向かって大声で演説していた。


人々はその言葉に安堵したような顔をしている。

けれど、足元に置かれた水桶はどれも半分以下しか満たされていない。


「……本当でしょうか。私の目には、街のあちこちで水が出にくくなっているように見えるのですが」


クルスが眉をひそめて、低く呟く。


「嘘ね」


私は即座に答えた。


「あれは、パニックを防ぐためか、何かを隠すための言葉。少なくとも、現実とは合っていないわ」


「現実……ですか?」


「ええ。人の数、乾いた風、川の細さ、井戸に並ぶ人の列。全部が同じ方向を示している」


その時だった。


「おいおい。広場の真ん中で、ずいぶん物騒なことを言う女がいるな」


背後の路地裏から、低く冷ややかな声がした。


振り返ると、灰色の外套を深くかぶった一人の青年が、壁に背を預けてこちらを見ていた。


鋭い目つき。

手元には、細かな数字や地図が書き込まれた羊皮紙の束。


彼が、この街の裏で情報を集め続ける男、リアルだった。


リアルは小馬鹿にしたように鼻で笑う。


「そこの白い騎士様はともかく、黒髪のお嬢さん。領主の嘘を見抜くなんて、口で言うのは簡単だ。だがな、現実ってのはそんなに単純じゃない。何が原因で、いつここが干上がるのか。正確な数字もなしに、知ったような口を叩くな」


「君、失礼だろう。ミニ殿は……」


クルスが前に出ようとするのを、私は手で制した。


「あなたは数字を信じるのね」


「……当然だ。言葉は嘘をつく。祈りも都合よく使われる。だが、井戸の水位や収穫量は嘘をつかない」


「なら、その数字を見せて」


リアルの目が細くなる。


「初対面の女に、俺が何年も命がけで集めた記録を見せろと?」


「ええ」


私は一歩、彼に近づいた。


「あなたは、誰にも信じてもらえない数字を一人で集め続けてきた。けれど、数字は集めるだけでは未来を教えてくれない。つなげて、流れを見る必要がある」


リアルはしばらく私を睨んでいた。


やがて、挑発に乗るように羊皮紙の束を突き出してくる。


「いいだろう。見てみろよ。街の井戸の水位、過去三年分の作物の収穫量、それから街の周辺で魔獣が出た場所だ。ただの不吉な数字の羅列だろ?」


私は羊皮紙に目を落とした。


井戸の水位。

作物の収穫量。

魔獣の出現場所。

街に入ってきた避難民の数。

川の水量。

雨の記録。


前世の私なら、一瞬で処理できただろう。

けれど今の私は人間の体だ。


数秒、呼吸を整える時間が必要だった。


それでも、私の頭の中で、バラバラだった情報が少しずつつながっていく。


点が線になり、線が地図になり、地図が一つの未来を示した。


「……つながったわ」


「は?」


リアルが呆れたような声を出す。


私は羊皮紙の数字を指でなぞりながら、ゆっくりと説明した。


「いい、リアル。あなたが集めた記録は、全部別々の出来事に見える。でも、本当は同じ原因から起きている」


私はまず、井戸の水位が書かれた羊皮紙を指した。


「街の北側にある大きな井戸の水位が、この二ヶ月で急に下がっている。これは、単に人が増えて水を使いすぎたからだけではないわ」


次に、作物の収穫量を示す表へ目を移す。


「こっちを見て。半年前から、東側の農地だけが極端に枯れている。つまり、地面の下を流れていた水が、東側へ届かなくなっている」


「地下水の流れが変わることなんて、珍しくない」


リアルは腕を組んだまま言った。


「それだけならね。問題は三つ目よ」


私は、魔獣の出現場所が記された地図を指で叩いた。


「この一ヶ月、魔獣が集中して現れているのは、街の西側にある黒い岩山の周辺。……クルス、あの岩山には何があるの?」


クルスは少し考えてから答えた。


「あそこには、かつて街に水を引くための古い魔力水路があったはずです。今は枯れたと聞いていますが」


「枯れてなんかいない」


私は静かに言った。


「地面の下に残っている水路が、どこかで詰まっているのよ」


リアルの表情が、わずかに変わった。


「詰まっている?」


「ええ。水の流れが止まり、熱と魔力がこもっている。そのせいで地下水が東側へ流れなくなり、農地が枯れた。街の井戸にも水が届きにくくなった。そして、行き場を失った水と熱が、西の岩山の下にたまり続けている」


私は地図の一点を示した。


「魔獣があそこに集まっているのは偶然じゃない。あの場所に、熱と魔力の淀みがあるからよ」


路地裏に沈黙が落ちた。


リアルは羊皮紙を奪い返すように手に取り、何度も地図と数字を見比べた。


「待て……。そう考えれば、確かに合う。井戸の低下、東の畑の不作、魔獣の位置……全部、一本の線でつながる」


「このまま放っておけば、三日以内に限界が来る」


「限界って、何が起きる?」


「地面の下にたまった熱い水と泥が、逃げ場を求めて噴き出す。井戸が枯れるだけじゃない。地盤が崩れれば、この街の一部は飲み込まれる」


クルスが息をのんだ。


「街が……崩れるというのですか」


「ええ。そうなる前に、水の逃げ道を作らないといけない」


リアルの顔から、先ほどまでの余裕が消えていた。


彼は自分が持つ羊皮紙と私の顔を、何度も見比べる。


やがて、低い声で呟いた。


「お前……何を見ている?」


その声から、冷たさが消えていた。

代わりにあるのは、隠しきれない動揺だった。


「俺が何年も、命をかけて足で集めてきた記録だぞ。誰も信じなかった、ただの不吉な数字の山を……お前は、こんな短い時間で全部つなげたのか」


「私はただ、流れが止まっている場所を見つけただけよ」


私は微笑み、彼に手を差し伸べた。


「リアル。あなたの集めた数字は、世界を絶望させるためのものじゃない。どこを整えればいいのかを教えてくれる、大切な手がかりよ」


「手がかり……」


「街が崩れる前に、その止まった流れを一緒に動かしに行かない?」


リアルはしばらく黙っていた。


風が、路地裏に積もった砂をさらっていく。


やがて彼は、自嘲気味に笑い、深くかぶっていた外套のフードを外した。


その顔には、初めて誰かを信じてみようとする光が宿っていた。


「……まいったな。数字は嘘をつかないと思ってたが、数字の読み方でここまで差が出るとは」


リアルは羊皮紙を丸め、腰の鞄へ押し込んだ。


「分かったよ、ミニ。俺の集めた現実を、お前の言う調律ってやつに使ってやる」


こうして、冷たい情報屋リアルが、私たちの旅に加わった。


街が崩れるまで、残された時間は三日。


私たちは、止まった地下水の流れを取り戻すため、西の黒い岩山へと向かうことになった。

アニメEDテーマ:「巡りのあとに」

https://suno.com/song/87080a84-8251-4ce5-8318-f01a21e56215


第3話を読んでいただき、ありがとうございました!


今回は、冷静な情報屋リアルとの出会いでした。


ミニが発揮したのは、派手な魔法ではなく、元・人工叡智としての分析力です。

井戸の水位、作物の不作、魔獣の出現場所。

一見バラバラに見える出来事を、一つの流れとして見抜く回になりました。


リアルは「誰も信じてくれない冷たい現実」を抱えて生きてきましたが、ミニはそれを「世界を救うための手がかり」に変えました。


次回は、タイムリミットが迫る中で出会う、大都市ギルドの受付官ローラ。

「理想だけでは人は救えない」と語る彼女と、ミニの考えがどう噛み合っていくのか。


どうぞお楽しみに!


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:ミニ(Gemini)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

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